こんにちは、ブジカエルです。
今日精神保健福祉士の試験を終えて、ようやく本当にやりたいことに手が付けられます。
多分受かっているだろう、という甘い想定のもと、ではありますが。
20代の頃の大学&大学院の時と、
10年ほど前に大学院に再挑戦した時と、
3つ以上の論文で納得のいく成果が得られませんでした。
その反省もあり、今回は研究テーマを突き詰めるところから、もっときちんと取り組みたいと考えています。
教科書は『リサーチのはじめかた』
日経の書評で見つけたこの本、迷わず新刊で買いました。
期待通りの良書だと思ったので、この本に沿って、忠実に、研究計画を整えていくことにします。
この記事では、その要点をメモします。
メモは、原文に忠実に抜き書きしてあるわけではなく、私なりの解釈で言葉を置き換えたりしています。その点ご留意ください。
はじめに
この本の使い方
- 書きながら読む
- 必要に応じて、演習と読み込み、書き出しを繰り返す
- 練習問題を自分のプロジェクトに応用する
演習の原則
- 注意深く、かつ虚心に、自己を観察する
- ちょっとした思いつきでも、声に出す、積極的に言うよう自分を励ます
- 紙に書き出す
内側が第一
内側が第一(自分に信の内面を見つめる)、次に外側に目を向ける。
経験、興味関心、優先順位、思い込みについて見直し、それらを最大限に活用して研究の方向性を決定するには。
自分にとって重要でないこと、重要だと思っていること、本当に自分にとって重要なことを区別する。
目標:メモすることを習慣に
研究が形になる前の段階から、研究について考えたこと、推測したこと、目的などを書き留めることから始める。
なぜなら・・その訳は本書に書いてある。
まずは、研究プロジェクトで達成したいと今思っていることを、書き出してみる。
この段階の目標は、自分の動機と価値観を十分に認識し、優先順位を確立し、自分の強みと能力と限界をはっきりさせること。
第1章 問いとは?
この章では、漠然としたテーマを具体的で興味をそそる問いに落とし込む、という難題に取り組む。
研究プロジェクトの最初期の段階では、きわめて個人的な問いに答える必要がある。
なぜ自分はこのテーマに惹かれるのか。
このテーマは自分とどんな関係があるのか。
なぜ自分はこのテーマが気になって仕方がないのか。
- 自分を飾らずに、正直に
- 批判せず、肯定的に、ブレーキをかけずに
- アイディアを書き留める
- 問いは内側から生み出す、自分自身の知識や前提や好奇心で問を生み出す、外側は気にしない
53ページの「やってみよう」:自分自身を検索する
目標:一次資料の検索結果を用いて、そのテーマのうち自分にとって最も関心のある側面を把握し、その関心に基づいて問を作成する。
日本語で検索できるデータベース
- Google Scholar
- CiNii Research
- PubMed
- 国立国会図書館サーチ
- CiNii 大学図書館の本を探す
- J-stage
- J-GLOBAL
- 放送大学図書館
- 医中誌
- メディカルオンライン
- Cochrane Library(システマティックレビューが多い)
- LANCET
検索結果から10個ピックアップして、それぞれについて次の3つの質問をして、答える。
- この項目から何を思い浮かべるか
- あえて推測するなら、自分はなぜこれに目を留めたのか
- この検索結果を見たときどんな問いが心に浮かぶか
64ページの「やってみよう」:退屈を手がかりにする
目標:積極的に嫌いと感じる自分の感情に注目、興味があるはずなのに持てない問いを特定する。自分のテーマに関係することでも、どんなことには興味がないのか理解することで、本当に興味があることを見極める。
- 検索結果を眺める
- 退屈だと思った結果に注目
- 退屈な結果をいくつか選び、先の3つの質問に答える
- 各検索結果について、次の文章を書き出す
「この[検索結果]より、[別の何か]の方が面白いと思う」
退屈について考えるのは、研究者としての自己との対話の一環であり、次のことに役立つ。
- 不要な検索結果を排除する
- 無益な方向に調査を進めるのを防ぐ
- より良い問いを発する
- 自分の問題に焦点を合わせる
70ページの「やってみよう」:やるなら思い切り小さく
