こんにちは、ブジカエルです。
2023年2月に社会福祉士国家試験に合格したので、2023年3月に精神保健福祉士養成短期コースに申し込みました。
その学習についての記録です。
この記事では、精神保健福祉士養成課程通信科(短期)の、2つめのレポート課題の作成過程についてまとめます。
レポート作成の準備
テーマ分析
今回のレポート課題、テーマはこれ。
・レポートテーマ:「ライフサイクルと精神の健康についてまとめなさい。」(800字~1200字以内)
社会福祉士の養成課程で学ぶ際に考えた、合格するレポートの書き方を活用しつつ進めていこうと思います。
テーマだけ見て考えていると効率が悪いので、材料を集めながらテーマの分析を進めていきます。
材料を集める
中央法規の当該科目のテキスト(第3版)では、第2章 精神の健康とその要因の第2節(24~35ページ)にライフサイクルと精神の健康について書かれています。
この内容を800字~1200字程度にまとめながら、出題意図のカケラを拾い集めつつ、これまでになかった新たな気付きが得られると良いかなと。
尚、中央法規の『精神保健福祉に関する制度とサービス』(第6版)第1章第2節「ライフサイクルからみた精神保健福祉に関する制度とサービス」にも、ライフサイクルと精神保健福祉について比較的シンプルにまとめられています。
目次を作る
材料を集めながら作るつもりだったのですが、結局、書きながら構成を考えていました。
見出しはつけず、「はじめに」の部分は飛ばしました。
- ライフサイクルについて
- 発達課題について
- ハヴィガーストの発達段階について
- おわりに
集めた材料メモ
下記に主な内容を書き出しましたが、1000字前後のレポートに、各発達段階についてこんなに書ききれるわけがないので、かなり絞らないと。
さて、どう絞りますか・・
この見極めが、本質を見出す作業というわけで・・
基本的なこと、用語の定義等
精神の健康
- 人は誰でも人生の最初から最後まで、精神保健課題と直面する可能性がある。
第2章冒頭
- 現代社会におけるライフサイクルの意味と各ライフステージに関連した精神の健康の問題
- 精神保健学の展開に必要な基本的な視点を示すものであり、個々の課題を学ぶにあたり必要な理論を含む
- 精神保健学を支える基本的な理論
ライフサイクルについて
- エリクソンによって提唱されたライフサイクルの概念:人はその人生の中において各年代で生じる生物学的・心理的・社会的変化に適応させて人格の統合を行いつつ成熟していく。(24ページ)
- ライフサイクルにおける発達課題と、それに伴う現代の精神保健学上の課題からわかること:精神保健学上のほとんどの課題が、ライフサイクルおよび発達課題と関連をもちながら出現してくる(35ページ)
発達課題とは
- 精神保健学において重要な視点:ライフサイクルの各段階で課せられている発達課題を理解しておくこと(24ページ)
- 精神保健の基本は、健全な面を伸ばし、危機的となる面を小さくすること(25ページ)
- ハヴィガースト「人間が健全で幸福な発達課題をとげるために各発達段階で達成しておかなければならない課題」で、次の発達段階にスムーズに移行するために必要な課題(24ページ)
- エリクソン:各段階の発達課題に対し、健全で適応的な解決概念と、危機(crisis)となる非適応的な概念とを対峙して示している(24-25ページ)
- ハヴィガースト・エリクソンの発達課題理論は、主に20世紀の西欧文化が前提
社会が急速に変化する現在の日本でにおいてはそのままでは用いにくいが、理論の骨格は今なお有用
各発達段階の発達課題と精神保健の課題
出生前・胎児期
母親の感情や母体内の自律神経系の神経伝達物質が胎児に影響を与えることが実証されつつあり、妊婦の精神保健やそれに関連した環境の問題は重要な課題となる。例えば、10代の妊娠や晩婚、核家族化など。
乳幼児期(誕生後~小学校に入学する頃まで)
- 誕生直後:極めて無力・非力な状態で生まれるヒトはその誕生後、母親の庇護のもと「人を信じることと自分を信じること」(エリクソン理論における「基本的信頼感」)を獲得する。
この時期の精神保健:母親の精神的問題(マタニティブルー、産後うつ病、産褥期精神病) - 満1歳前後:歩く・喋る・離乳・排泄の統制といったことを通して社会の時間と場所という枠に組み込まれることで社会的な自律性を獲得する。
