この記事は、社会福祉士養成課程(通信)の29番目のレポート(科目は「心理学理論と心理的支援」)に関することをまとめたものです。
S評価を得たレポートの実例つきです。
お忙しいでしょうから、ぜひ必要な個所に絞って見てくださいね。
以下の記事にまとめた手順に沿ってレポートを作成する準備を進めました。
レポートは2択
レポートの課題は、以下の2つから選べました。
(a)性格の特性と心理検査について
~性格の特性(類型論と特性論など)と代表的な性格検査について説明しなさい。
(b)欲求と動機づけについて、マスローの欲求階層説や自己効力感と関係して~具体的にその内容について述べなさい。
自分にとって知識がより不足してそうな(a)にして材料を集めたのですが、書きながら納得がいかず、結局(b)について書きました。
テキストと「働くひとの心理学―働くこと、キャリアを発達させること、そして生涯発達すること」(岡田昌毅/ナカニシヤ出版 2013年)から、適当に抜き出して継ぎ接ぎして即興で書いたので、作成の過程は残っていません。
レポート作成の手順
毎度恒例、「社会福祉士養成通信課程で提出するレポートとその作成方法について【土台=基礎編】」の「レポート作成の手順」に沿って作業を行っていきます。
テーマ分析
「性格の特性(類型論と特性論など)と代表的な性格検査について説明」するというテーマが、どのような内容を期待して設定されたのかを考えます。
また、社会福祉士養成通信課程におけるレポートは、
- 学習を進めているよ!ということを学校に知らせる
- こんなふうに理解しているよ!ということを先生に知らせる
ということも目的としていると考えられるため(参考:社会福祉士養成通信課程で提出するレポートの意味)テキストの内容を踏まえつつ、少し発展させたレベル内容も盛り込めるとベターかと思います。
今回のレポートは、
- 性格の特性について(類型論と特性論など)
- 代表的な性格検査について
- 上記に関する考察
以上3点が端的にしっかり書けていれば(=本質的なところが押さえてあれば)、及第点はもらえるでしょう。
材料を集める
レポートを書くにあたって必要な材料を集めます。
学校指定のテキストの中や、テキストに出てきた資料から主に材料を探します。
材料を集める
参考
- 学校指定のテキスト 31ページ
- コトバンク
性格の特性について
まず、性格とは何か、について確認します。
現時点でレポートに含めるかどうかはわかりませんが、今回のテーマに取り組むにあたって、定義を把握しておく必要のあるワードなので。
一貫性と持続性をもったその人らしい思考や行動の特徴的傾向の体系を「人格」という。
(略)
「人格」と「性格」はほぼ同義であるが、区別するときは、「人格」は知性、態度、興味、かちなどを含む全体的特徴を指し、「性格」は主として感情や意志の側面の特徴を指す。
出典:学校指定のテキスト32ページ
類型論とは
人間はユニークな全体であり、部分や要素に分解しては理解できないと考える。一定の理論に基づいた、典型的な事例によるタイプ(類型)に分類し、その構造を理解しようとする考え方によるもので、個性記述的研究を重視する。
類型論的研究は、人間を直観的に、全体的に把握しやすくわかりやすいという長所があるが、実際には混合型や中間型が多いのに説明が不十分、性格が画一的、固定的に把握されやすいといった短所も指摘されている。
ドイツの哲学者シュプランガーは、人間の追求する価値によって理論的、経済的、審美的、社会的、政治的、宗教的の六つに分類した。
ドイツの精神医学者クレッチマーは、患者の観察から特定の体型と気質を関連づけ、健常者にも適用されると考えた。
スイスの精神科医ユングの精神分析学の理論を基盤とした内向型、外向型の類型論は、この二つのタイプに、思考、感覚、感情、直観の四つの心理的機能を組み合わせて八つの類型とするものである。
特性論とは
