この記事は、社会福祉士養成課程(通信)の4番目のレポート(科目は「相談援助演習」)に関することをまとめたものです。
お忙しいでしょうから、ぜひ必要な個所に絞って見てくださいね。
以下の記事にまとめた手順に沿ってレポートを作成する準備を進めました。
レポートは2択
レポートの課題は、以下の2つから選べました。
(a) ソーシャルワーカーに求められる仕事は何か。
自身の周辺を眺めて見えてくる生活問題をひとつ取り上げ、考察し発見した社会福祉士に求められる相談援助を論述しなさい。
(b) ノーマライゼーションとは何か。
北欧社会の政策や他の参考文献等で調べあなた自身が理解したことを論述しなさい。
最初は、(a)の方が書きやすそうだと思ったのですが、結局(b)にしました(なんだか毎回このパターンのような・・)。自分の周辺を眺めても勤務先の利用者さんに関する生活問題ばかりが見えてきて、社会福祉士に求められる仕事よりも、支援員が現場で求められる仕事について書いてしまいそうだったので。
レポート作成の手順
毎度恒例、「社会福祉士養成通信課程で提出するレポートとその作成方法について【土台=基礎編】」の「レポート作成の手順」に沿って作業を行っていきます。
テーマ分析
「ノーマライゼーションとは何か。北欧社会の政策や他の参考文献等で調べあなた自身が理解したことを論述しなさい。」というテーマは、どのような内容を期待して設定されたのかを考えます。
また、社会福祉士養成通信課程におけるレポートは、
- 学習を進めているよ!ということを学校に知らせる
- こんなふうに理解しているよ!ということを先生に知らせる
ということも目的としていると考えられるため(参考:社会福祉士養成通信課程で提出するレポートの意味)テキストの内容を踏まえつつ、少し発展させたレベル内容も盛り込めるとベターかと思います。
具体的には、以下の要件をクリアするレポートにしようと思います。
- ニィリエが提唱したノーマライゼーションについて、基本的なことを理解していることを示す
- 北欧におけるノーマライゼーション
- 日本におけるノーマライゼーション
- ノーマライゼーションに関して社会福祉士が果たせる役割、つとめるべき役割
- テキストを踏まえる
- テキスト以上のことも盛り込む
- 自分なりの見方や意見を内容に含める
後日配布された解題では、出題の意図として次のことが書かれていました。
- 社会福祉の基本である「誰もが安心できる生活環境」を考える時に、物理的環境はもちろん、人生全体を見通したより良い生活のための「8つの原理」を組み込んだ生活保障を意識する。
- 社会変革のために北欧ではどのような方法を取り入れてきたのかを知る。
- 「あなた自身が理解した」の所が注意点、誰か他の人の見解では不足である。
- 日本と北欧の比較検証から多角的に学ぶ、是非ではない、自国の検証もし、今後の社会政策への創造
に思いを馳せる、新たな社会をイメージする力を育てる。
材料を集める
レポートを書くにあたって必要な材料を集めます。
学校指定のテキストの中や、テキストに出てきた資料から主に材料を探します。今回は、図書館で3冊借りました。
まずは、語句の意味・定義を明確にします。(次項にまとめておきます。)
例えば、
- ノーマライゼーションとは
など。
これらを踏まえて、ノーマライゼーションについて理解を深めてレポートに書けるようにします。
材料を集める:語句の意味・定義を把握
ノーマライゼーションとは
ハンディキャップのある人等がその人格を尊重され、地域の人々と同じ権利を享受し、地域社会で皆と一緒に主体的な生活ができ、社会参加が保障されるのがノーマルな社会であるとする考え方。
出典:『現代社会と福祉』第5版 2019年 弘文堂
ノーマライゼーションの提唱者の1人ニィリエ(スウェーデン)は以下のように述べる。
「ノーマライゼーションの原理とは、生活環境や彼らの地域生活が可能な限り通常もの(原文ママ)と近いか、あるいは、全く同じになるように、生活様式や日常生活の状態を、全ての知的障害や他の障害をもっている人々に適した形で、正しく適応することを意味する。」
ノーマライゼーションは、1950年代初め以降、ニィリエの他に、バンク-ミケルセン(デンマーク)、ヴォルフェンスベルガー(アメリカ)などによって、障害者福祉の分野で提唱された。大規模な専門施設に閉じ込めるのではなく、これまでの生まれ育った環境のなかで、知的障害者が生活することが求められたのである。
ノーマライゼーションの普及に関して、国際的な動きも見逃せない。ノーマライゼーションは、1971年の国連による「知的障碍者の権利宣言」にも採用され、「国際障害者年」(1981年)、「国連障害者の十年」(1983~1992年)、「国連障害者権利条約」(2006年)などによって、世界に浸透した。
ノーマライゼーションは、マイノリティ(黒人、被差別少数民族など)の共生の原理として、障害分野を超えて大きな影響を与えている。さらに、ノーマライゼーションの考え方はバリアフリー化、ユニバーサル・デザインにも広がっている。
出典:『現代社会と福祉』第5版 2019年 弘文堂
