エンパワメントアプローチについて。
主に弘文堂の社会福祉士シリーズ『相談援助の理論と方法I』第3版を参考にまとめました。
概要
エンパワメントの概念をソーシャルワークに最初に導入したのはソロモン。
黒人に対するソーシャルワークの過程と目的としてエンパワメントを概念化し、パワーの欠如に気付き、パワー問題の分析をすることを前提とし、否定的価値づけをされた個人あるいはグループが経験するパワーブロックを克服する方法であると捉えた。
ソロモンのモデルを黒人だけでなく抑圧を経験している全ての人々に適用したのがリー。
リーは、エンパワメントの構成要素を以下のように措定。
- より積極的で潜在的な自己の発達(自己効力性)
- その人を取り巻く環境の社会的、政治的現実のより批判的理解のための知識と能力の発達(批判的意識)
- 個人あるいは集団の目標を達成することを促進する資源と戦略とより機能的なコンピテンスの発達と養成
エンパワメントアプローチの前提
- 全ての人間が困難な状況においても潜在的な能力と可能性を持っている
- 全ての人間が、パワーレスネス(無力化)の状況に陥る危険性を持っている
エンパワメントアプローチのパワーとは
エンパワメントアプローチにおいて「パワー」とは単なる外在的な権力ではなく、個人と社会との相互関係を形成し、それぞれの自律性に関与する力動を支配するメカニズムを指す。
具体的には次の4つが問題となると考えられている。
- 自分の人生に影響を行使する力
- 自己の価値を高め、それを表現する力
- 社会的な生活を維持・統制するために他者と協働する力
- 公的な意思決定メカニズムに関与する力
援助の方法
エンパワメントアプローチは、クライエントが主体となり、集団的経験を通して、態度・価値・信念の変容を図り、批判的志向や問題解決行動のための知識や技能を習得し、クライエントの「強さ」を強化することを目指す。
エンパワメントアプローチは現在も理論の体系化が図られている途上にあり、今後もさらに実践・理論の両面で発展していくことが期待されている。
エンパワメントアプローチの構成要素
コックスとパーソンズによる総括。
- クライエント自身による問題の定義を採用する
- クライエントの「強さ」を見極め、これを強化する
- クライエントが持つ階級や権力に関する意識を高める
- エンパワメントを志向する関係において、クライエントが自分の力を自覚できるような経験を促す
- クライエントを変化の過程に引き込む
- 協働、信頼、権限の共有に基づく援助関係を基盤にする
- 集団化された行動をりようする
- 相互支援やセルフヘルプのネットワークやグループを活用する
- 即効性のあるスキル(例えば問題解決技法、SST)の習得を促す
- 社会資源を動員し、クライエントのための権利擁護を行う
クライエントのパワーを増強する技法とスキル
ギテレッツは、クライエントのパワーを増強する技法として以下の5つを挙げている。
- クライエントの問題の定義を受け入れる
- 既存の強さを認め、それを増強していく
- クライエントの置かれている状況のパワーを分析する
- 特殊なスキルを教える
- 資源を動員しクライエントのためにアドボケイトする
リーは、クライエントのパワーを増強するスキルとして以下の5つを挙げている。
- クライエントの思考を促進するスキル
- 動機づけを指示するスキル
- 精神的安寧と自尊心を維持するスキル
- 問題解決を豊かにし、自己指南を促進するスキル
- 社会変化を促進するスキル
参考資料・図書
弘文堂が引用していた書籍。
ソロモンとリーの著作も一度は目を通してみたいものです。
ソロモン
https://ci.nii.ac.jp/ncid/BA12187026
リー
https://ci.nii.ac.jp/ncid/BA51306373
※他のモデル・アプローチに関する資料は下記記事で。