この記事では、社会福祉士養成課程(通信)の14番目のレポート(科目は「福祉サービスの組織と経営」)に関することをまとめました。
A評価を得たレポートの実例つきです。
お忙しいでしょうから、ぜひ必要な個所に絞って見てくださいね。
以下の記事にまとめた手順に沿ってレポートを作成する準備を進めました。
レポートは2択
レポートの課題は、以下の2つから選べました。
(a) 社会福祉法人制度の特徴と求められる役割について述べなさい。
(b) 福祉サービスの質を向上するためのあり方について論じなさい。
(b)についても考えてみたかったのですが、私の職場がもうすぐ社会福祉法人化することもあり、また国家試験の領域としては苦手な分野なのでその対策が少しはできるかもなどと考えて、(a)にしました。
レポート作成の手順
毎度恒例、「社会福祉士養成通信課程で提出するレポートとその作成方法について【土台=基礎編】」の「レポート作成の手順」に沿って作業を行っていきます。
テーマ分析
「社会福祉法人制度の特徴と求められる役割について述べる」というテーマは、どのような内容を期待して設定されたのかを考えます。
また、社会福祉士養成通信課程におけるレポートは、
- 学習を進めているよ!ということを学校に知らせる
- こんなふうに理解しているよ!ということを先生に知らせる
ということも目的としていると考えられるため(参考:社会福祉士養成通信課程で提出するレポートの意味)テキストの内容を踏まえつつ、少し発展させたレベル内容も盛り込めるとベターかと思います。
今回のレポートは、
- 社会福祉法人制度の特徴
- 社会福祉法人制度に求められる役割
- 社会福祉法人とその制度についての考察、自分の考え
以上3点が端的にしっかり書けていれば(=本質的なところが押さえてあれば)、及第点はもらえるでしょう。
材料を集める
レポートを書くにあたって必要な材料を集めます。
学校指定のテキストの中や、テキストに出てきた資料から主に材料を探します。
まずは、語句の意味・定義を明確にします。(次項にまとめておきます。)
材料を集める
参考資料、出典として使えそうなもの
レポートでは、学校指定のテキストをしっかり押さえておくことのは大前提。
学校指定のテキスト『福祉サービスの組織と経営』から使えそうな部分をピックアップします。
もちろん、制度を管轄する厚生労働省のウェブサイトや関連法律は必見です。
色々見ましたが、下記ページが非常に簡潔にまとめられていてわかりやすく、レポート作成の際にとても役立つと思いました。
特別な公益法人である社会福祉法人
私の手元のテキストで32ページに下記の記載がありました。
現在、特別養護老人ホームや児童養護施設などの第一種社会福祉事業を行うためには、社会福祉法人を取得することが義務づけられている。それは、入所施設という特徴から、経営のあり方そのものが利用者に与える影響が大きいことや利用者の保護の必要性が高い事業であるためである。そして取得後には、法人税や固定資産税、寄付等について税制上の優遇措置が受けられ、また公益法人ではあるが、社会福祉法の適用を受ける。2016(平成28)年の社会福祉法改正は、社会福祉法人制度改革と呼ばれ、福祉サービスに株式会社などの多様な経営主体が参入するなかにおいて、①公益性・非営利性の確保、②国民に対する説明責任、③地域社会への貢献を行う社会福祉法人のあり方を徹底することが求められている。
社会福祉法人制度について
私の手元のテキストで34ページ等から、特徴と言えそうなものを箇条書きでピックアップしていきます。
- 1951(昭和26)年、社会福祉事業法により制度創設、その後あまり変わらなかった。
社会福祉事業法は社会福祉基礎構造改革の検討を経て、2000年5月、社会福祉法に改正。 - 2016(平成28)年3月に「社会福祉法等の一部を改正する法律」により、時代状況により適合する改革が目指された。
制度の背景
- 社会福祉事業に対する社会的信用や事業の健全性を維持する上で、公益法人に代わる新たな法人制度を確立する必要があった。
- 強い公的規制の下、助成を受けられる特別な法人の創設を可能とする制度。=憲法第89条の「公の支配」に属しない民間社会福祉事業に対する公金支出禁止規定を回避することが可能になる。
社会福祉法人が行う事業
- 社会福祉法人は、社会福祉事業(第一種社会福祉事業及び第二種社会福祉事業)を行うことを目的とする(社会福祉法第22条)。
- 上記の他、公益事業及び収益事業を行うことができる(社会福祉法第26条)。
- 公益事業とは、
社会福祉と関係のある公益を目的とする事業で、
社会福祉事業の円滑な遂行を妨げるおそれがないもの。
公益事業の剰余金は社会福祉事業又は公益事業に充てなければならないと定められている。
例えば、介護老人保健施設(無料低額老人保健施設利用事業を除く。)の経営や、有料老人ホームの経営など。 - 収益事業とは、
その収益を社会福祉事業又は一定の公益事業に充てることを目的とする事業で、
社会福祉事業の円滑な遂行を妨げるおそれがあってはないもの。
事業の種類に特別の制限はないものの、法人の社会的信用を傷つけるおそれがあるものや、投機的なものは適当ではないとされている。例えば、貸ビルや駐車場、公共的な施設内の売店の経営、など。
社会福祉法人設立の要件について