この時期以後の精神保健の課題:母性の欠如、乳幼児虐待、子どもの発達障害。少子化・核家族化・小家族化、地域コミュニティの希薄化、子育て不安、子ども同士の交流の減少、過剰な英才教育。 - 3~4歳:仲間との遊びを通して何がどこまで許容されるのかを発見する。
- 6歳までに:読む能力の発達。
学童期(6~12歳、小学校年代)
- 発達課題との関連で精神障害が顕在化しやすい
低学年
- 同年代の者とうまくやっていくことを学ぶ時期
多動性障害(注意欠如・多動症、注意欠如・多動性障害)、広汎性発達障害(自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害)の子どもは、同年代の者との良好な交流や社会の価値尺度の習得がしばしば困難で、これらが原因でいじめの対象となることもある。 - 学習との関連:学習障害(限局性学習症/限局性学習障害)や(軽度)精神遅滞(知的能力障害)—学業が苦痛で、身体症状や精神症状を呈する危険性がある
高学年
- 親や教師が全能ではないことを知り自立の道を歩み始める後半
- 気分障害や統合失調症の発症年代に入り始めるが、成人のような典型像は示しにくく、言語化能力の問題もあり、しばしば見過ごされたり誤った対応がなされる
全学年
- 不登校、いじめ、自殺
- 後に続く発達課題の遂行の支障にもなりえる
- 後の発達課題遂行のために:友人関係を十分に育む必要がある(対等な人間関係を営みながら多様なことを教えられたり教えたりする関係)
- 小家族化・核家族化、過剰な受験勉強・塾、コンピュータゲームへの没頭などは、この時期の発達課題を頓挫させかねない
- 現代では幅広い視点から、精神保健的介入が必要
思春期(概ね12~18歳、中学校・高校の年代)
- 特徴:身体の急激な変化、自我の意識
- 発達課題:主に同性の友人と新しい成熟した関係を結ぶ、異性成熟した関係を結ぶ、自分の体格を受け入れる、親や大人たちから情緒面の自立を果たす
- 精神保健:
・性衝動や身体活動のコントロール困難:非行、学校内暴力、10代の妊娠
・少年犯罪、薬物依存
・不登校、いじめ、自殺
・摂食障害、過換気症候群(過呼吸症候群)、自傷行為
・気分障害(主に双極性障害)、統合失調症
・月経周期と関連した精神障害
青年期・早期(初期)成人期(18歳~30歳頃)
- 特徴:アイデンティティの確立が求められる一方、社会的責任は猶予されている(モラトリアム)
- 発達課題:職業の選択、結婚へ向けての準備、行動の指針としての価値観や倫理体系を身に付けることなど。アイデンティティの確立。
- 精神保健:
・アイデンティティの拡散
・性同一性障害
・統合失調症
・社会的ひきこもり
・ニート
壮年期・中年期(30歳頃~65歳頃)
- 壮年期(44歳まで)の発達課題:
・結婚生活の課題(夫婦生活の形成、出産、育児。親と言う役割を果たし子の発達課題成就を支える)
・職業生活の課題(後輩を育て部下を管理し、組織の一員として貢献する。上司の要求と部下の不満に応える) - 中年期(45歳以降65歳頃まで)の発達課題:
・身体機能の衰えを自覚、受容しながら社会の第一線に立つ。身体的・精神的・社会的能力の限界を自覚し、受け入れていく。
・喪失の克服(親の死、子どもの自立、自己の存在意義) - 壮年期・中年期の精神保健
仕事上や家庭でのストレス(業務上の困難、出世競争面の挫折、転職、子どもの教育、親の介護)
・うつ病
・飲酒・アルコール依存、ギャンブル・ギャンブル依存
・DV、虐待
・空の巣症候群
老年期(65歳頃~)
- 老年期(65歳頃~)の発達課題:老い(老化)の受容と死の受容
・身体面:視力、張力、性機能、身体機能全般の衰え
・精神面:記憶力、認知機能、意欲の低下、感情面の障害、性格変化
・社会面:退職による地位/役割・経済基盤・家庭での役割の喪失 - 老年期の精神保健
・精神的老化:認知症
・社会的老化からの孤独感、不安、抑うつ、自殺、アルコール依存
・身体の老化・身体疾患による病苦からの抑うつ、自殺
5/21、一応できたので、しばらく温めておきます。
合格レポート
提出して、合格となったレポートを掲載します。
ご参考になれば幸いです。
丸写しはダメですよ。
「ライフサイクル」はエリクソン, E.H.により提唱された概念で、人はその人生において各年代で生じる生物学的・心理的・社会的変化に適応させて人格の統合を行いつつ成熟していく、というものである。ライフサイクルの各段階で課せられる発達課題は精神の健康と深く関連しており、精神保健学上の多くの課題がライフサイクルおよび発達課題と関連を持ちながら出現してくる。そのため、精神保健においてはライフサイクルと各段階で課せられている発達課題を理解しておくことが重要となる。
