こんにちは、ブジカエルです。
2019年より就労移行支援事業所で支援員として勤務し、福祉の仕事の素晴らしさにすっかり感化されました。福祉についてもっと理解したいし、支援の幅を広げたく、社会福祉士の資格を取得することにしました。
その学習の記録です。
この記事では、社会福祉士養成通信課程で(32本も!)提出するレポートの作成方法について、イシューから始めたらどうなるかをまとめました。
レポート作成を「イシューから始める」
2010年に出版された、知的生産についての秀逸な書籍がこちら。
この本には知的生産のシンプルな本質=同じ労力・時間で、本当に価値あるアウトプットをいかに生み出していくか?について書かれています。
つまり、今の私たちに大きくのしかかっている、社会福祉士養成通信課程で次々に書いていかなければならない論文32本を、できるだけ少ない労力・時間で、及第点がもらえるレベルにしていくか、ということのヒントが書かれているわけです。
レポート・論文の書き方、といった本はこれまでにたくさん出版されてきていますが、この本はそういったノウハウ本とは一線を画しています。本書に則ってレポート作成を繰り返し行うことで、イシューから始めることに慣れていけると良いのではいかと考えました。
圧倒的に生産性の高い人の「イシューから始める」アプローチ
圧倒的に生産性の高い、「イシューから始める」アプローチでは、
- イシュードリブン:本当に答えを出すべき問題=「イシュー」を見極める
- 仮説ドリブン①:イシューをとけるところまで小さく砕き、それに基づいてストーリーの流れを整理する
- 仮説ドリブン②:ストーリーを検証するために必要なアウトプットのイメージを描き、分析を設計する
- アウトプットドリブン:ストーリーの骨格を踏まえつつ、段取りよく検証する
- メッセージドリブン:論拠と構造を磨きつつ、報告書や論文をまとめる
このサイクルを素早く回し、何回転もさせることが生産性を高めるカギだとされています。
限られた時間の中で一定の成果を上げ続けるための方法として、試す価値がありそうではないですか?
イシュードリブン:解く前に見極める
イシューを見極める
まず、本当に解くべき問題=イシューを見極めます。
生産性を劇的に高めるためにもっとも重要な作業です。
詳細が全く分からないのに、最終的に何を伝えようとするのかを明確にするというのは、人の本能に反したアプローチであり、困難が伴います。
しかし「何に答えを出すためのものであるか」つまりイシューを明確にしてから問題に取り組めば、後から生じるかもしれない混乱や目的意識のブレを防ぐことにもつながります。
仮説を立てる
強引にでも前倒しで具体的な仮説を立てることが肝心なのだそうです。
その理由は以下の通り。
- イシューに答えを出す。
- 必要な情報・分析すべきことがわかる。
- 分析結果の解釈が明確になる。
言葉にする
イシューが見え、仮説を立てたら、言葉に落とします。
言語化することがとても大切なようです。
イシューを言葉で表現することで初めて明確になることがあります。自分のイシューのとらえ方や、何を解こうとしているのかなど。言葉で表現することで落とし込めるわけです。
安宅氏は「人間はことばにしない限り概念をまとめることができない」とも書いていました。言われてみれば当たり前のことですが、言語化されていると改めて「ああそうだ」と腹落ちします。
言語化する時のポイント
- シンプルに表現
- 主語と動詞を入れる
- whyよりもwhere, what, how
- 比較表現を入れる
よいイシューの3条件
- 本質的な選択肢である
- 深い仮説がある
- 答えを出せる
詳細についてはぜひ上記書籍『イシューからはじめよ』をご覧ください。ベストセラーなのでメルカリやアマゾン、図書館にもありそうですよ。
イシュー特定のための情報収集
コツ。
- 一次情報に触れる
- 基本情報をスキャンする(調べる)
ポイントは、数字、問題意識、フレームワーク - 集めすぎない、知りすぎない
イシュー特定の5つのアプローチ
- 変数を削る
- 視覚化する
- 最終形からたどる
- So what? を繰り返す
- 極端な事例を考える
仮説ドリブン①:イシューを分解し、ストーリーラインを組み立てる
