この記事は、社会福祉士養成課程(通信)の18番目のレポート(科目は「就労支援サービス」)に関することをまとめたものです。
A評価を得たレポートの実例つきです。
お忙しいでしょうから、ぜひ必要な個所に絞って見てくださいね。
以下の記事にまとめた手順に沿ってレポートを作成する準備を進めました。
レポートは2択
レポートの課題は、以下の2つから選べました。
(a) 障害者に対する職業リハビリテーションサービスの提供プロセスについて説明するとともに、その課題について論述しなさい。
(b) ジョブコーチによる就労支援について説明し、期待される適用効果と適用上の課題に関して論述しなさい。
今後の自分の研究課題に、より深く関わりそうな(a)にしました。
レポート作成の手順
毎度恒例、「社会福祉士養成通信課程で提出するレポートとその作成方法について【土台=基礎編】」の「レポート作成の手順」に沿って作業を行っていきます。
テーマ分析
「障害者に対する職業リハビリテーションサービスの提供プロセスについて説明するとともに、その課題について論述する」という課題が、どのような内容を期待して設定されたのかを考えます。
また、社会福祉士養成通信課程におけるレポートは、
- 学習を進めているよ!ということを学校に知らせる
- こんなふうに理解しているよ!ということを先生に知らせる
ということも目的としていると考えられるため(参考:社会福祉士養成通信課程で提出するレポートの意味)テキストの内容を踏まえつつ、少し発展させたレベル内容も盛り込めるとベターかと思います。
今回のレポートは、
- 障害者に対する職業リハビリテーションサービスの提供プロセスについて
- 障害者に対する職業リハビリテーションサービスまたはその提供プロセスの課題
- 自分の考察
以上3点が端的にしっかり書けていれば、及第点はもらえると思われます。
材料を集める
レポートを書くにあたって必要な材料を集めます。
学校指定のテキストの中や、テキストに出てきた資料から主に材料を探します。
材料を集める
職業リハビリテーションの概念
まずは恒例、関連用語の概念を確認します。
(用語の定義)
第二条
(中略)
七 職業リハビリテーション 障害者に対して職業指導、職業訓練、職業紹介その他この法律に定める措置を講じ、その職業生活における自立を図ることをいう。障害者の雇用の促進等に関する法律
わが国で職業リハビリテーションの概念が明確にされたのは、1955(昭和30)年にILOの勧告第99号で定期された「職業指導、職業訓練、選択方式職業あっせんなどの職業的サービスの提供を含めた、継続的、総合的リハビリテーション過程の一部であって、障害者の適切な就職とその維持を可能ならしめるよう、計画されたもの」という定義だろう。ここで指摘される職業指導・職業紹介・職業訓練などの知識や技術が、職業リハビリテーションの中核とされたのである。
『職業リハビリテーションの基礎と実践』19ページ
1955年の職業更生(障害者)勧告(第99号)
正 式 名 : 障害者の職業更生に関する勧告
(第38回総会で1955年6月22日採択。最新の勧告)
勧告の主題別分類:障害者 勧告のテーマ:雇用政策、雇用促進
[ 概 要 ]
障害者がその身体的、精神的、社会的、職業的、経済的有用性を可能な限り回復できるためには、そのリハビリテーションが必要不可欠であるとの理念に基づき、障害者の職業リハビリテーション、職業指導、職業訓練、職業紹介のあり方について勧告する。障害者の雇用機会を増大する方法、保護雇用などについても規定する。
1983年の職業リハビリテーション及び雇用(障害者)条約(第159号条約) と同時に採択された同名の勧告(第168号) で補足されている。なお、第159号条約は1992年6月12日に批准され、当勧告はその中で、「職業リハビリテーション(障害者)勧告」と称されている。
職業リハビリテーションサービスの提供プロセス
テキストからざっくりまとめます。
厚生労働省のこのページ(障害者の方への施策)も参考になります。
1. 就職に向けての相談
- 就労に関する様々な相談支援:障害者就業・生活支援センター
- 職業相談・職業紹介:ハローワーク
- 職業カウンセリング、職業評価:地域障害者職業センター
- 障害者相談支援事業:相談支援事業者
2. 就職に向けての準備・訓練
- 職業準備支援:地域障害者職業センター
- 医療機関などとの連携による精神障害者のジョブガイダンス事業:ハローワーク
- 就労支援事業
- 公共職業訓練:障害者職業能力開発校、ハローワーク など
- 障害者の態様に応じた多様な委託訓練:障害者職業能力開発校(委託訓練拠点校)、ハローワーク
- 職場適応訓練:都道府県、ハローワーク
3. 就職活動、雇用前・定着指導
- 求職登録、職業紹介、継続雇用の支援:ハローワーク
- 障害者試行雇用(トライアル雇用)事業:ハローワーク
- 職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業:地域障害者職業センター、社会福祉法人 など
- 精神障害者の職場復帰支援(リワーク支援):地域障害者職業センター
- 就業面と生活面の一体的な支援:障害者就業・生活支援センター
