新型コロナウイルス感染症の影響で、今年度のスクーリングはオンライン学習となりました。
夏休みをもらったものの、コロナ禍の中旅行とか行楽とかする気にもならず、スクーリングの学習に取り組みました。
↓1年次のスクーリングについての記事はこちら
3日目の学習内容
3日目に視聴した動画は以下の通り。
- スクーリング2日目の課題解説
- 3日目の学習内容説明
- ケースの概要を読みながら説明
- 課題説明
- 講師らによるケース会議場面のロールプレイ視聴
- コミュニケーションと自己覚知、多職種連携、ネットワーク構築についての動画
- 再度課題についての説明
- まとめ
動画3:ケースの概要説明
今回の事例は、施設内のケースあるある。
事例検討の資料は事前に郵送されていました。郵送ですよ、郵送。
まず、ケースの概要を読みながら、そこからどんなことを考えるか、読み取るか、知識として整理しておきたいこと等が説明されました。
- 要介護3とはどんな状態か:常時介護が必要な状態
- 脳梗塞を発症した人は、心筋梗塞のリスクもある。
- 介護老人保健施設、特別養護老人ホームはどんな施設か。根拠法は何か:介護保険法、老人福祉法
- 右半身に麻痺があるということは、脳の左側に梗塞が発症したということ。どんな障害やリスクがあるかを考える。
- 社会福祉法人とはどういう法人か。根拠法は何か。今から整理してくように:社会福祉法に規定あり
- 地域包括支援センターとは何か。
- 居宅介護支援事業所と居宅介護事業所は違う。
- 通所介護、デイケアの違い。
動画4:課題説明
1. デマンドとニーズの違いはなにか
デマンドとは何か、ニーズとは何か。
デマンドとニーズを混同しているとどんなことが起きてしまうかを考える。
2. 施設の方針を踏まえて入所者の自己決定
入所者の自己決定、意思決定をどのように尊重したらよいか。
施設の方針にどう沿っていけるか。
一生懸命やっているのになぜ、というのは誰の立ち位置か。
3. 自己覚知の必要性
自己覚知の必要性にどうしたら気付けるようになるか。
誰かに言われて気付くではなく、本人が気付かなければならない。
違うよと指摘するだけではしこりが残っていく。
気付かない人がどうしたら気づけるようになるのか、
自己認識をどうしたらいいのか。
誰目線で考えていくのか。
ワーカーとしての立ち位置は。
動画6:様々な職場におけるワーカーの話
コミュニケーションと自己覚知について
母子生活支援施設で支援をしている講師のお話。
- 自分と相手の当たり前の違いを認識すること。
- 自分はどういう時にどう感じ何を考えるのかを知る。
- 相手が何を求めているのか、相手に必要なことは何なのかを考えて応えていく。
多職種連携におけるソーシャルワーカーの連携
地域における連携について。
ケース会議で情報共有や方向性のすり合わせをする際など、社会福祉士には広く周りを見る力が必要。
ネットワーク構築の重要性
本来はメンバーの選定から始まる。
本人・家族の参加の是非も含めて検討する。
社会福祉士はネットワークを作っていく中心人物の一人。
まとめ
担当?講師から、今回のスクーリングのまとめ的な動画で、課題についての補足が再度。
さらに、
- 正解があるわけではなく、色々な答えを出せることが大切。
- 「自分はこう考える」が書けたらその理由、根拠を示すこと。
- 正しい/正しくないにこだわらない
といったことが述べられていました&課題頑張れと。
課題③-1
課題文
デマンドとニーズの違いについて、考えをまとめてみましょう。
デマンドとは何か、ニーズとは何か。
これを踏まえて上で、デマンドとニーズを混同しているとどんなことが起きてしまうかを考えましょう、ということでした。
なので、まずは用語の確認をします。
マーケティングの分野でも出てくる言葉ですが、当然、福祉の分野での使われ方を踏まえます。
学校のテキスト『現代社会と福祉』を主に参考にしました。
デマンドとは
個人ないし集団が、主観的な欲求に基づいて、何らかの資源を入手したいと思っている状態。
何らかの望ましい状態を実現するために、それらが求められている。