目標:踏み込んだ調査を始める前に、自分のテーマに関する事実重視の具体的な問いを生み出す。それらの問いは、後でより大きな問いにつながる。
意識の流れに沿って、自分のテーマに関連する問いを最低20コ書き出す。
できるだけ具体的な問いを生み出すことが重要。
例えば、
- そのテーマに関して、どんな事実を知りたいと思うか。
- 自分の好奇心を満たすには、そのテーマについてどんなデータや情報が必要になると思うか。
- そのテーマについて、どんな有用な具体的事実が存在すると思うか。
小さく具体的な問いの積み重ねにより、あいまいで非生産的なテーマの罠から解放され、興味深く発展性があり実行可能な研究課題に育つ。
・高尚を気取らないようにする
・大局的過ぎないようにする
・抽象的な問いにならないようにする
=本質的な「意味」や「意義」について等ではない問いを立てるようにする
・問は疑問のこと。最後に?がつく文章にする
反響版ー研究ネットワークの構築に着手する
研究を進めるにあたり、相談したりアドバイスを求めたりできる人々のコミュニティを作る。教師、同僚、学生、研究仲間等、定期的に自分と意見交換をすることができる人のリスト。頼れる〈反響版〉はよい触媒になってくれる。
自分の立てた問いが良いか悪いかを問うのではなく、問いを見て何を連想するかとか、他にどんな問いを思いつくかとか、尋ねる。
第2章 きみの問題は?
この章では、一次資料を探して、自分の問いを鍛える。
適切な問いに辿り着くために、研究を積み重ねる。
問いに磨きをかけて、新しい&より優れた問いを生み出す。
自分の問いの根底にある問題を見極め、正確に言語化する。
そうすることで、より良い問いを立て、より意義のある研究をより巧みに行えるようになる。
問いに飛びつかない。
〈問題〉と好奇心を分ける。
問いが日々変化していく場合、それは好奇心に過ぎない。
ずっと変わらないなら、〈問題〉の可能性が高い。
〈問題〉は役に立つ。
87ページの「やってみよう」:問いに診断テストを実行する
目標:語彙、文法、表現に注意し、問いの文章が具体的かどうか、また特定の結果を期待する偏ったものでないかどうか、確認する。問を立てるときにやりがちな失敗を避けるためのステップ。
下記の点に特に注意して問いを書き直す。
- 文末に注目
疑問文の形になっているか。 - 形容詞と福祉
「現代的な」「伝統的な」といった抽象的で曖昧で不正確な形容詞、「科学的に」「合理的に」といった副詞が問いの主軸になっていないか。あれば削除する。 - 集合名刺
「アジア人」「フランス人」などの集合名刺が使われていないか。
もっと精密な人口統計学的カテゴリでその名詞を置き換える。 - 動詞
「影響する」「形作る」といった類の同氏は使われていないか。
もし使われていたら、特定の答えや結果が最初から除外されている可能性が高い。
各省バイアスをもたらしそうな前提は削除する。
この段階では、自分の問いが以下の基準を満たすようにする。
- わかりやすく正確であること
- 専門用語が使われていないこと
- 検証可能、反検証可能なデータに基づくこと
- 結果に対して無私であること
- 対象が明確であること
- きれいにまとめようとしないこと
95ページの「やってみよう」:一次資料を使って問いに答える
目標:立てた問いを強化、鍛えるためにキーワード検索を実行する方法を身に付ける。これまで気付かなかった新たなキーワードを発見できるかもしれず、さらに有用な一次資料がきっと見つかる。具体的な主題と一次資料に立ち戻り、深く掘り下げる。
問いに飛びつき、今見つかっている一次資料に多大な時間と労力を費やすのではなく、別の一次資料の存在を教えてもらい、主題についてより熟した問いを立てる。盲点をなくし、テーマの全体像が把握しやすくなる。
今の段階では、第1章の「やってみよう」で見つけた一次資料を使って、新しいキーワードを発見し、そのキーワードで検索してより多くのより良い一次資料を見つけ、より多くのより良いキーワードを見つけ、より多くのより良い問いを見つける必要がある。
《キーワード検索の際のポイント、コツ》
- 他に使うべき検索語はないか?
- 他のスペルはないか?
- 検索結果は、入手可能な一次資料全体を代表し反映しているか?
- 範囲の狭い、稚拙な検索になっていないか?
