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問題58|第20回 精神保健福祉士 国家試験 ④精神保健福祉の理論と相談援助の展開

勉強するウサギのイラスト

こんにちは、ブジカエルです。

2023年2月、社会福祉士の試験に合格したと思われるので、精神保健福祉士国家試験に向けての学びを始めました。

この記事では、過去問題をしゃぶり尽くします。

↓過去問題はここ↓
社会福祉振興・試験センター>精神保健福祉士国家試験>過去の試験問題

事例問題4

次の事例を読んで、問題に答えなさい。

〔 事例 〕
Aさん( 40歳、女性 )は、18歳で統合失調症を発症し、入院経験がある。受診は継続し、時々対人緊張が強くなったり幻聴体験はあるが、自分で対応できている。夫が代表の農業法人に勤め、子ども( 7歳 )がいる。
Bさん( 45歳、女性、精神保健福祉士 )は、以前、Aさんの受診先の精神科病院に勤務し、初診時からの担当であった。5年前に退職し精神保健福祉士事務所を開業、スクールソーシャルワーカーとしても勤務している。
Bさんの退職後、AさんとBさんは、それぞれの子育ての悩みを話し合ったことをきっかけに、時々会って話をする関係を続けていた。その後、地域で子育てサークルを始め、今ではメンバーが増え、子どもたち向けの活動も行うようになり、Aさんは会長、Bさんは事務局長として会を運営している。
ある日、勤務している学校で、精神障害のある母親( Cさん )と行動障害があるその子どもへの支援を検討する中で、この子育てサークルの活用が提案された。それを受けてBさんはCさんに、「親子の情報を事前に会のメンバーに知らせ、理解しておいてもらった方がよい」と提案したが、Cさんは、「参加したいが病気や障害のことは知られたくない」と訴えたため、Bさんは、倫理的ジレンマを感じながらもサークルでの支援を進めた。(問題58)
初回参加時のその子の落ち着かない言動とCさんの子どもへの対応に、会のメンバーからは、「一緒にやっていくのは無理」という声が多く上がった。Bさんは、Cさん親子と会のメンバー両者の利益を視野に入れながら話合いを重ねた。Aさんの体験談もメンバーに大きな影響を与え、最終的にメンバー全員の了承が得られた。(問題59)
これを契機に、メンバーの福祉課題への関心が高まり、新しい活動を展開するためにNPO法人の設立を模索することになった。ある日の打合わせ後に、Aさんは、「20歳の頃は人生を諦めていた。病気の経験が人の役に立つなんて思っていなかった。病気のことは心配だし、どこかに引け目はあるけれど、家族、友人、仕事があるし、新しい活動が楽しみ」と語った。(問題60)

目次

問題58 次のうち、この時のBさん( 精神保健福祉士 )が感じた倫理的ジレンマの内容として、適切なものを1つ選びなさい。

  1. 記録の開示とクライエントの利益に対する責任
  2. 自己決定の尊重とクライエント保護の責任
  3. 守秘義務と制度や法律に対する責任
  4. クライエントに対する責任と所属組織に対する責任
  5. 同僚に対する責任と専門性への責任

設問について

精神保健福祉士の倫理についての理解が問われる問題。
専門職の倫理と倫理的ジレンマについては、中央法規「相談援助の基盤」テキスト(第2版)237~。

精神保健福祉士であるBさんが事務局長を務める子育てサークルにおける支援で、クライエントであるCさんに、Bさんは「親子の情報を事前に会のメンバーに知らせ、理解しておいてもらった方がよい」と提案したが、Cさんは、「参加したいが病気や障害のことは知られたくない」と訴えた。

その後Bさんは、Cさんの意思を尊重して親子の病気や障害についての情報を伏せたまま子育てサークルで支援を行う。その中でBさんが感じる倫理的ジレンマとは何かといえば、Cさんの意思、自己決定を尊重しなければならないけれども、その自己決定は実はCさんのためになっていないのではないか、Cさんに対して本当にするべき支援を行えないのではないか、といったジレンマであると思われ、それに該当するものを選ぶと。

「精神保健福祉士の倫理綱領」(日本精神保健福祉士協会)