生産性の劇的な向上にとってイシューを見極めることは最重要ですが、それだけではバリューのある仕事は生まれないので、次に「解の質」を十分に高めます。
それが、「ストーリーライン」づくりとそれに基づく「絵コンテ」づくり=イシュー分析。
イシューの構造を明らかにし、その中にあるサブイシューを洗い出し、それに沿った分析のイメージづくりを行います。
これを行うことで、最終的に何を生み出すのか、何を伝えることがカギとなるのか、そのためにカギとなるのはどの分析か、というように、活動の全体像が明確になります。
step
1イシューを分解する
イシューが大きな問いである場合、いきなり答えを出すことは難しいので、おおもとのイシューを「答えを出せるサイズ」にまで分解して「サブイシュー」にしていきます。こうすることで、部分ごとの仮説が明確になり、最終的に伝えたいメッセージが明確になります。
大切なのは、ダブりやもれなく、本質的に意味のある塊で分解すること。
多くの検討テーマにおいて分解するための型が存在するものの、何より強力なのは「自分の視点を加えた型」をつくることだそうです。
新しいテーマに取り組むたびに、似たような過去の事例を集めて眺め、共通項をベースにして自分の気になる視点を加え、自分らしい型をつくっていくことが望まれます。
型がないときには「逆算」すると良いそうです。
「最後に何がほしいのか」から考え、そこから必要となる要素を仮想的に何度もシミュレーションすることが、ダブりもモレもないイシューの分解の基本となります。
イシューを分解して整理する効用
- 課題の全体像が見えやすくなる
- サブイシューのうち、取り組む優先順位の高いものが見えやすくなる
step
2ストーリーラインを組み立てる
イシューを分解した次のステップは、分解したイシューに基づいてストーリーラインを組み立てること。人に何かを理解してもらおうとすると、必ずストーリーが必要なんだそうです。
イシューを分解して出てきたサブイシューに個々の仮説が見えれば、最終的に何を伝えるべきかが明確になってきたはあず、ここまでくればあと一歩というところ。
典型的なストーリーの流れ
- 必要な問題意識・前提となる知識の共有
- カギとなるイシュー、サブイシューの明確化
- それぞれのサブイシューについての検討結果
- それらを総合した意味合いの整理
ストーリーラインはできる限り前倒しでつくるのですが、検討が進み、サブイシューに答えが出るたびに、また新しい気づきや洞察が得られるたびに、ストーリーラインは書き換え磨いていくものということで、問題を検討するすべての過程においてストーリーラインがとても重要という考え方です。
ストーリーラインの2つの型
- whyの並び立て
- 空・雨・傘
仮説ドリブン②:ストーリーを絵コンテにする
ここで言う絵コンテとは、イシューを分解して並べたストーリーラインに沿って、必要な分析のイメージを並べていったもの。
決まったフォーマットを使って進めると便利だそうです。
「どんな分析結果がほしいのか」を起点に、サブイシュー、分析イメージ、分析手法、情報源を、大胆に思い切って描いていきます。
step
1軸を整理する
絵コンテづくりの第一歩は、分析の枠組みづくり=軸を整理すること。
分析とは比較=比べること。
適切な「比較の軸」がカギであり、どのような軸で何と何を比べるのか、どのように条件の仕分けを行うのか、これを考えることが分析設計の本質だと安宅さんは書いています。
定量分析の3つの型
- 比較
- 構成
- 変化
原因と結果から軸を考えます。その際、原因側と結果側の双方でどのような比較が必要なのか、どれであれば最もきれいな結果が出るのかを、絵コンテを描きながら考える。これが軸の整理の本質。
軸は、比較に際しての条件をどんどん書き出して、関係のあるものや似ているものをまとめながら整理していくことで出していきます。
以前学んだことのある、グラウンデッド・セオリー・アプローチにおけるデータの分析手法と似ていると思ったのですが・・というか、むしろそのもののような?
重要な軸を見出し、本当に意味のある分析結果を生み出したいものです。
step
2イメージを具体化する
具体的な数字を入れて分析・検討結果のイメージを作っていきます。
定量的なものであればこれができますが、定性的な研究の場合どうするべきか?