4. 離職・転職時の支援、再チャレンジへの支援
- 職業相談、職業紹介、雇用保険の給付:ハローワーク
- 就労継続支援事業A型(雇用型)
- 就労継続支援事業B型(非雇用型)
5. 事業主への支援
- 求人受理、職業紹介(仕事と障害者とのマッチング):ハローワーク
- 障害者試行雇用(トライアル雇用)事業:ハローワーク
- 雇用管理などに関する専門的な相談・助言、雇用管理サポーターによる支援:地域障害者職業センター
- 各種助成・奨励金:都道府県労働局、ハローワーク
特定求職者雇用開発助成金、障害者初回雇用奨励金(ファーストステップ奨励金)、障害者トライアル雇用奨励金 - 障害者雇用納付金制度に基づく各種助成金:(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構
『職業リハビリテーションの基礎と実践』から
以下、『職業リハビリテーションの基礎と実践』68ページ以降の記載に沿って、障害のある人に直接支援者が関わり支援する制度や、事業主が利用できる制度について整理します。
1. 就労相談
職業リハビリテーションサービスの最初のステップ。
職業相談とも。
法律上の「職業指導」とほぼ同義。
相談を受ける人は、
- 特別支援学校等に在籍する学生→担当教諭
- 在宅で所属機関のない障害者→公共職業安定所の専門援助窓口、地域障害者職業センターの障害者職業カウンセラー、障害者就業・生活支援センターの就業支援員
など。
相談しているだけでは職業上の特性について十分把握できない場合もあるので、心理検査や障害者職業センターの「職業評価」を利用して職業能力を把握したり、今後の支援について見通しを得たりする。
障害者職業センターでは職業相談や職業評価後に、「職業リハビリテーション計画」を作成し、就職、職場定着、職業復帰などに向けてのステップや、計画実現に向けて必要な支援や、関係機関の役割分担などを提案、コーディネートを行っている。
2. 就労準備
就労のための訓練的なサービス。
分類の方法は様々なものが考えられ、その一つとして特定の技能習得を目指すものかどうかという基準がある。
特定の技能習得を目指すものの例
- 特別支援学校における理療等の技能習得のための教育
- 資格取得型の就労移行支援事業
- 障害者職業能力開発校等での様々な技能習得のためのコース
職業生活に表れる課題克服、基本的労働習慣の体得を目指すもの
【障害者施設を活用するもの】
- 障害者職業センターの職業準備支援
- 就労移行支援事業(一般型)
- 知的障害特別支援学校等の作業学習
- 精神科病院等のデイケアの中の就労を目指すコース
【職場を活用するもの】
- 職業能力開発校がコーディネートする委託訓練
- 知的障害特別支援学校等の現場実習
3. 職場開拓・職場実習
職場開拓
主に職場開拓を受け持つのは、公共職業安定所。
公共職業安定所と連携を図りながら、障害者職業センターや障害者就業・生活支援センター、就労移行支援事業所などが職場開拓を行うこともある。
職場実習
特別支援学校が行う職場実習は卒業後の就職につながる場合もあり、実習先開拓は職場開拓に近い意味を持つ場合もある。
採用後に必要な配慮を見極めるため実習が実施される場合もある(トライアル雇用、卒業間近の現場実習等)。
職場適応援助者(ジョブコーチ)制度
知的障害・精神障害・発達障害など認知能力に制約がある人の場合、支援者が同伴し障害者への支援や、上司・同僚等にコンサルテーションを行うことで職場適応が進む場合がある。
このような活動のための制度で、障害者職業センターや、何らかの形で障害者職業センターと提携している社会福祉法人等の社会福祉施設に配置される第1号ジョブコーチ、企業が雇用して社内の障害者を支援する第2号ジョブコーチがある。
4. フォローアップ
【制度上のもの】
事業主側の通常の雇用管理/職場内サポート/支援機関によるフォローアップ
職場も、採用された人(障害者)も絶えず変化していくの中で生じる不適応に対して、必要に応じて支援機関によるフォローアップが行われる。
フォローアップの制度
- 公共職業安定所は必要な場合には障害者の就職後に助言・指導をすること(第17条)。
- 地域障害者職業センターでは知的障害者等に対して職場適応に関する助言・指導を行うこと(第22条)。
- ジョブコーチ(職場適応援助者)による支援は、「雇用前から」「雇用と同時に」「雇用後に」と、必要なタイミングで開始できる。(厚生労働省:職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業について)
障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)
- 就労定着支援:就労に向けた支援として厚生労働省令で定めるものを受けて通常の事業所に新たに雇用された障害者につき、厚生労働省令で定める期間にわたり、当該事業所での就労の継続を図るために必要な当該事業所の事業主、障害福祉サービス事業を行う者、医療機関その他の者との連絡調整その他の厚生労働省令で定める便宜を供与すること。
特別支援学校の中には、休日などに青年学級等を開催して卒業生の状況把握を行ったり、学校の夏期休暇中に卒業生の職場訪問を行ったりすることもある。不適応が確認されると支援を再開したり、他機関につないだりする。