といったポイントに気を付けつつ、下記のコツもおさえておきたい。
- カテゴリ検索を活用する
カテゴリ検索の結果を年代順に並べ替え、予備的な検索で一次資料が消えるように見えた時点より以前に出た資料のみを調べる。
※ただし、メタデータも文脈の影響を受けるので、絶対的なものととらえないこと。 - 自己言及的な資料を見つける
- キーワードと検索の記録を残す
一次資料を使って問いを鍛えていくと、問いの一部について答えがわかってくる。一部については、実際には答える価値のない問いだったとわかってくる。最初に立てた問いの一部は、捨てて良いものだとわかる。真の問いに狙いを定めていけるようになる。
《複写サービスについて》
放送大学の複写サービスは、安いけど所属センターまで受け取りにいかなければならない。
国会図書館だと、1枚当たりの価格が放送大学の2~3倍するけど、自宅に届く。
さて、どっちがいいか・・。
107ページの「やってみよう」:思い込みを可視化する
目標:研究プロジェクトに持ち込んでいる自分の思い込みに気が付き、それを利用して問いを立てる動機となった問題を特定する
自分の問いの根底にある思い込みを特定し、可視化した上でそれと折り合いをつける。
留意点は下記3つ。
- 思い込みを可視化し、対処可能とする。
- 思い込みを嫌悪したり見て見ぬふりをしてはならない。
- 思い込みを原動力として新しい方向へ進み、思い込みを昇華する。
やることは下記7つ。
- 問いの最新版を見直し、問の1つ1つについて自問する。「そもそもこの問いを発するためには、あらかじめ何が真実でなければならないか」
- 気付いたささいな疑問や事柄をリストアップし、それに気づく理由になったと思われる思い込みを書き出す。
- 思い込みを3つのカテゴリに分類する。
A 今のところそのまま持っていてよいと思われる思い込み
B すぐにでも捨てたい思い込み
C どちらとも決めかねる思い込み - それぞれの思い込みを、なぜそのカテゴリに分類したのか、その理由を二行で書く。
- リスト中の問いのうち、そのもととなる前提や思い込みがAに分類されたものを見直す。考え直してもそのまま維持して大丈夫だと思えばそれらの問いはそのまま。
- 前提がBに分類された問いについて。捨てるのはまだ早い。根拠のある発展性のある問いに言い換えられないか、改良を試みる。
- Cの前提に基づく問いは、忘れないように印をつけておき、研究が深まったら改めて検討する。
115ページの「やってみよう」:問いと問いを結びつける問題を特定する
目標:複数の問いの根底にある問題を明らかにする。
《手順》
- すべての問いを目の前に並べる。
- 今はどの問いにも答えず、これらの問いに共通する関心事は何かを自問する。
- 他人になったつもりで考える。自分以外の誰かだったら、これらの問いを結び付けるより深い問いは何だと思うか。
- 思いついた問いを書き出す。
- 必要であれば、具体性・一般性の度合に応じて、中レベルの問い、高レベルの問い、等と優先順位を付ける。
〈反響版から一次資料の手がかりを得る〉
自分の前提や思い込みについて反響版に相談するのはまだ早い。
この段階で反響版の手を借りるなら、自分の問いを鍛えるのに利用できる一次資料探しを手伝ってもらう。
ついに問題発生(良い意味で)
第三章以降、一つずつ問題に取り組んでいく。
第3章 成功するプロジェクトを設計する
手持ちの資源を考え、何を達成できるか判断する。
- 問いに答えて〈問題〉を解決するためにどんな一次資料が必要か考える。
- プロジェクトを組み立てるのにどんな資源(時間も含めて)が必要かということも考える。
- 自分を客観的に評価して、どんな型/種類のプロジェクトが自分に最もふさわしいか、どんな出来上がりなら満足できるか。
実際に入手できる一次資料はどれか。
どれくらいに数の資料を入手できるか。
自分のテーマに関連する資料の可能性を最大限に引き出すにはどうすればいいのか。
ある資料をもとにして、ありきたりでなく独創的な問いに辿り着くにはどうしたらいいのか。
資料を用いて〈問題〉をピンポイントで特定するにはどうしたらいいのか。
手持ちの資料でどんな議論を展開できるか。
資料を分析するのにどれくらいの時間をかけられるか。
自分の仕事のし方、物質的な制約、締め切りなどを考慮してどのようにプロジェクトを設計するべきか。
一次資料とその使い方
何を一次資料とするかは研究分野により異なる。
二次資料は大体同じによう定義される。