社会福祉法人が、安定的で適正な運営ができるように、設立の際に、役員や資産等について一定の要件を定めている。
- 役員
- 資産
- 所轄庁
社会福祉法人の規制・監督と支援・助成について
社会福祉法人については、規制・監督と支援・助成を一体的に行い、安定的な事業の実施を確保するための仕組みが制度化されている。
社会福祉法人制度の役割について
社会福祉法人制度にはどのような役割があるのか。
当該制度の最近の改革について理解すると見えてくると思います。
- 厚生労働省:社会福祉法人制度改革について
- 古都賢一「社会福祉法人制度改革について」
日本福祉大学社会福祉学部『日本福祉大学社会福祉論集』第134号2016年3月
A評価のレポート例
ご参考になれば幸いです。
完全コピペはダメですよ。
点数 80点
総合評価 A
項目別評価
・課題の理解度 A
・論旨と構成 A
・自己の見解 A
1. 社会福祉法人制度の特徴
a. 制度創設の背景と法人の位置づけ
社会福祉法人制度は1951年施行の社会福祉事業法により創設された。それ以前に社会福祉事業の主体であった公益法人の中には不適切な運営をしている法人も相当あったため、社会福祉事業に対する社会的信用や事業の健全性を維持する上で公益法人に代わる新たな法人制度を確立する必要があった。そのため当該制度は社会福祉法人を、強い公的規制の下で助成を受けられる特別な法人として位置付けている。
b. 事業
福祉サービス利用者の権利擁護のためには高い公益性と安定性の担保が不可欠であるため、社会福祉事業には規制がある。特に第一種社会福祉事業は、利用者が安定的・継続性のある生活をもとに福祉サービスを受けることが最重要であり、例えば重度の要介護や低所得の高齢者が入所する特別養護老人ホームの設置主体は原則として社会福祉法人と地方公共団体に限定されている。
社会福祉法人は社会福祉事業のほか公益事業及び収益事業を行うことができるが、その事業収益は全て社会福祉事業に再投資するなど、使途は制限されている。
c. 規制・監督と支援・助成
社会福祉法人は特別な公益法人として、規制・監督と支援・助成を一体的に行い、安定的な事業の実施を確保するための仕組みが制度化されている。例えば、設立・解散ともに行政庁の認可が必要であり、解散時には残余財産を国庫またはその他の社会福祉法人に帰属させることにより事業の継続性を確保する規制がある。
2. 社会福祉法人制度に求められる役割
当該制度は、日本における社会福祉事業の主たる担い手である社会福祉法人が、その使命や役割に相応しい事業を確実かつ適性に実施できるように定められている。2016年公布の「社会福祉法等の一部を改正する法律」によって、時代状況により適合する制度改革が目指され、本改革では特に①公益性・非営利性の確保、②国民に対する説明責任、③地域社会に貢献する法人としてのあり方の3点を重視しており、経営組織のガバナンス強化・事業運営の透明性向上・財務規律の強化・地域における公益的取組みの実施主体としての責務・行政の関与のあり方の5つが柱とされた。
今後も変化していくであろう社会の中で、社会福祉法人が公益性の高い社会福祉事業を確実、効果的かつ公正に行いその使命を果たし続けられるよう、時代の要請に応えて変化しながら仕組みの面から支えていくことが当該制度に求められている。
3. 考察
社会福祉法人制度は、社会福祉法人を設立・運営して行くために定められた決まりである。しかし、各法人が真にその役割を果たすには、それぞれの理念を実現させるための不断の努力が必要となる。所属する職員各々がその理念のもとに行動する必要があり、制度を守っていればそれでよいということはない。何のためにその決まりがあるのか、制度の趣旨を理解した上で経営に当たる必要もあるだろう。制度は最低限のルールとの認識のもと、法人の使命や理念が職員に浸透するような取り組みの実践が求められていると言えよう。
解題で復習
出題意図
(b):福祉サービスの質の向上のあり方についての考え方や具体的な取組方法(システム)について考えること。
(a)に関しては、社会福祉法人には、社会福祉事業の確実・安定的な経営を行うことはもとより、地域共生社会の実現に向けて、従来の制度の枠内だけでは十分に対処できない福祉課題などに積極的に取組むことが求められている、というところを考えさせたかったようです。
また当該科目を学ぶ意義として、以下のことが挙げられていました。
- 組織やチームで福祉サービスを提供する際に、使命や目的を明確にし、それらを活性化・コントロールし、内外で起こる環境変化に適切に対応し、関係する人材や財源等を有効に、効率的・計画的に活用していくマネジメント手法を知ること。
- 社会福祉士が利用者と地域をつなぐために求められる、ミクロ・メゾ・マクロの分野での実践のための知識を得ること。
国家試験に向けての対策
- 医療の発展、少子高齢化の急速な進展により、福祉・介護ニーズは多様化・高度化し、社会保障費の増大、社会福祉関係従事者の確保の問題など、福祉サービス提供組織を取り巻く厳しい状況のもと、改めて準市場で提供される福祉サービスや福祉経営のあり方、サービスの質の向上への取組、またそのためのリーダーシップのあり方を考えていくこと。
- 過去の国家試験問題からも、人材育成、また組織・経営・リーダーシップなどに関する問題が出題されている。今回のレポート内容を整理して、学習すること。