発達課題とは、「人間が健全で幸福な発達課題をとげるために各発達段階で達成しておかなければならない課題」(ハヴィガースト, R. J.)で、次の発達段階にスムーズに移行するために必要な課題である。エリクソンは、各段階の発達課題に対し、健全で適応的な解決概念と、危機(crisis)となる非適応的な概念とを対峙して示した。その代表例が、青春期における「同一性」(アイデンティティの確立)と「同一性拡散」(アイデンティティの拡散)である。
ハヴィガーストの発達課題論をもとに、年代ごとの精神保健の問題例を次に述べる。
・出生前・胎児期
妊婦の精神保健、それに関連した環境の問題(10代の妊娠、晩婚、核家族化)
・乳幼児期(~6歳ごろ)
母親の精神的問題(マタニティブルー、産後うつ病、産褥期精神病、子育て不安)、母性の欠如、乳幼児虐待、子どもの発達障害。
・児童期(6~12歳ごろ)
発達障害や軽度精神遅滞、学業や友人関係の困難、これらによる身体症状や精神症状。
・青年期(12~18歳ごろ)
非行・少年犯罪、学校内暴力、10代の妊娠、薬物依存、不登校、いじめ、自殺、摂食障害、自傷行為、気分障害(主に双極性障害)、統合失調症、月経周期と関連した精神障害。
・壮年期(18~30歳ごろ)
アイデンティティの拡散、性同一性障害、統合失調症、社会的ひきこもり、ニート。
・中年期(30~60歳ごろ)
うつ病、飲酒問題・アルコール依存、ギャンブル・ギャンブル依存、DV、虐待、空の巣症候群。
・老年期(60歳ごろ~)
認知症、性格変化、孤独感、不安、抑うつ、自殺、アルコール依存。
ハヴィガーストとエリクソンの発達課題理論は、主に20世紀の西欧文化が前提となっている。そのため文化の異なる、しかも社会が急速に変化する現在の日本においてはそのままでは用いにくいが、理論の骨格は今なお有用である。年代ごとの精神保健の課題や精神保健学的な問題について理解しておくことは、直接的な相談援助においてだけでなく、環境上の課題発見や解決策の提案にもつながると思われる。環境も生活者自身も変化していく中で、心身の健康をいかに維持増進していくか、精神保健福祉士として社会資源と人々をつなぐ役割を果たす上で欠かせない視点である。
講師講評
精神保健福祉士は精神保健福祉士法によって、精神障害者の社会復帰を促進する専門職と定められている。そしてここでいう精神障害者とは精神科医療機関を受診し、精神科診療を受けている者もしくは精神障害者の社会復帰施設に通所し社会復帰の過程にあるものとみなすことができる。精神障害を抱えて生きている人と言い換えることができるであろう。ではこの精神障害とはどのようなもので精神障害、精神疾患はどのように生まれてくるのであろうか。これは内因性と外因性、といった精神疾患との原因誘因とも関係してくるが、ここに好発年齢という概念も関係してくる。例えば統合失調症の破瓜型は10代後半が好発年齢である。68代後半と言えば思春期であって第二次性徴期でもあり、精神的にバランスを崩しやすい年頃であることは周知のとおりである。一方、認知症は若年性という高齢ではない世代から発症する場合があることが知られているが専ら高齢者、高齢期に発症する。単に精神疾患の病名や症状、治療法を知るだけではなく、年齢ごとに発生してくる発病背景、その人なりの生活を知ることが精神保健福祉士には求められる。それが再発を防ぎ、精神症状と上手に付き合いながら社会生活を送るという安定した社会復帰につながると考えられるからである。
精神保健福祉士は診療ができないことも周知のとおりである。つまり、問題行動をし、その行動が精神疾患由来の症状であると知りえていたとしても、その相手に精神疾患の診断を下さず、その人の生活の破綻具合を見極めて医療につなぐ、あるいはそのまま行動、症状の鎮静化を見極めていくといった対応が求められる。鎮静化・寛解の指標として年代相応の精神の健康状態を参考にする必要がある。
エリクソンが提唱したライフサイクル、発達課題(幼児期、学童期、思春期、青春期、成人期、壮年期・中年期、老年期)、自我、アイデンティティの確立、モラトリアムの概念、職業の選択、結婚、夫婦生活、出産育児、老化、退職~地位や役割の喪失、精神保健学上のほとんどの問題がライフサイクルおよび発達課題と関連を持ちながら出現してくる、このような内容が本レポートに記述されていることが望ましいと思われる。