個人がいろいろな場面を通じて比較的一貫して示す行動傾向を特性という。特性を性格の記述に用いられる基本的な概念(単位)として、その組合せによって性格の構造を理解しようとする考え方によるものである。
(略)
特性論では、個人はこれら特性の総和で表され、個人間の差は個々の特性の量の差であると考える。特性論的研究は、因子分析など数量的・統計的方法を用い、個人を少数のタイプに当てはめることなく広範囲にわたって分析的に、各特性についての程度を示すことができる点に長所をもつ。しかし反面、個人の全体像や特殊性をそっくり把握するといったことができにくいという短所をもつ。なお、因子分析によることには批判もあるが、むしろ類型論的研究との接近に、この手法を用いようとする考え方もある。
出典:コトバンク「性格」
●考え方 人格を構成する基本単位を人格特性といい、個人の違いは誰でも持っている共通特性の量的差異と考え、法則定立的研究を重視する。
●利点 数量的に測定するので、個人間の客観的な比較が可能である。
●欠点 断片的・モザイク的になり、人格の全体像をつかみにくい。
出典:学校指定のテキスト
アメリカの心理学者のキャッテル
G・W・オールポートの特性論に基づいて、因子分析により12個の特性(因子)を抽出。
性格特性語の整理統合と因子分析により“躁鬱気質ー分裂気質”“情緒安定ー情緒不安定”などの12の根源特性を見いだした。
ドイツ生まれイギリスの心理学者アイゼンク
健常者と神経症者を対象に、因子分析的・統計的方法を用いた人格研究を行い、内向性ー外向性の因子と、神経症的傾向の因子を見出した。また、人格を日常生活における個別的反応ー習慣的反応ー特性ー類型の階層構造によって捉えた。
ギルフォードも因子分析により10個の因子を発見した。
ビッグ・ファイブ(特性5因子モデル)
研究の蓄積から、性格は5つの特性因子により説明できると考えられるようになった。特に、コスタ, P.T.とマックレー, R.R.は外向性・調和性・誠実性・神経症的傾向・経験への開放性の5因子モデルと、測定尺度NEO-PI-Rを示した。
力動的構造からみる
力動的構造論とは:人体と同じように、人格をいくつかの領域からなる構造として捉え、その領域の力動的な関係によって捉えようとする。その人の葛藤や不適応状態をよく理解できる利点がある反面、領域は研究者による説明概念であり、実証的な研究が難しいという欠点が指摘されている。
- レヴィン:場の理論
- フロイト:精神分析理論
- ユング心理学
- アドラー心理学
- 成層説
- サイコシンセシス
- 交流分析理論
学習からみる
- 学習理論
- バンデューラ:社会的学習理論
人間性からみる
人間性心理学とは:人格の中核は肯定的なものと考え、自己成長力を強調する。「今ここで」の体験世界や成長の過程を把握できる。しかし自己実現について実証的研究が難しい。楽観的との批判もある。
- マズロー:欲求階層節と自己実現論
- ロジャーズ:自己理論
認知からみる
- 認知論
代表的な性格検査
- コトバンク「性格検査」
- 学校指定のテキスト 147~149ページ
日本では質問紙法,投映法(投影法),作業検査法に分類されることが多い。
質問紙法
- 矢田部ギルフォード性格検査(YG性格検査)
- MMPI(ミネソタ多面人格目録性格検査)
- 新版TEGII(東大式エゴグラム) ←販売終了間近
- 新版TEG 3(東大式エゴグラム Ver.3)
投影法
- 描画法(バウムテスト、人物画テスト、HTPテスト、等)
- 文章完成法テスト(SCT)
- TAT(絵画統覚検査)
- ロールシャッハテスト
- PFスタディ(絵画欲求不満テスト)
作業検査法
- 内田クレペリン検査
S評価のレポート例
ご参考になれば幸いです。
完全コピペはダメですよ。
掲載するレポートの評価は以下の通りです。
点数 90点
総合評価 S
項目別評価では、