高齢や障害があっても差別されず、地域において普通の生活を営むことが当たり前であるという社会をつくる基本理念をいう。1950年代にデンマークにおいて障害児をもつ親の会から草の根運動に広がり、バンク-ミケルセン(Bank-Mikkelsen, N. E.)を中心に展開された。その後スウェーデンのニィリエ(Nirje, B.)や北米のヴォルフェンスベルガー(Wolfensberger, W.)らによって広められた。わが国では1981年の国際障害者年を皮切りに、ノーマライゼーションが展開されている。
出典:『現代社会と福祉』第5版 2019年 弘文堂
[1]ノーマライゼーションの理念
ノーマライゼーション(normalization)は、1940年代、第2次世界大戦中に、スウェーデンで使われ始めた。その後、1950年代、デンマークにおいて、バンク-ミケルセンにより、1959年の障害者福祉法に結実した。同時期、スウェーデンにおいても、ニィリエが、影響を受けて、実践的にも理論的にも深め、1980年の社会サービス法として実現されていった。北欧に留学して、ニィリエに影響を受けたヴォルフェンスバーガーは、北米において、この理念を適応させ、プラグマティックに再定義していった。現在では、北欧の流れと北米の流れが混在しつつ、全世界に広がっている。このために、本来の思想の核心が薄まり、安易に使われる傾向がある。障害者福祉のみならず、他の領域においても強い影響を与えている。
(1) バンク-ミケルセンのノーマライゼーション思想
バンク‐ミケルセンは、第2次世界大戦後、社会省担当官となり、隔離的保護的で劣悪な環境の巨大施設に収容されている知的障害児者の処遇の実態に心を痛めた。1951年に発足した知的障害者の親の会の活動に共鳴し、そのスローガンが法律として実現するように尽力した。1959年法は、ノーマライゼーションという言葉が世界で初めて用いられた法律となった。
バンク-ミケルセンによるノーマライゼーションの定義は、「障害のある人たちに、障害のない人たちと同じ生活条件をつくりだすこと。障害がある人を障害のない人と同じノーマルにすることではなく、人々が普通に生活している条件が障害者に対しノーマルであるようにすること。自分が障害者になったときにして欲しいことをすること」なのである。社会運動家であり、実務家であったため、体系化された思想や厳密な定義は行っていない。
(2) ニィリエのノーマライゼーション思想
ニィリエは、スウェーデン知的障害児者連盟(FUB)の事務局長のとき、デンマークの1959年法前文にある「知的障害者ができるだけノーマルな生活を送れるようにする」という言葉に出会い、施設の状態を批判する文書で引用した。ノーマライゼーションを8つの原理に整理するとともに、「知的障害者にとってとりまく地域社会の態度や環境や活動などの条件全体が満足できる程度に正常化すること」と1970年に定義をした。
その後、定義を発展させつつ、1993年には「ノーマライゼーションの原理は、知的障害やその他の障害をもつ全ての人が、彼らがいる地域社会や文化の中でごく普通の生活環境や生活方法を得られるように、権利を行使すること」と定義をしている。
図1-2-2 ニィリエのノーマライゼーションの8つの原理
①1日のノーマルなリズム
②1週間のノーマルなリズム
③1年間のノーマルなリズム
④ライフサイクルにおけるノーマルな発達的経験
⑤ノーマルな個人の尊厳と自己決定権
⑥その文化におけるノーマルな性的関係
⑦その社会におけるノーマルな経済的水準とそれを得る権利
⑧その地域におけるノーマルな環境形態と水準(3) ヴォルフェンスバーガーのノーマライゼーション思想
ヴォルフェンスバーガーは、ノーマライゼーションを「可能な限り文化的に通常である身体的な行動や特徴を維持したり、確立するために、可能な限り文化的に通常となっている手段を利用すること」と再定義した、そして、「少なくとも平均的な市民と同じ生活状態(収入、住居、保健サービスなど)を可能にするために、また、障害のある人の行動(技能や能力など)をできるだけゆたかにしたり、高めたり、また支持したりするために、文化的の通常となっている諸手段(なじみのもので価値のある技術、道具、方法)を利用すること」に注目をした。「社会的役割の実現」の重視である。具体策として、PASSという達成水準を測定する評価項目を提案した。その後、PASSINGに発展させている。髪型などを社会に適応をさせる項目がある。
ヴォルフェンスバーガーは、障害者は社会的逸脱者の1つであり、このようにラベリングされた人たちであると理解するラベリング理論の立場から理論展開していった。入所施設研究で著名な社会学者ゴッフマンの影響を強く受けている。1984年には、自らの理論をノーマライゼーションからソーシャルロールバロリゼーション(社会的役割の有価値化)に変更し、「可能な限り文化的に価値のある手段による、人々、ことに価値の危機に瀕している者たちのために、価値のある社会的な役割の可能性、確立、増進、維持ないし防衛」することと定義した。
(4) 国際的動向と日本への影響