個人の欲求に基づく主観的な概念。
この実現の有無が快・苦につながるという意味で利害と関連する。
ニーズとは
何らかの資源が求められているのはデマンドと同じだが、その何かが求められる理由がデマンドとは異なる。
ある種の価値判断によって望ましい状態が想定され、それを実現するために欠けている(不足している)ものを求めるといった思考の手続きが前提。
単に個人の欲求を満たすといった恣意的なものではなく、何らかの価値判断を含む客観的な概念。個人的な欲望を超えた何らかの道徳に基づいている。
実現の有無が正・不正につながるという意味で善悪に関連している。
福祉ニーズの大きな特徴の1つは「社会的ニーズ」であること。単に個人の欲求を満たすという恣意的なものではなく、その時代の経済・社会情勢や文化的な背景などの視点を含んだ社会生活を営む上で必要とされるものの充足を指す概念。
デマンドとニーズの関係
デマンドとニーズには上記のように異なるものだが、無関係というわけではない。
多くの場合、需要を通してニーズが表出される=自分が必要であると感じたものを、デマンドとして表現する。
社会福祉における需要とは、福祉ニーズに裏付けられつつも、それが社会的意識の表層面に現れた部分と言うことができる。
需要は供給との相対関係に存在するので、供給体制の整備が整わなければ表面化されず、体制の整備によりニーズの掘り起こしを行うことで表れてくるもの。
福祉ニーズの一部が、要援護者の要求という形で顕在化しているが、それはニーズ全体という氷山の一角である。
福祉ニーズは、複雑な客観的位相的な構造であり、経済社会の構造変化に従い、長期動態的に変動する。福祉需要は、ニーズに比べて、特定のサービスなどへの要求量としてシンプルな性格を持ち、短期静態的に決定される。
Aさんのデマンドとニーズを分けて考えることの必要性
デマンドとニーズを分けて考えていない場合にどんなことになってしまうのか、ロープレの内容を踏まえて考えます。
Aさんのデマンド
特に描写や設定らしいものはない。
Aさんのニーズを推測
- 夫の死後気ままに暮らしていたように、施設でももっと気ままに暮らしたいのでは。
- 入院中や介護老人施設内では色々な我慢を強いられたということから、(今は口には出さないが)本当は色々我慢しているのではないか。
- 転倒に対する不安をもう少し何とかしたいのではないか。
- まれに失敗する排泄について、何か思うところがあるのではないか。
表層に表れたもの(デマンド、言語)を鵜呑みにするとこうなる
- 私たちは日々ニーズの汲み取りを心掛けているので、不平や不満を持っているなんて考えられない
- ニーズ聞き取りの定期調査でも不満の訴えはない
- 日常生活の希望や思いは明確に表現されている
- 自己決定はできている
- 今のままの生活を行っていただくのがいいのでは
- 笑顔で接してくれるし、いつも感謝の言葉をくれている、家族の思い過ごしではないか
- 感謝の言葉、職員に対する好意的な姿勢、入所後暗い表情は見せない、穏やかに過ごしている、勘違いではないか
デマンドとニーズを分けて受け止めるとこうなる
- 本人が言ったからといって、それが本当に自己決定やニーズと言えるのか疑問
- 遠慮や気遣いで言いたいことが言えなかったり、不平や不満を悟られないようにしたりしている人もいると思う
- 不満かどうかはわからないが、愚痴っぽいことや不安を抱えていることについて話している
- 笑顔や感謝の言葉はあるが、我慢はたくさんしていると思うし、職員に気遣いもしていると思う
- 職員がゆとりを持たずにかかわっていることで、暗に我慢を強いているかもしれない
- 注文の多い入所者さんより、訴えが少なく感謝をあらわしてくれる入所者さんはやりやすい入所者さんと思っていたことに気づいた
- 言語化された情報から導き出されたニーズと、非言語的情報から導き出したニーズに違いがあるのではないか
解説
9月10日になり、スクーリング4日目の動画が公開され、本課題の解説もされました。
下記は先生による解説要約メモ。
- デマンドとニーズの違いを考え書いてほしかった、現場ではその捉え方で支援が異なってくるから。
