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横断歩道で止まらない9割以上の車たち ―歩行者の立場から見る日常の交通問題

歩行者無視で横断歩道を通過する車が9割以上の問題のイメージ画像

かつて運転していた側でもあり、また誰かが運転する車に同乗していることも多くありましたが、今ではほぼ歩行者であるという立場から、車優先社会の問題の1つ、信号機のない横断歩道を歩行者が渡ろうとしていても車を止めないドライバーが9割以上という問題について考えます。

目次

車優先意識:歩行者-自動車事故問題の核心

私の日常の移動手段は徒歩+公共交通機関。
歩いていると、道路の使い方を巡る問題が山ほどあると感じます。

信号機のない横断歩道を歩行者が渡ろうとしていても車を止めず歩行者を渡らせない運転者の存在は、その山ほどある問題の一つでしかありません。

しかし歩行者が犠牲となる交通事故をめぐる問題の核心「自動車優先意識」を端的に表していると言えるのではないでしょうか。

自動車優先の意識は、道路の作りや国家の予算配分、ドライバーの交通ルール無視など、様々な側面に現れて問題を引き起こし、歩行者の命を奪います。

その問題が問題として認識されるのは、小さな子供の死亡事故が起こったときなどですが、数か月もすると事故は風化し、問題を根本的に解決しようという流れにはなかなかなりません。

信号機のない横断歩道で車を止めないドライバーたち

道路交通法では、人が横断歩道を渡っていたり、渡ろうとしたりする時、運転者は一時停止しなければならないということになっています(道路交通法38条 横断歩道等における歩行者等の優先)。

この数年で問題意識が多少高まってきたこともあり、止まる車が増えてきたようには思いますが、それでも止まらない車がまだ多数派のように感じます。

JAF(日本自動車連盟)が2016年から実施している、信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況実態調査によると、一時停止する車は2018年の調査ではわずか8.6%。

JAFの過去の調査を遡ってみると、一時停止した車は

2016年の調査:7.6%。
2017年の調査:8.5%

でした。

2016年の調査開始当初と比べると、止まる車はわずかですが増えています。この調子で毎年少しずつ増えていけば、100年後か、遅ければ1000年後には、全ての車がこの法律を守れるようになる、まっとうな社会がやってくるかもしれません。

私も、今生きているほとんどの人も、死んだ後のことですが。

信号機のない横断歩道に歩行者がいても車を止めない理由

JAFは全国の自動車ユーザに対するアンケート調査も行っており、その中で運転者が車を止めない理由としては、以下のようなものが挙げられていました(2017年のアンケート調査より)。

  • 自車が停止しても対向車が停止せず危ないから 44.9%
  • 後続から車がきておらず、自車が通り過ぎれば歩行者は渡れると思うから 41.1%
  • 横断歩道に歩行者がいても渡るかどうか判らないから 38.4%
  • 一時停止した際に後続車から追突されそうになる(追突されたことがある)から 33.5%

「皆が止まらないから自分も止まらない」という意識がとても強いように感じられます。

それに、歩行者からすればいずれも言い訳にすぎません。交通量の多い道路で自動車が途切れるまで待つ者の身になってみろ!と言いたくなります。

道路交通法38条を、ドライバーは知らないor忘れる?

信号機が設置されていない横断歩道を歩行者が渡ろうとしている場面で一時停止した車は、前述の通り、2018年の調査ではわずか8.6%。

9割以上の車が、法律を無視して横断歩道を通過してしまうという実態があるわけですが、これらの車を運転していた人たちにはそもそも、法律に違反する行為をしているという自覚はあるのか?

多くのドライバーは、教習所で習ったことを忘れてしまっているか、もしくは法律を知らないのではないか?