ニィリエの尽力で、1971年に知的障碍者の権利宣言が国連で採択され、さらに1975年には、対象を知的障害者にも拡大した障害者の権利宣言が採択された。1981年には、ノーマライゼーションの実現のために「完全参加と平等」をテーマに国連で「国際障害者年」が定められるなど、国際的にも広がりをみせていった。国内的には、たとえば、1995(平成7)年の「障害者プラン」では、副題を「ノーマライゼーション7か年戦略」とするなど、また、2002(平成14)年の「新障害者プラン」では、「『リハビリテーション』と『ノーマライゼーション』の理念を継承するとともに、障害の有無にかかわらず、国民誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う『共生社会』の実現を目指して」と書かれている。ノーマライゼーション理念は、地域生活と脱施設化の社会運動に多大な影響を与えた。近年は、社会的排除の反対語であるソーシャル・インクルージョンという理念に、発展している。
出典:『障害者に対する支援と障害者自立支援制度』第4版 2018年 弘文堂
厚労省の資料がなんだかひどい
平成24年の厚生労働省の資料「障害者雇用対策について」に、下記の記載がありました。
1.ノーマライゼーションの理念
•ノーマライゼーションとは、障害者が他の一般市民と同様に社会の一員として種々の分野の活動に参加することができるようにしていこうとする理念
「なんかちがくね?」と思いつつ、まぁいっか、と諦め読み進めたら次の記載がひどかった。
•ノーマライゼーションの理念に基づいた社会を実現するためには、何よりも障害者自身の職業的自立に向けた努力が重要
•障害者である労働者は、職業に従事する者としての自覚を持ち、進んで能力の開発・向上を図り、有為な職業人として自立するよう努めなければならない
2012年の資料だからこんなものなのか?
それとも、今もこのままの考え方で止まっているのか?
止まってそうな気がする。。
含めたいこと、参考にしたいこと等
語句の意味・定義の他に、レポートに含めたいことや、レポートを書く際に特に参考となりそうなことを記しておきます。
今日の多様化する社会福祉サービスにおいては、利用者の主体性の尊重や自己決定などが重要視されており、社会福祉援助活動にかかわる援助者は、人間尊重という視点を基盤に、個人や家族などの「人間らしく」あるいは「人間として」生きる権利を擁護し、そしてさらに、利用者の意思や願いを代弁する役割をもっているということを忘れてはならない。また、援助者は社会福祉の理念として定着してきたノーマライゼーションや利用者のQOL向上といった考え方を理解し、すべての人びとが、人間として尊重され、共生できる社会の実現に向けて、その専門性を発揮することが重要なのである。すなわり、利用者の人権を擁護することに他ならないということがいえよう。社会福祉援助活動にかかわる援助者は臨床的な態度で利用者と常に向き合わなければならないのである。
出典:『現代社会と福祉』第5版 2019年 弘文堂
地域福祉の今日の理念にも通じる欧米におけるノーマライゼーションの理念は、我が国においては1981年の国際障害者年の「完全参加と平等」というテーマとして示され、障害者が地域において一般住民と同様の生活条件を獲得するものとして理解され普及し、その後の障害者の自立生活運動(IL運動)やバリアフリーの考え方と結びつき、地域福祉に新しい視点や対策を生み出した。
出典:『地域福祉の理論と方法』第3版 2015年 中央法規出版
社会福祉事業法の基本理念は、「福祉サービスを必要とする者が、(中略)社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を与えられる」とし、ノーマライゼーションの理念に立脚することや、福祉サービスの総合的実施、計画的実施などの理念が規定された。
出典:『地域福祉の理論と方法』第3版 2015年 中央法規出版
社会福祉法第4条で、地域福祉推進の目的は、「福祉サービスを必要とする地域住民が地域社会を構成する一員として日常生活を営む」ことおよび「社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が与えられるように」することと規定された。この意味は、排除されることのない、参加とノーマライゼーションに基づく社会福祉を目指すということ、および福祉サービスを必要とする者が、身近な地域でその人たしい自立した生活を送ることを実現することと解釈することができる。
出典:『地域福祉の理論と方法』第3版 2015年 中央法規出版
おわりに
この科目の学習を通して、科目別に学習する事柄の関連性について総合的・包括的に理解することが求められています。
国家試験の試験科目ではないので試験対策はありません。
が、社会福祉士が個別の対人援助や地域での活動を行う際に、頭で覚えた知識だけでは事足りないわけで。その部分を学ぶための科目と思われます。
ソーシャルワークの価値、知識、技術を統合して実践に活かす工夫を日頃の業務の中で行うことは、試験対策につながるかも。
きっとそれは、国家試験合格後に社会福祉士としての適切な業務遂行にもつながるのでは。と思ったのでした。