・課題の理解度 S
・論旨と構成 S
・自己の見解 S
1. 欲求について
欲求とは、行動を生起させる内的状態を指す。人を行動に駆り立てる欲求には様々なものがあり、一般的には一次的欲求(生存のために不可欠で、生得的に備わっている。摂食、院水、睡眠、体温調節など。身体的・生理的状態を常にある一定の範囲内に維持するホメオスタシスの働きで制御される)と二次的欲求(人が社会生活を営むことで生後獲得される。社会的欲求とも呼ばれる。親和欲求や達成欲求など)に大別される。
マズローは、人間は自己実現に向かって絶えず成長していく生き物であるとの人間観に立ち、発達的視点から動機づけを捉えようとした。その上で、人間の欲求を低次から高次へ5つのカテゴリーに分類し、それらがピラミッド型の階層構造をなしていると考える「欲求階層説」を提唱した。最下層に生理的欲求、その上に安全の欲求、所属と愛の欲求、承認の欲求の順に続き、最上位には自己実現欲求が仮定されている。低次の欲求が充足されて初めてその上位の欲求が発生するものと考えた。5段階の欲求は大きく欠乏欲求と成長欲求の2つに分類され、第1層から第4層を欠乏欲求(自分に足りないものを外部から補おうとする欲求)、第5層を成長欲求(自分の中にあるものを外に出そうとする欲求)とした。
2. 動機づけについて
動機づけは、行動を開始させ、ある一定の方向に方向づけ、維持させる過程であると定義される。生命を維持し、種を保存させるための生理的な動機は生理的動機づけといい、この生理的動機づけに基づいて社会的動機づけが社会生活の中で獲得されていく。社会的動機づけには、外発的動機づけ(外部からの賞罰による動機づけ)と内発的動機づけ(内部からの知的好奇心などによる動機づけ)、達成動機づけが(優れた基準や目標を立てて、そこに到達しようとする動機)がある。
行動の成功や失敗の原因を何かに求めることを原因帰属といい、達成動機の高い人は高い目標を設定して困難な課題に果敢に挑戦しようとし、成功を「自己の能力や努力」に、失敗を「自己の努力不足」に帰属させる傾向がある。一方、達成動機の低い人は、成功を外的要因(運の良し悪しや課題の困難度)に帰属させ、失敗を自己の能力不足に帰属させる傾向がある。
3. 考察
自己効力感はバンデューラが提唱した概念で、自分がある目標を達成するために必要な行動を実行できるという自信(効力感)や期待のことである。人を積極的に行動させるエネルギー源となり、適応や成長を促し、次のステップへ意欲的に挑戦することを動機づける。しかし自己効力感が低いと自尊感情も低く、行動は消極的になる。行動の選択が不適切になったり、満足のいく結果を生み出しにくくなったりすることもある。
人は自身の身体的特性や生育環境、様々な出来事の影響を受け、欲求や自己効力感の持ち方は人によって大きく異なる。疾患や薬物の影響を受けることもある。クライエントに寄り添い、その人がどのような世界に生きて何を感じているのかを共感的に理解し、適切な動機づけや意思決定、行動を支援できる社会福祉士を目指したい。
担当の先生からは、「とても素晴らしいレポートです。課題に対する理解が高く,論旨と構成も申し分ありません。また,よく自分なりに考えをまとめられています。特に指摘する点はありません。」というコメントをいただきました。
前述の通り、テキストと「働くひとの心理学―働くこと、キャリアを発達させること、そして生涯発達すること」(岡田昌毅/ナカニシヤ出版 2013年)から、適当に抜き出して継ぎ接ぎして即興で書きました。
そんなレポートでも、S評価になるものかとは思いましたが。
自己肯定感高めに自己評価してみるとすれば。
欲求や動機づけ、マスローの欲求階層説や自己効力感については、キャリコンの資格取得の勉強をしている時にも学習したので、その時の学びが自分の中にしっかり根付いて、今回活かされたかなというところです。
ご参考になれば幸いです。