そう強く思ったことがあります。

信号機が設置されていない横断歩道を渡っていた時、横断歩道に向かってきていた車がスピードを緩めずクラクションを鳴らして横断歩道に突っ込んできて急停車し、私に罵声を浴びせてきたことがありました。

私は横断歩道を渡る前からその車には気付いていましたが、車はそんなにスピードは出しておらず、横断歩道までは止まろうとすれば十分に止まれる距離がありました。

にもかかわらず、歩行者の安全を脅かし、かつ威嚇までしてきたわけです。

40~50代くらいの男性でした。

「ここでは歩行者が優先だ!」

と私は怒鳴り返しましたが、彼は教習所で習ったことを忘れてしまったか、もしくは、道路交通法を理解せずまた覚えもしないまま、免許を取ってしまったのではないかと思いました。

信号機が設置されていない横断歩道では歩行者優先、という意識がカケラでもあれば、凶器・大音量・罵声の3点セットで弱者に脅しをかけるという行為は、まっとうな人間にはできないと思うのです。

ただのイカれたおっさんだったというならそれまでですが。

実は多くのドライバーが停止義務を知っている

前項では挙げたのは極端な例ですが、あまりに多くの車が横断歩道手前で止まらないので、運転免許を取ったら多くの人が停止義務を忘れてしまうのではないか、もしくは教わっても覚えないまま免許を取得してしまうのではないかと思っていました。

しかし実は、信号機のない横断歩道に歩行者がいたら車を止めるべきとわかっているドライバーが多数派であると思われます。

JAFが行ったアンケートによると、信号機のない横断歩道の手前に「ひし形マーク」の路面表示があった場合には、「この先に横断歩道があるという意味なので注意して走行する」と回答した人は74.9%。

約7割以上の人が「ひし形マーク」の意味を知っているのです。

ひし形マークの意味を知っていて、信号機のない横断歩道での停止義務を知らない、という人は恐らく少数派。

ということは、恐らく7割以上の人が信号機のない横断歩道での停止義務を知っていて違反しているのです。

これはタチが悪い。

悪いことと知らないでやってしまうのと、悪いとわかっていてやるのとでは、後者の方が断然タチが悪い。

車という凶器を操作する人が、歩行者を守るこの重要な法律を知らないというのも大問題ですが、その場合は、この法律を分かっていなくても運転免許がとれてしまう仕組みの問題が先に問われるべきです。

多くの運転者が横断歩道の手前で止まらない、その背景にあるもの

信号機が設置されていない横断歩道を歩行者が渡ろうとしている場面で、運転者は車を一時停止させなければならないと知っているにも関わらず、多くのドライバーは法律に違反し、歩行者を無視して、一時停止せずに横断歩道を通過してしまう。

前述のJAFのアンケートにはドライバー側の停止しない言い訳が示されていましたが、その言い訳には明示されない、ドライバーが意識しているのかしていないのかわからないものがいくつかあると思います。

止まりたくない

車を止めない、その最大の理由は「止まりたくない」「車を止めたくない」というドライバーの気持ち。

信号が黄色になっても車を止めないで交差点に突っ込んでいくのと共通する心理です。

減速・停止そのものが面倒なのか、急いでいるのか、事情は色々とあるのでしょうが。

法律や歩行者の存在を無視してしまう、自分を優先するワガママな心です。

「皆が止まらないから」という意識

多くの車が止まらないのだから、自分だけ止まるのは損だと思っている人が多いのではないでしょうか。

「赤信号 皆で渡れば 怖くない」という標語?のようなものもありますが、自分の信念や良心よりも、「皆がやっているから自分もやる」的なバンドワゴン効果のようなものが強く働いてしまっている人が多いように感じられます。