step
3方法を明示する
どうやってデータを取るのか?その方法を明示します。
どんな分析手法を使ってどんな比較を実現するか、どんな情報源から情報を得るのか、ということを絵コンテの分析イメージの右側に描いていきます。
常に新しい手法を用いるのは大変なので、既存の手法を活用すること、使える手法の意味と限界について正しく理解しておく必要があります。
どのような分野であっても、プロを目指す修行のかなりの部分が、この既存の手法、技の習得に費やされるのだそうですが、イシューから始める意識を持っていると、様々な場面を想定した技の習得意識が大きく高まるとのこと。
マルチ・ポテンシャライトとしては、技の習得の速さに少々自信があるので、ここは少しスピードを上げていけるかもです。
アウトプットドリブン:実際の分析を進める
3の「仮説ドリブン②」で描いた絵コンテを、本物の分析にしていきます。
その前に、このステップで何を目指しているのかを再度確認します。
私たちが今やっているのは、限られた時間で、バリューのあるアウトプット(=社会福祉士養成課程で及第点がとれるレポート)を効率的に生み出すための作業です。
安宅氏によると、このステップは他のどのステップよりもスポーツ的で、正しい心構えとルールの理解が重要になります。
準備運動
いきなり分析や検証の活動を始めてはいけません。
サブイシューの中から、最もバリューのあるサブイシューを見極め、そのための分析を行います。粗くてもいいので、本当にそれが検証できるのかについての答えを先に出してしまいます。
これをやっておかないと、後から描いていたストーリーが根底から崩れた場合に、どうしようもなくなってしまいます。
これが終わったら、バリューが同じくらいであれば早く終わるものから手を付ける。
これがアウトプット段階の正しい方法。
答えありき、ではない
立てた仮説を正しいと証明するための証拠ばかり集めるのは、正しい姿勢ではありません。
アウトプット段階において、各サブイシューについて検証するときには、フェアな姿勢で検証します。
トラブルをさばく
トラブルは正しくさばく必要があります。
まずは予防策を講じておくこと。
重要なことにはできる限り、二重、三重の検証に向けた仕掛けを前倒しで仕込んでおきます。そのためのストーリーラインづくりであり、絵コンテづくりだったりするわけです。
総じて、できる限り前倒しで問題について考えておくことが大切で、所定時間で結果を出していくための重要な心構えとなります。
典型的なトラブル
- ほしい数字や照明が出ない
- 自分の知識や技では埒が明かない
解決策は、上記書籍でご覧ください。
軽快に答えを出す
質の高いアウトプットを出すことについての本質、それは「固執しないこと」。
持っている手札の数、自分の技となっている手法の豊かさが、バリューを生み出す人としての資質に直接的に関わります。
ソーシャルワーカーとしても、色々な角度から支援対象者をアセスメントできること、色々な問いかけができることは大切なこと。
自分の関連する分野における分析手法には一通りなじんでおいて、いくつもの方法を組み合わせたり、既存の手法に自分なりの視点を加えたりすることで、答えに近づいていきます。
回転数とスピードが大切
イシューやサブイシューは、答えを出すことで終わります。
その際、停滞せず、手早くまとめていくことが大切です。
限られた時間の中で生産性を上げるには、時間をかけて丁寧に丁寧にやるべきではなく、60%の完成度の状態で再度はじめから見直し健勝のサイクルを回すことで、より短時間で完成度を高める方が有効です。
受け手にとっての十分なレベルを自分の中で理解し、やり過ぎないように意識することが大切。
必要な姿勢は、
- 完成度よりも回転数
- エレガンスよりもスピード
です。
メッセージドリブン:伝えるものをまとめる
この段階は、レポートをまとめる、最後の仕上げのステップ。「本質的」「シンプル」を実現します。
そのためにはまず、どのような状態になったらこのプロジェクトは終わるのか、という具体的なイメージを描きます。
受け手には、以下のようになってもらう必要があります。
- 意味のある課題を扱っていることを理解してもらう
- 最終的なメッセージを理解してもらう
- メッセージに納得して、行動に移してもらう(レポートに及第点を付けてもらう)
ストーリーラインを磨きこむ
イシューに沿ったメッセージが伝わるか、という視点でストーリーラインの構造を磨きます。
step
1論理構造を確認する
- すっきりとした基本構造で整理できているか
- 前提が崩れていないか
など
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2流れを磨く
- 流れの悪いところはないか
- 締まりの悪いところはないか
- 補強が足りないところはないか
など
step
3エレベータテストに備える
- 結論を端的に説明できるか
- 特定の部分について速やかに説明できるか
など
チャートを磨きこむ
チャートの磨きこみにもいくつかポイントがあります。
が、社会福祉士養成通信課程のレポートで、チャートを使う機会があるかどうか。。
中にはもしかしたら、あるかもしれませんが、今は省きます。
おわりに
ここまで5千字を超える文字を使って、社会福祉士養成通信課程で提出するレポート作成をイシューから始めるための手順についてまとめてきました。
及第点のもらえるレポートを、できるだけ時間をかけず効率良く書いていくことは、働きながらの資格取得に際しては非常に重要です。
これまでの私のパターンだと、「とりあえず走りだしてから考える」でやってきたのですが、今回は本格的に走り出す前に、しっかり考えてみました。
受験予定の試験まで、あと1年10か月。
年も年だし、余裕をぶっこいている場合ではなく、自分のお尻を叩いてでも進まないと。
以下の記事と合わせて、今後レポートを作成する際の拠り所としたいと思います。
私と同じように、働きながら社会福祉士を目指す方の参考になったら幸いです。
本記事は大いに以下著作に拠っています。ぜひご覧ください。