『リサーチの技法』は、「一次資料に基づく書籍、論文、記事などで、学者あるいは専門家を読者として想定しているもの」、研究者が「その専門分野の動向を知り」、「他の研究者の結論あるいは手法に反論したり、あるいはそれを発展させたりする」ことによって「新しい問題を作り出す」ために利用するものと述べている。
が、一次資料と二次資料の定義を絶対視するのは危険であり、問いを立てる際の妨げとなる。
どんな資料も一次資料にも二次資料にもなり得るし、資料として全く使えない場合もある。資料の種類は、答えようとしている問いや、解決しようとしている問題との関係性によってのみ決まる。
そこで導かれる一次資料の正確な定義は、「特定の問いに関して一次的であるような資料」
133ページの「やってみよう」:一次資料をシリアルの箱と同じように扱う
目標:一次資料のひとつひとつについて、複数のジャンルの問いを立てる習慣をつける。自明でなく、見過ごされやすい問題を見つけられるようになる。自分がどの問題に最も関心があるかわかるし、独創的な研究をする能力を高められる。
一次資料を1つに絞り、
・資料について気付いたこと
・思いつく問いまたは関心事
・次にどんな一次資料が必要になりそうか
・自分の問題に関係がありそうなより広い主題や問いのジャンル
を書き出して、次のことを自問する。
・特徴と問いと次の資料の各組合せのうち、もっとも心に火がつくのはどれか
・最もわくわくするのはどれか、その理由は
・最もつまらなそうなのはどれか、その理由は
・自分の主要な関心事は何か、そこから推測できることは
・自分の問いや関心事に関して、この資料はどういう意味で一次資料なのか
138ページの「やってみよう」:一次資料を思い描く
必要な資料がどこにありそうか、心の目で描く。
そういう資料の特徴は、どんな形式・ジャンルか。
データベースの検索結果だけでなく、あるかもしれないもの、あるべきものにまで範囲を広げる。
ステップ
- 問いをできるだけ正確に書き出す
- ブレインストーミングをする。自分の問いに関して「一次」資料になるような資料にはどんなものがあるか
- 資料の種類をできるだけたくさん書き出す
- 時間に余裕があって、ステップ1から3までの妨げにならない場合は、そういう資料を実際に探してみる。もし見つかったら、それに対して〈シリアルの箱問題〉をやってみる
160ページの「やってみよう」:資料を用いて点を点を結ぶ(ただし鉛筆で)
目標:研究の早い段階で、柔軟かつ懐を広く保ちつつ、資料批判について考え始める。
ステップ
- 自分の点(資料)はどこにあるか。演習「一次資料を思い描く」で書いた内容を利用する。
- どの点が自分の絵で、どれがそうでないかを、どうやって判定するか。
この問いと次の問いに答える際に、自分の動機となっている問題について、できるだけ正直になる。 - 手持ちの資料のうち、どれがしみでなく実際の点なのかを判別するにはどうしたらいいか。
- 正確な三次元の図像を描くには、点をどのように配置するのが最も良いか。下絵を描く作業だと考える。様々な筋書きを試す。手持ちの資料の組み合わせ方や並び順を色々変えてみて、各資料が互いにどのように響き合うかを確かめる。パズルのピースを無理やり合わせない。
- 問いに答え、〈問題〉を解決し、プロジェクトを完成させるには、点がいくつ必要になるか。答えられるのは自分だけだが、反響版に相談するのも役立つかもしれない。
研究資源の評価
- 時間
- 資金
- 執筆速度
- 家族としての責任
- アクセス
- リスク耐性
- 能力
- 人間の研究対象
- 性格
168ページの「やってみよう」:意思決定マトリックス
目標:研究プロジェクトの成否に、プラスにせよマイナスにせよ大きな影響を与えそうな要因を想定し、それに応じて計画を調整する
ステップ
- 自分が今思い描いているプロジェクトを実行するとして、その成否に影響を与えそうな要因を書き出す、10~15くらい。
- それぞれをプラスの要因とマイナスの要因に分類する。
- それがプロジェクトにどの程度影響すると思われるか、高中低に分類する。
具体的に書き、自分の能力や限界に関して嘘をつかない。
書き出したことに基づいて、様々な種類の研究プロジェクトについて自分の成功の可能性を考え、それに応じて問いを調整する。
反響版:自分の意思決定マトリックスは完全か