違反しても取り締まられることは滅多にない

信号機のない横断歩道の手前での停止義務違反を取り締まっているのを、私は見たことがありません。

警察が行う取り締まりの中で、この件は優先順位が低いのではないでしょうか。

違反しても取り締まられないのだから、目的地の到着を一刻でも早めたい意識が強く働いてしまうのでは。

強者優先、車優先

車という走る凶器に乗っている人は、やはり強者。歩行者は、車に当たれば大けがをするか、悪くすれば死んでしまうので慎重になります。

そこに付け込んで、ドライバーは凶器を振りかざして好き放題やっていいと思い込んでいるのでは。

日本は車に限らず強者が優先され弱者に冷たい社会。それが車優先という意識に現れているように思います。

また、この意識が多くの人の根底にあるからこそ、ドライバーは信号機のない横断歩道に歩行者がいても停止せず、警察はその違反を取り締まらないのだと思われます。

道路の作りや街の作りが車優先になっているのも、この意識が根強いからこそではないでしょうか。

地域で異なるドライバーの対応

ワシのシマでは

私の住む神奈川県のとある町では、信号機のない横断歩道を渡ろうとすると止まってくれる車が、この1年ほどで各段に増えてきたと感じています。

20年ほど前から欧米を含め外国に行く機会が増え、日本では歩行者、交通弱者がないがしろにされていると強く思うようになったことから、信号機のない横断歩道では渡る意思を明確に示して、車に停止を促すようにしてきました。

多少の危険は伴うのですが、私がそうすることで、横断歩道を渡りたいけど車が途切れるのを待っている人が私と一緒に渡れるし、続けていれば運転者の意識も少しは変わっていってくれるのではないかと思っていたからです。

その努力が功を奏したとまでは思いませんが、最近、私の住む街では信号機のない横断歩道の手前で止まってくれる車が増えてきました。

法律で決められていることですが、ありがたいと思うし、嬉しいです。

もっとも、これは町の中心部に限ったことで、1kmほど離れたところでは、横断歩道に踏み出しても車はまず止まってくれませんが。

意外?愛知県は歩行者に優しい

信号機のない横断歩道手前で車が停止しない件について私の問題意識が高まったのは、今から約18年ほど前、長年住み慣れた場所を離れて暮らした経験からでした。

私が長年住んでいたエリアでは、交差点に進入する車はほとんどが、歩行者や自転車に配慮することなく交差点に突っ込んでいました。

でも18年ほど前に1年間ほど住民票を置いた名古屋では、交差点に進入しようとする車が、交差点で一旦途切れる歩道の手前で停止して、歩行者や自転車をやりすごしてから交差点に進入するのを、度々目にしました。

名古屋に引っ越す前は、名古屋の人は運転が荒い、スピードが速いと聞いていたのですが(確かに大きい道路ではちょっと怖い思いもしました)、歩行者に対する配慮は、首都圏の比ではありませんでした。

前述の、JAFが2018年に行った信号機のない横断歩道における車の一時停止率の調査では、愛知県は停止率が22.6%。決して高くはありませんが、停止率が20%を超える県は愛知県を含めて6県しかなく、愛知県は意識が高い方と言えるでしょう。

終わりに

同じ道路を使う者同士、法律とマナーをお互い守り合って、対等な立場で道路を平和に利用したいものです。

でも本件については、人の良心や善意に働きかけても、改善することはないだろうと思います。

というのは、社会のあちこちで人の関わり方がとてもギスギスしていて、それが運転にも表れていると思われるのと、この状況が改善するかどうかといえば、悪化していく可能性の方が高いと思われるから。

歩行者のマナーも悪くなる一方に見えます。

そんなふうに未来を悲観している私の希望は「自動運転」。

情報系については人並み以上に学んできたので、AIや自動運転のリスクや課題については認識しています。

しかし、AIが運転すれば、法律を守る車が激増するでしょう。
人の判断ミスやマナー無視による事故は激減するでしょう。

人のマナーは悪化する一方だから、人工知能の可能性に希望を託します。

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この記事を書いた人

このブログを運営しているブジカエル、カエル好きですがカエルにはあまり詳しくありません。精神障害者の地域生活を支援する精神保健福祉士、社会福祉士、国家資格キャリアコンサルタント。旅好き、学び好き、放送大学12年目のマルチポテンシャライト。科学的な幸福の研究に興味津々なポジティブ心理学実践インストラクター。健康管理好き、2013年に健康管理士、食生活アドバイザー3級&2級を取得。
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