ゲッティンゲンに行く直前の出来事
ヴァイマールのリスト訪問
ハンガリー出身のヴァイオリニスト、レメーニの仲介でブラームスはヨアヒムと知り合い、彼はブラームスにリスト訪問を勧めます。
リストは当時40歳くらい。
国際人で、ヨーロッパ音楽界においては影響力の相当大きい重要人物でした。
1853年、リストはブラームスとレメーニをヴァイマールのアルテンブルク邸に招待します。6月12日、20歳のブラームスはリストを訪問。リストの愛人様のお宅で、世界的に著名な音楽家の集うサロンだったようです。
リストは若いブラームスの音楽と才能に期待を寄せたようで、作品の演奏を求めますが、ブラームスは固辞。代わりにリストがブラームスの持参した《スケルツォ》を初見で見事に弾いてくれました。
ヴァイマール滞在中にレメーニと決別
古典的な美を規範とするブラームスにとって、リストらの新しい音楽の潮流は認めざるを得ないものではあっても、アルテンブルク邸の雰囲気は居心地が悪かったのかもしれません。
ブラームスがレメーニを「本当のことを言ってくれない、嘘つきだ」としたからか、リストからの演奏要請を固辞したことにレメーニが腹を立てたか、それともその両方があってか、二人の仲は決裂。
レメーニは伴奏者としてのブラームスを首にします。
ブラームスは一人ヴァイマールを去り、ヨアヒムのいるゲッティンゲンに向かいました。
ゲッティンゲン 市の概要
ゲッティンゲンは、ドイツのニーダーザクセン州南部、ゲッティンゲン郡に属する大学都市。
メルヘン街道のほぼ中央に位置していて、古くから大学町として知られています。グリム兄弟も教鞭をとった大学は、ノーベル賞受賞者を30人以上輩出してきた名門。
旧市庁舎 Altes Rathaus は、基礎は1270年頃に建てられ、14世紀から15世紀の間に拡張されました。現在は展覧会や音楽界などの催し物に使われています。
- 人口:12万人ほど
- 鉄道でのアクセス:
ICEでフランクフルトから約1時間50分、
ハノーファーから35分
カッセル・ヴィルヘルムヘーエ駅から約20分
ヨアヒムに再会、ゲッティンゲン大学で聴講
ブラームスは、ゲッティンゲンでヨアヒムに再会。お互いの作品を批評し合い、音楽を語り合う、満たされた関係を再び持つことができました。
当時、ヨアヒムはゲッティンゲン大学で歴史や哲学を聴講していました。ブラームスも、ゲッティンゲン滞在期間中はヨアヒムとともに哲学等の授業を聴講するなどして大学の雰囲気を体験。
6月末から8月中旬まで約一か月半の間ゲッティンゲンに滞在し、充実した時間を過ごしたのでした。
ちなみに、8月26日からはライン地方徒歩旅行に出て、その途中デュッセルドルフでシューマンと運命のご対面となります。
frei, aber froh 自由に、しかし陽気に
ヨアヒムは、知識と教養が豊か。
ブラームスは哲学な思索をこのお兄さんから学びました。
ヨアヒムの好んだ座右の銘「自由に、しかし孤独で frei, aber einsam」。精神の自由を標ぼうし、理想主義的なドイツ哲学を反映したものです。
これをもとにブラームスは「自由に、しかし陽気に(frei, aber froh)」というモットーを掲げたとされています。
ホフマン・フォン・ファーラースレーベンとの出会い
ブラームスはゲッティンゲン滞在中に、多くの文化人と面識を持つこともできました。
特に重要だったのは、詩人ホフマン・フォン・ファーラースレーベン(本名アウグスト・ハインリヒ・ホフマン、1798-1874)と出会ったことです。
ブラームスの愛好する詩人のひとりで、1852年から翌年にかけて作曲された《六つの歌》(作品3)の第二曲《愛と春その一》と第三曲《愛と春そのニ》、1853年に作曲した《太陽に向かう雲のように》《ナイチンゲールは羽ばたく》(作品6)で、ブラームスはファーラースレーベンの詩を用いています。
この詩人との出会いは、ブラームスにとって大きな収穫でした。
ちなみにドイツの国歌はファーラースレーベンさんの作詞。
詳細はドイツ大使館のサイトで⇒
1853年 ピアノ・ソナタ第三番ヘ短調の作曲に着手
リストを訪問し、レメーニと決別し、ゲッティンゲンで充実の時を過ごしたこの年、ブラームスはピアノ・ソナタ第三番ヘ短調の作曲に着手します。
前の二曲のソナタと比べて格段に高度な作品で、19世紀後半におけるピアノ・ソナタの最高傑作のひとつとされています。
情熱的で、交響曲的な広がりをも持ち、ブラームスのその後の人生を広げていくものとなりました。
ゲッティンゲンその他の見どころ
楽器博物館
ゲッティンゲンには楽器博物館もあります。
ヨーロッパの歴史ある都市にはしばしば楽器博物館があって楽しいです。
音楽好きなら要チェック!
市立博物館
建物はルネッサンス様式の、1592年の館。
きっとブラームスも目にしたに違いありません。
大学の近くにあります。
ツム・シュヴァルツェン・ベーレン
16世紀からレストランとして営業しているという歴史あるレストラン。
ブラームスもここで食事したかも!?
シューベルト《菩提樹》のモチーフの木
ちょっとネタ違いですがついでにご紹介。
ゲッティンゲンから電車で南に向かって30分ほど行ったところに、バート・ゾーデン=アレンドルフ Bad Sooden-Allendorfという町があります。
18世紀の詩人ヴィルヘルム・ミュラーの詩にシューベルトが曲を《菩提樹》。このモチーフとなった大木が、町の南東に位置する Brunnen vor dem Tore シュタイン門 Steintorの外に立っています。
ゲッティンゲンのホテル
20歳の青年ブラームスが2か月近くもの間滞在したというゲッティンゲン。
最低でも数日は滞在して、町の隅から隅までうろうろしたいものです。
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2019年8月の利用で、一泊数千円から2万円弱まで広い価格帯でありました。これなら比較的長めに滞在できそうです。