【制度外で】
既存の制度・サービスを活用・改善していくだけでなく、新たな支援方法を開拓していく態度も重要。
- 長期的な支援(一つの企業で長年働く、転職しながらキャリアを積み上げる・・)
- 健常者より早く老化が進む場合に必要案支援
レポートに入れないけどメモ
職業リハビリテーションにおける支援過程の一般的な手順は、職業評価によって障害のある人の能力特性を明らかにし、職業(前)訓練により能力を一定水準にまで高めた後で、職業あっせんをして就職につなげる。つまり職業評価を踏まえた職業(準備)訓練をとおして、就職活動の前に「職業準備性」を高めることを重視したものであった。このような過程による支援を「Train then Place」アプローチあるいはレディネスモデルという。この方法は、主に身体障害の人に支援方法として定着してきた。
だが、学習成果の汎化が難しいとされる知的障害や精神障害のある人のなかには、職業準備訓練を経てから就職に向かう支援ではなくて、処遇された環境に入った後で訓練をする方が高い適応性を示すことがある。そうした人たちが就労支援の対象として増大するにつれて、あらたに展開されはじめたのが「Place then Train」モデルにもとづく支援である。これはわずかな時間であろうと実際に働ける場のなかで、ジョブコーチといわれる支援者から援助を受けながら、職場内での訓練をして適応性を高めていく方法である。
『職業リハビリテーションの基礎と実践』27ページ
S評価のレポート例
ご参考になれば幸いです。
完全コピペはダメですよ。
掲載するレポートの評価は以下の通りです。
点数 80点
総合評価 A
項目別評価では、
・課題の理解度 A
・論旨と構成 B
・自己の見解 A
職業リハビリテーションとは、障害者に対して職業指導、職業訓練、職業紹介、その他障害者雇用促進法や障害者総合支援法に定める措置を講じ、その職業生活における自立を図ることをいい、概ね次のプロセスで提供される。
①就職相談
相談によりその提供が始まる。特別支援学校等の担当教諭、特に所属機関のない人であれば障害者就業・生活支援センター、ハローワークの職業相談・紹介、地域障害者職業センターの職業カウンセリングや職業評価、市区町村や相談支援事業者等が相談を受ける、今後の支援について計画を立てるなどする。
②就職準備・訓練
目指すものは、特定の技能習得、基本的労働習慣の体得、職業生活に現れるであろう課題の評価とその改善に大別される。
地域障害者職業センターの職業準備支援、ハローワークの医療機関などとの連携による精神障害者のジョブガイダンス事業、障害者職業能力開発校やハローワークの公共職業訓練・委託訓練、地域の就労支援事業者等が提供する訓練等がある。
③職場開拓・職場実習、就職活動
職場開拓は主にハローワークが、実習先開拓は主に特別支援学校や就労支援事業所、都道府県等自治体が行う。実習は、特に就労経験の少ない人にとっては重要なステップである。ハローワークをはじめ利用者に関わる各組織が職場実習や就職活動を支援する。
④フォローアップ
就職後のフォローアップ制度としては、職場内で行われる事業主側の通常の雇用管理や職場内サポートの他、支援機関による支援がある。障害者就業・生活支援センターによる就業面と生活面の一体的な支援、地域障害者職業センターや社会福祉法人による職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援、ハローワークによる助言や指導、就労移行支援事業所や定着支援事業所による定着支援等がある。
⑤離転職、再チャレンジ
ハローワークが職業相談や職業紹介、雇用保険の給付を行う。就労移行支援のサービスは2年間までという条件があるものの、転職時にも利用することができる。
通常の事業所による雇用が困難な人は、就労継続支援事業所で生産活動等を通して知識や能力の向上のために必要な訓練を受けられる。雇用契約のあるA型と、雇用契約のないB型がある。
次に課題について述べる。
障害者の法定雇用率引き上げに伴い、雇用障害者数や実雇用率は近年過去最高を更新し続けているが(1)、障害者雇用における離職率は一般の雇用に比べて高い傾向がある。ハローワークや地域の就労支援機関の連携による支援がある方がない場合よりも、また、就労前訓練を受けている方が受けていないよりも、定着率は高い(2)。就労前訓練の利用が一層広がり、かつハローワークや地域の支援機関が連携して支援にあたることが望まれる。
また、就労移行支援事業所に勤務して痛切に感じたのは、障害者雇用の中でのキャリアアップが難しく、就職後ずっと同じ立場で同じ仕事を続ける人が多いことだった。その能力やスキルの向上に応じてキャリアアップが望める事業所が増えたら、仕事に一層意欲的に取り組む人が増え、離職率の低下にもつながるのではないだろうか。
ご担当くださった講師の先生からのコメントとしては、
- 職業リハビリテーションサービスの提供プロセスについては、概ね整理されている
- 課題の指摘において、専門的マンパワーの確保について具体的に記述されれば、さらに良いレポートになった
ということが書かれていました。