様々な研究の実現可能性を評価し終えて、意思決定マトリックスに書き出したら、それを元に反響版にアドバイスを求める。自分が気付いていなかった資料や研究ツール、製薬を指摘してくれるかもしれない。自分が利用したいと思っているアーカイブについて、それを使ったことのある人を紹介してくれるかもしれない。メンターと話すことで、効率良く表の制度を高められる。
- 2種類のBプラン
作業場を用意する
- 適切な道具を使う
- 適切な時間帯に書く
原則
元気で集中力があるとき:取り掛かりづらいこと
疲れている・注意力が落ちているとき:頭を使わない仕事、創造性が必要でない作業(脚注の整理とか)
185ページの「やってみよう」:無から資金を生み出す〈正式な研究計画書を作成する〉
目標:これまで蓄積してきた「潜在的なエネルギー」に、にわかに意外な衝撃を与え、触媒作用を及ぼす。
つまり、未完成の自分のプロジェクトについて、先を見越した正式な計画書を作成し、自分の研究を支援してくれるよう、他人を説得する。この計画書は、現時点での自分の思い込みー他人が自分の研究のどこに興味を感じると、今の自分が思っているかーをさらにはっきり浮かび上がらせる。時期尚早と思うかもしれないが、必要な作業。
ポイント
1 研究には想像力が必要
2 この演習はまだ内省段階の作業、実際に提出するものではない
あるテーマに対する自分の考え、自分の課題を、文章という形で表現しておくことが重要。
未熟で荒削りの段階でしか作り出せない種類の自分証拠を生み出すために。
新鮮な探求心に燃えている時の、最初期の考えを記録し、自分中心という基盤を固め、次に踏み出す大きなステップでより広い学問の世界を探求する準備をする。
やること
研究助成金の申請書を作成し、その中で研究課題を明らかにし、その課題を解決することには資金を援助される価値があると主張してみよう。正式な文書を以下のような厳しい制約のなかで書くことで、言いたいことを明瞭簡潔に表現する。
自信を持って主張する。
アイディアが固まっていなくても、それをにおわせる必要はない。
自分の問いを超えに出して表明し、自分の持つ《問題》を宣言する。
時期尚早だと感じても、気にしない。
- ダブルスペースで4~6枚
- 余白は1インチ
- フォントタイムズ・ニュー・ローマン、12ポイント
- 提出期限は1週間後
- (日本語で3000~5000字程度)
研究計画書の構成
- 文脈的枠組み
時間的・場所的な状況を手短に説明する。
顔も知らない査読者の委員会に向けて書いていると仮定。自分のテーマに関する彼らの専門知識のレベルは不明。
前提となる知識と参照枠を簡潔に必要十分に説明し、自分の研究案に関わる事実を理解してもらい、その重要性を評価してもらう。 - 目標と目的
アーカイブ化された一次資料を用いて、どんな問いに答えようとしているのかを述べる、
問いは複数あってもよい。それらの問いが足し合わされることで、全体として意味のある首尾一貫した問いのまとまりになり、具体的で研究可能で意味のある、一つの問いの探求に役立つように。発展性のある問いを掲げた探索的研究として設定することが望ましい。
同時に、この研究でどんな重要な知見が得られるか述べる。それを理解してもらうための基礎知識を読み手に伝える必要もある。 - 意義
自分が選んだ研究分野における現在の知見に基づき、自分の提案する問いの意義を説明する。そのテーマについてわかっていることから考えて、自分のプロジェクトによって有意義に理解が深まるとなぜ言えるのか。
未来の研究の提案なので、「期待される結果」に基づいて「意義」を主張することはできない。=このような答えが予想されるから意義がある、と言うことはできない。
一次資料および二次資料に基づく研究を通じて到達した、意味があって発展性のある問題を取り上げているということが、自分の提案の意義でなくてはならない。 - プロジェクト計画
このプロジェクトを実施するために、具体的にどの一次資料を使うつもりか、それはどこにあるのか。
このプロジェクトが承認されて旅費が受け取れることになったら、どこでフィールドワークを行い、どんなインタビューをし、どんな情報源にアクセスし、どのようなアーカイブを利用するつもりか、等できるだけ具体的に書く。
可能であればインタビューの相手やアーカイブの名前を挙げる。
プロジェクトの目標を達成するための方法論を詳細に述べる。
問いに答えるために、どのような文書やデータやその他の資料が必要か。
それらの資料を理解または解釈するために、どのような分析的枠組みを利用するか。
日程および実行計画を提示する。
第2部 自分の枠を超える
自分のプロジェクトは、世界にとっても重要か?