各選択肢について

選択肢1:記録の開示とクライエントの利益に対する責任

×

当該事例のこの時点で、記録についての言及はない。

なお、倫理綱領中記録に関することは「(3)プライバシーと秘密保持」のdおよびf(d クライエントを他機関に紹介する時には、個人情報や記録の提供についてクライエントとの協議を経て決める。、f クライエントから要求がある時は、クライエントの個人情報を開示する。ただし、記録の中にある第三者の秘密を保護しなければならない。)。

選択肢2:自己決定の尊重とクライエント保護の責任

倫理綱領には自己決定について下記の記載がある。

(2)自己決定の尊重
 精神保健福祉士は、クライエントの自己決定を尊重し、その自己実現に向けて援助する。

倫理綱領>倫理原則>クライエントに対する責務

(2)自己決定の尊重
a クライエントの知る権利を尊重し、クライエントが必要とする支援、信頼のおける情報を適切な方法で説明し、クライエントが決定できるよう援助する。

b 業務遂行に関して、サービスを利用する権利および利益、不利益について説明し、疑問に十分応えた後、援助を行う。援助の開始にあたっては、所属する機関や精神保健福祉士の業務について契約関係を明確にする。

c クライエントが決定することが困難な場合、クライエントの利益を守るため最大限の努力をする。

倫理綱領>倫理基準>クライエントに対する責務

クライエントの自己決定がクライエントの不利益につながるものである場合、クライエント保護の責任として、クライエントの判断能力・精神状態・外圧といった要素の影響がないか確認するなどの必要がある。

選択肢3:守秘義務と制度や法律に対する責任

×

当該事例のこの時点では、Cさんのプライバシーと法律・制度に関する問題は出てきていない。

倫理綱領に、秘密保持についての記載は結構ある。

(3)プライバシーと秘密保持
 精神保健福祉士は、クライエントのプライバシーを尊重し、その秘密を保持する。

倫理綱領>倫理原則>クライエントに対する責務

(3)プライバシーと秘密保持
精神保健福祉士は、クライエントのプライバシーの権利を擁護し、業務上知り得た個人情報について秘密を保持する。なお、業務を辞めたあとでも、秘密を保持する義務は継続する。
a 第三者から情報の開示の要求がある場合、クライエントの同意を得た上で開示する。クライエントに不利益を及ぼす可能性がある時には、クライエントの秘密保持を優先する。
b 秘密を保持することにより、クライエントまたは第三者の生命、財産に緊急の被害が予測される場合は、クライエントとの協議を含め慎重に対処する。
c 複数の機関による支援やケースカンファレンス等を行う場合には、本人の了承を得て行い、個人情報の提供は必要最小限にとどめる。また、その秘密保持に関しては、細心の注意を払う。
クライエントに関係する人々の個人情報に関しても同様の配慮を行う。
d クライエントを他機関に紹介する時には、個人情報や記録の提供についてクライエントとの協議を経て決める。
e 研究等の目的で事例検討を行うときには、本人の了承を得るとともに、個人を特定できないように留意する。
f クライエントから要求がある時は、クライエントの個人情報を開示する。ただし、記録の中にある第三者の秘密を保護しなければならない。
g 電子機器等によりクライエントの情報を伝達する場合、その情報の秘密性を保証できるよう最善の方策を用い、慎重に行う。

倫理綱領>倫理基準>クライエントに対する責務

選択肢4:クライエントに対する責任と所属組織に対する責任

×

当該事例のこの時点では、Cさんに対する責任と、子育てサークルに対する責任との間で、どちらの利益を優先しなければならないかという板挟みになっているとは言えない。

選択肢5:同僚に対する責任と専門性への責任

×

当該事例のこの時点で、Bさんが他の精神保健福祉士に対する責任と、精神保健福祉士としての専門性に基づく価値や理念・実践の間で、迷い困るような事態であることは読み取れない。

正答

2(自己決定の尊重とクライエント保護の責任)

第20回 精神保健福祉士 国家試験 全問題はこちら

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この記事を書いた人

このブログを運営しているブジカエル、カエル好きですがカエルにはあまり詳しくありません。精神障害者の地域生活を支援する精神保健福祉士、社会福祉士、国家資格キャリアコンサルタント。旅好き、学び好き、放送大学12年目のマルチポテンシャライト。科学的な幸福の研究に興味津々なポジティブ心理学実践インストラクター。健康管理好き、2013年に健康管理士、食生活アドバイザー3級&2級を取得。
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