こんにちは、ブジカエルです。
2023年2月、社会福祉士の試験に合格したと思われるので、精神保健福祉士国家試験に向けての学びを始めました。
この記事では、過去問題をしゃぶり尽くします。
↓過去問題はここ↓
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事例問題3
次の事例を読んで、問題について答えなさい。
〔事例〕
人口7万人のQ市は、人口減少や世帯の小規模化が進み、地域のつながりの希薄化が課題となっている。X障害者基幹相談支援センターのE相談支援専門員(精神保健福祉士)(以下「E専門員」という。)はピアサポーターから、「地域の事業所は、精神障害への偏見の修正や生活のしづらさの改善のために、地域にどう関わり、支援に活かしているのか」と聞かれた。E専門員は地域内の取組を伝えながら、幾つかの課題が頭に浮かび、それを整理する必要があると考えた。そこでE専門員は、翌月開催されたQ市「協議会」の部会で、「各事業所及び事業所がある地区の強みと弱みなどを可視化して、現状や課題を探ってみませんか」と参加者に提案した。
その後、8事業所から参加協力を得て学習会を開催し、市内各地区のマトリックス表を作成した。実施後に参加者から、「地区別の各事業所の課題と役割が分かった」「市全域と各地区との関係が分かった」「現状を各地区の実践にどう活かすかが今後の課題だ」と報告があった。(問題55)
E専門員は報告を取りまとめ、「この結果を実践に活かすために、各事業所が個々の支援で工夫していることや課題と、今回地区ごとに可視化できたこととを結び付けてみてはどうでしょう。それらを精査して、地区やQ市の戦略的方策を考えていきませんか」と学習会において新たに提案した。(問題56)
その後、学習会で検討した結果、「取組はあるが、その実践スキルやノウハウが集約できていない」「取組成果が地域に発信されていない」「住民からフィードバックを受ける仕組みが整っていない」ことが整理された。そこで「協議会」ではそれらを戦略的方策として、地域住民や当事者、その家族と事業所の協働で、地域実践を蓄積する方法を開発し、外部評価の仕組み作りを進めていった。この活動が継続していくと、参加する住民や団体も増え、Q市各地区での信頼感や結束力の高まりがみられるようになった。(問題56)
(注)「協議会」は、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」に基づき、障害者等への支援体制の整備を図るため、保健医療関係者、福祉関係者等で構成される。
問題56 次のうち、この時点でE専門員が活用を意図したコミュニティソーシャルワークの機能として、適切なものを1つ選びなさい。
- 精神障害当事者家族の問題解決能力の向上
- 地域における新しいニーズの発見
- 新しい社会資源の創造
- 個と地域の一体的支援の展開
- 住民による地域福祉問題の早期発見機能の強化
設問について
コミュニティソーシャルワークについての理解が問われる問題。
中央法規当該科目IIテキスト第2版p296~、300~、等。
各事業所で工夫していること、課題、今回地区ごとに可視化できたことを結び付け、精査して、地区やQ市の戦略的方策を考えていくというのは、下記8つの機能のうち、「4. 個と地域の一体的支援」に該当する。
コミュニティソーシャルワークの機能を、岩間伸之は以下の8つに整理している。
- 広範なニーズへの対応
制度の狭間の解消を視野に入れる。
従来の制度的枠組みに依拠しない。
地域生活上の生活のしづらさという広範なニーズに対応。
アウトリーチおよび先駆的・開発的機能の重視。 - 本人の解決能力の向上
個人、家族、地域住民等の当事者本人を課題解決やニーズ充足の主体とする。
地域における生活主体者としての視座を尊重。
主体性の喚起によるエンパワメントの促進。 - 連携と協働
地域における多様な担い手や複数の機関との連携、多職種連携と協働。
ネットワークの活用による課題解決アプローチ。
本人を中心とするオーダーメイドの支援システムの形成。 - 個と地域の一体的支援
個を地域で支える援助と、個を支える地域をつくる援助の、一体的推進。
個別支援から地域支援への連続性のある展開。
一つの事例が地域を変える、という積極的展開。 - 予防的支援
事後対応型から事前対応型への転換。
地域住民との協働による、早期発見、早期対応。
広範なアウトリーチの展開。
地域における予防的プログラムの開発および導入。 - 支援困難事例への対応
多様化、深刻化、潜在化の様相を呈する支援困難事例への適切な対応。
専門職による根拠に基づくアプローチ。
地域における多様な担い手による、ケースカンファレンスの活用。 - 権利擁護活動
最低限度の生活の維持、および権利侵害状態からの脱却。
さらに、本人の自己実現に向けたエンパワメントの促進、予防的観点からの権利擁護、権利侵害を生む環境の変革を包含。
地域における多様な担い手の参画。 - ソーシャルアクション
個別支援の蓄積から当事者の声を代弁し、その声を束ねながら社会の側の変革を志向。
広範な個別ニーズの把握、地域住民の気付きの促進、分かち合いの促進、共有の拡大と検証という展開を重視。
岩間伸之「地域を基盤としたソーシャルワークの特質と機能–個と地域の一体的支援の展開に向けて」(『ソーシャルワーク研究 : 社会福祉実践の総合研究誌』ソーシャルワーク研究編集委員会 編 37 (1), 4-19, 2011、中央法規出版)
各選択肢について
選択肢1:精神障害当事者家族の問題解決能力の向上
×
上記機能の「2. 本人の解決能力の向上」に該当すると考えられる。
選択肢2:地域における新しいニーズの発見
上記機能の「1. 広範なニーズへの対応」に該当すると考えられる。
選択肢3:新しい社会資源の創造
×
上記機能の「1. 広範なニーズへの対応」や「8. ソーシャルアクション」等に該当すると考えられる。
選択肢4:個と地域の一体的支援の展開
〇
各事業所で工夫していること、課題、今回地区ごとに可視化できたことを結び付けて精査し、地区やQ市の戦略的方策を考えていくというのは、個別支援から地域支援への連続性のある展開が目指されている。下記8つの機能のうち、「4. 個と地域の一体的支援」に該当する。
選択肢5:住民による地域福祉問題の早期発見機能の強化
×
上記機能の「5. 予防的支援」に該当すると考えられる。
正答
4(個と地域の一体的支援の展開)