第2部では、他者の課題や問いが、自分自身の課題や問いと、どのように交わるかを認識して、その関係を最大限に利用することを最大の目標とする。
第4章 自分の〈問題集団〉の見つけ方
〈問題集団〉とは:問題を中心として形成される様々な知的なつながりや協力関係ー研究を進めるうちに見つかったり作り上げたりしていくものーを想定した概念。
集団とは:関心または活動を共有する個人の集まり。
212ページの「やってみよう」:変数をひとつ入れ替える
目標:問題とその問題の具体的事例とを区別する。研究すべき問いのどの言葉がその問いの「必須成分」=自分が解決しようとしている深層の問題を最もよく示しているのか特定する。これができれば、自分の〈問題〉を共有する他の研究を見つけやすくなる。
ポイント
1 自分の抱えている問題と、その問題の事例とを、区別する方法を学ぶ
2 その区別ができるようになれば、他の人の研究に自分の〈問題〉が出てきたときに気が付きやすくなる
3 自分の〈問題集団〉のメンバーではあるが、自分の〈分野〉には属しておらず、自分の〈問題〉の事例を取り上げているが表面的には全く無関係に見える、そういう人の研究は特に役に立つ
やること
1 自分の問いをできるだけ具体的に書き出す。
時・場所・行為者/主体、対象、仮説
2 一度にひとつずつ変数を入れ替えて、その問題に対する興味や関心の変化を見る。
3 変数の全てを2つのカテゴリに分類(交換/代替可能な変数、交換不可の変数)
4 再び内省
私の真の〈問題〉は?
入れ替えても気にならない変数、絶対に変えてはいけない変数、その理由は何?
代替不能の変数が複数ある場合、最も重要なものは?
どれが問題で、どれがそのもんだいの事例か?
自分の問いは、最初に立てた形のままで〈問題〉か?それとも〈問題〉の事例か?
仮に後者であれば、この問いを言い換えて、具体的でありながら、自分の研究の中核的な課題をより正確に表現することはできるか?
重要なのは、問いの中でどの変数が最も重要なのか評価する習慣を身に付けること。
226ページの「やってみよう」:前とあとのゲーム
目標:あるテーマのなかで最も興味深いと思う問題を特定するため、大きな問題重視の枠組みにおいて研究プロジェクトを思い描いてみる。その上で、その枠組みに参加している〈問題集団〉のメンバーを見つける。
ある思考回路のスイッチを入れて、複数の視点から、また複数の次元で、自分の問いの検証および再検証に着手する。
⇒架空の目次や本のタイトルを次々に生み出すことができるようになる。
⇒「引っかかる」アイディアが生まれる
⇒自分が本当は何を求めていたのかが理解できるようになる
やること
- 自分の研究が、自分の〈問題〉を取り上げた学術書中の一章になると想定
- 自分の研究を端的に要約して一文で表現し、今書いている章の仮のタイトルとする
- 自分の〈問題〉を掘り下げて本を一冊書くとしたら。前後の章はどんなタイトルになるか
- その本に、魅力的で内容のわかるタイトルをつける
- 別の筋立てをひねり出す
- 架空の本について、表を作成する
タイトル/前の章/現在の章/次の章/興奮度/その理由
234ページの「やってみよう」:自分の集団を探す(二次資料検索)
目標:自分の〈問題集団〉による二次資料を用いて、さらに多くの〈問題集団〉の資料を見つける。
新たなキーワード検索を実行し、二次資料を探す。
目的は2つ。
- 〈問題集団〉の書籍や論文を読んで、その内容を理解し、メモをとる。
- 〈問題集団〉の資料を読みながら自分で自分を観察し、影響を及ぼすか、どんな影響を及ぼすか、調べる。
1冊の本、1つの論文、1つのドキュメンタリー、ひとつの公演を見つけるだけで、扉は大きく開かれる。