- デマンド:即座に解決しなくても問題にならないもの。わがままと言えるものである場合もあるが、無視していいわけではなく、情報として共有・認識はしておく。
- ニーズ:情報を集めた中から分析を行って(=アセスメントの結果)導き出された課題。根拠がある。支援をすることによってその人の生活に変化をもたらす。全ての人が共通認識を持つべきもの。
- デマンドのニーズの違いは、根拠があるかどうか。
- デマンドだから切り捨てていいということではないが、本人が言うこと全部に応えていこうというのは支援ではない。
- ニーズに対しての支援は方法論、計画に基づく、理念・理論が裏付けにある。
デマンドは個人対個人になってくるのでは。
ここをはき違えないワーカーになれるように。
課題③-2
課題文
施設の方針でもある「入所者 ・利用者本位の支援」をふまえ、入所者の自己決定をどのように尊重したらよいかについて、考えをまとめてみましょう。
先生からの回答のヒントは、
- 「入所者 ・利用者本位の支援」施設の方針に、どのようにしたら沿っていけるのか。
- 一生懸命やっているのになぜ、というのは誰の立ち位置か。
ということについて考えるように、「自己決定」でわかりにくければ「意思決定」で考えよ、ということでした。
入所者 ・利用者本位とは
利用者主体とも。
援助者の価値観・価値基準の基で援助するのではなく、利用者の立場・視点に立って援助観を決定していくこと。
入所者・利用者視点で援助観を持つには
- 高齢者の個別性を尊重する。
高齢者は、長年にわたる生活習慣や環境の違いが積み重なり、心身の状態に様々な影響を与えており、若年者よりも個人差が大きい。高齢であることだけを属性として捉えるのではなく、高齢者一人ひとりの個性を尊重し、サービスを提供する必要がある。 - 個々の症状だけでなく、心身の状態や日常生活の全体像を踏まえたニーズの把握、すなわち「全人的な評価」をする。
- 入所生活や介護に関する高齢者の思いやニーズを客観的に評価する視点を持つこと。
解説
9月10日になり、スクーリング4日目の動画が公開され、本課題の解説もされました。
下記は先生による解説要約メモ。
- 具体的に実行する方法まで踏み込んでほしかった。
「~を確認する」ではなく、どのように確認するのか。「自分ならこう聞く」「どういう言葉で、誰にどういう風に聞く」など。
課題③-3
課題文
職員への「遠慮や気遣い」、施設への「不平や不満」に気がつく職員と気がつかない職員がいる。
気がつかない職員たちに求められる自己覚知の必要性に焦点をあてて考えをまとめてみましょう。
先生からのヒントは、
- 自己覚知の必要性にどうしたら気付けるようになるか
- 誰かに言われて気付くではなく、本人が気付かなければならない
- 気付かない人がどうしたら気づけるようになるのか
- 違うよと指摘するだけではしこりが残っていく
- 自己認識をどうしたらいいのか
- 誰目線で考えていくのか
- ワーカーとしての立ち位置は
というようなことでした。
他者を理解するために
端的に言うと、職員への「遠慮や気遣い」、施設への「不平や不満」に気がつく職員は、他者理解ができる人、気が付かない職員は他者理解ができない人、となります。
人は、自己理解の程度でしか他者に対する理解は進まないと言われているので、気が付かない職員は自己理解が不足している人、とも言えます。
また、他者を理解するためには、「聴く」姿勢がとても大切。丁寧に、素直に、目の前の人をわかろうと努力することは他者理解の第一歩。言語メッセージを頭で正確に受け止めつつ、非言語的メッセージで訴えてくるものも受け止め感じたいものです。
言語表現以上に非言語表現は多くのメッセージを伝えている。援助者は利用者が言葉にしない気持ちや考えなどの非言語的メッセージをつかむことはとても重要です。
また、他者から受け取ったメッセージは、内容は同じであったとしても、物の見方や考え方は人によって異なるという前提に立って、他者が使う言葉の意味、伝えようとしていることを受け止める必要があります。