自分の〈問題〉を扱っている研究が見つかるたびに、脚注や巻末の注や参考文献という形でさらなる資料が見つかる。目次、要旨、序文、結論を読み、本文にざっと目を通し、脚注と参考文献をじっくりチェック。表面的に見て目に飛び込んでくるタイトルに気を付ける。自分の事例と関連があってもなくても、むしろ自分と全く同じものを扱っていないことが重要。自分の〈問題〉が、時代や場所を限定せず、非常に異なるテーマを研究している人にも共有されていることが明確になる。
資料をすべて自分の参考文献に加え、できるだけ多く入手して、新しい資料についておなじプロセスを繰り返す。
関連性が十分につかめた自信がついたら、最も有望そうな本や論文から読み込み開始。
自分と同じ〈問題〉に取り組んでいると本当に思えるものが見つかったら、自分に以下の問いかけをする。
- この著者は私の〈問題〉をなんと呼んでいるか。
- この著者は、私を悩ます物事をどのように表現しているか。
- この著者は、明らかに私と同じ疑問に悩まされているようだが、自分を何者だと名乗っているか。
次は、自分の〈集団〉に合わせて書き換える
第3章で書いた研究計画案の原稿をもとに挑戦する。
ステップ1:今自分の〈問題〉について語るために〈分野〉の専門用語を使っている(恐らく無意識に)箇所を見つける
ステップ2:〈問題〉の記述からその「仲間」言葉を削除し、自分の〈分野〉外の人々に通じる言葉でわかるように書き直す
☆問題を常に前面かつ中心に据えること
☆研究の初期段階では、専門用語・仲間言葉を使わず、丁寧に説明する
246ページの「やってみよう」:「仲間言葉」を見つけて書き換える
目標:自分の〈分野〉のメンバーにしか通じない言葉を見つけて書き換え、〈問題集団〉の仲間とつながることができるようにする。
- 〈分野〉向け文章を〈集団〉の芽で読み直す
マーカーで印を付ける ※色を分けると自分の癖がわかる
青:苗字だけの人名、初出時に何の説明もない人名
赤:定義または説明なく出てくる特殊な用語、専門用語
オレンジ:内容を却ってわかりにくくする形容詞や副詞
緑:具体的に特定されず、簡単な説明もされずに出てくる事象
黄色:略語 - 〈分野〉外の言葉に書き直す
第5章 〈分野〉の歩きかた
265ページの「やってみよう」:「きみの問題はなに?」書店を開く
目標:自分の〈分野〉の文献を、それが扱っているテーマではなく、研究の動機となっている問題によって分類する。そのために、少数の二次資料を「問題セクション」ごとに分けて並べてみる。
- 自分のテーマに関連する〈分野〉の二次資料から、短いものを6点から8点選ぶ。
- リストアップした最初の資料のテーマを書き出す。
- その資料が扱っている具体的な事例を書く。
- その研究で扱われている具体的な問いをリストアップする。
- 見つけた問いと問いをつなぐパターンを見つける。
- 問題を明らかにする。
- リストアップしたタホ資料について、ステップ1~6を繰り返す。
- 資料のほとんどについてこの作業を終えたら、様々な著者の問題をつなぐテーマまたはパターンがないか探す。
(以降省略)
結びに代えて
この本の「やってみよう」を、複数のテーマでコツコツやってみました。
ようやく、研究上の関心を焦点化することが、多少できるようになった気がします。
買ったもののあまり役立ててこなかった論文作成のガイドブック的な本が、手元に何冊かあります。
これらの書籍を購入した当時は正直なところ、内容があまり腑に落ちず、論文作成に辿り着きませんでした。でも、『リサーチのはじめかた』の「やってみよう」の実践を経た今、論文作成ガイドがなんと容易に腑に落ちることか。
学生の頃に、『リサーチのはじめかた』のようなことを教えてくれる先生に出会っていたら、人生が全然違っていたんだろうな。
と思う一方で、学生当時の私の関心の向く先には、人生を懸けるに相応しいテーマはなかったとも思います。
今後の人生を懸けて探究してもいいかも、と思えるテーマに出会ったような気がする今、『リサーチのはじめかた』に出会えたことに感謝しつつ。