しかし、利用者の気持ちに寄り添い、理解することは難しい。難しいことなのだという前提のもとに、理解するための努力を続けることが求められていると言えそうです。
自己理解を深める
前項に書いたように、人は自己理解の程度でしか他者に対する理解は進まないと言われているので、自己理解を深めることは、他者理解を深め、表出されないニーズに気が付くようになるための一助となるのでは。
自己理解を勧めるには、自分の自己概念(感情、思考、行動)が周囲の出来事や人間関係に大きく影響する事実を知らなくてはならない。そして自己概念は変わりにくい。その事実を大前提に、自己理解を常に意識すべし。
また、対人援助において、援助者は援助において自分の反応や自分の行為がどのように利用者に影響を与えるか、積極的に客観的に自分を見つめ気付く「自己覚知」の必要がある。
まずは自分に働きかけて、相手や援助に対する防衛や構え、先入観や意気込みを自覚し、そこからできるだけ自由になる必要がある。継続的な自己覚知は不可欠。
自己覚知を深めるための3つの方法(小舘 1999)
- 人間の行動様式について十分な心理的・精神医学的知識を得る
- 自らの感情の傾向を理解する
- 偏見と先入観を知る
自己覚知の具謡的な方法(森本 2004)
- 自分で取り組む
日常生活の家族や友人とのやりとりの中で、意見や物事への感じ方の違いから、内的感情を常に意識する。自分の感じ方を吟味する。 - ケースを通して自己覚知する
スーパービジョンの場で、スーパーバイザーから援助者の気づかない援助の状況を解説・指摘され、利用者の言動への理解などについて助言・指導を受け、自己の生き方、価値観の偏りに気付き、見つめ直す。
援助者の情緒的反応がスーパーバイザーから受容されれば、建設的な感情処理ができ、自己肯定感が高まる。 - 相談援助演習
事例演習や、ロールプレイ演習などで、自分が気付いたこと、感じたことを個人やグループで振り返ることで、自分の感情、行動様式、価値観について見つめ直す。 - ワークショップ参加
集団の相互作用を活用。エンカウンターグループなどに参加して、集団内で自分の気持ちを表現し、他者の気持ちと出会い、つながりと自他発見により、自他理解を促進する。
気付かない職員について
Aさんの娘からの相談内容を聞き、気付かない職員は、自分の仕事が否定されたように感じたような反応をしました。苦情ではなく、相談だったにも関わらず。でもまぁ、自分たちの仕事に対して「不満があるようだ」と聞いたら普通嬉しくはないですよね。
とはいえ、即座に「不満があるわけがない」、娘がなぜそのような相談をしてきたか、ということについて考えることなく「家族の思い過ごしだ」と決めつけるのは、Aさんを全人的に見られていないことの表れであり、また、自分の仕事に対して誰かが意見した時の自分の反応に対する自己理解が足りないことを思わせます。
気付かない職員たちは、笑顔で接してくれて、訴えが少なく、いつも感謝をあらわしてくれて、好意的で、暗い表情を見せることなく穏やかに過ごしているAさんの、その表面に表れた部分だけを見て「不満があるわけがない」と断じているようです。
でも、人には本音と建前があって当たり前。「顔で笑って、心で泣いて」という経験は多くの人にあるのでは。自己理解を日頃から意識していればすぐに気が付くことです。
毎日続いていく生活に必要なデマンドを満たしてくれる職員に、不平不満を言ったらどうなるか。もしかしたら居心地が悪くなってしまうかもしれない。いつも一所懸命にやってくれているし、文句を言ったら悪い気がする。そう考えたら言いたいことも言えなくなってしまうのではないか。あるいは、最低限のデマンドが満たされていれば、決して満足していなくても、文句を言ってはいけないと考えるかもしれない。世話になる側が考えそうなこと、心理的なことについて、援助側は理解を深める必要があるのでしょう。
解説
9月10日になり、スクーリング4日目の動画が公開され、本課題の解説もされました。
下記は先生による解説要約メモ。
- 自分たちのやっていることが絶対である、間違っていないと思い込んでいる職員に対してどうしていくか、と置き換えて考えてみてほしかった。
- 主役が誰であるかを忘れない。