この記事は、社会福祉士養成課程(通信)の16番目のレポート(科目は「地域福祉の理論と方法」)に関することをまとめたものです。
A評価を得たレポートの実例つきです。
お忙しいでしょうから、ぜひ必要な個所に絞って見てくださいね。
以下の記事にまとめた手順に沿ってレポートを作成する準備を進めました。
レポートは2択
レポートの課題は、以下の2つから選べました。
(a) 地域共生社会の構築における住民主体の小地域福祉活動や地区社会福祉協議会活動の意義および参加への参加促進方法について述べなさい。
(b) 地域福祉実践における新たな援助方法としての「コミュニティソーシャルワーク」が求められる社会的な背景を踏まえ、考え方の7つの特徴について述べなさい。
学校指定テキストの該当箇所をざっくり読んで、私にとっては(b)の方が理解しやすかったので、(b)にしました。
レポート作成の手順
毎度恒例、「社会福祉士養成通信課程で提出するレポートとその作成方法について【土台=基礎編】」の「レポート作成の手順」に沿って作業を行っていきます。
テーマ分析
「地域福祉実践における新たな援助方法としての「コミュニティソーシャルワーク」が求められる社会的な背景を踏まえ、考え方の7つの特徴について述べる」というテーマは、どのような内容を期待して設定されたのかを考えます。
また、社会福祉士養成通信課程におけるレポートは、
- 学習を進めているよ!ということを学校に知らせる
- こんなふうに理解しているよ!ということを先生に知らせる
ということも目的としていると考えられるため(参考:社会福祉士養成通信課程で提出するレポートの意味)テキストの内容を踏まえつつ、少し発展させたレベル内容も盛り込めるとベターかと思います。
今回のレポートは、コミュニティソーシャルワークとは何かということを踏まえた上で、
- コミュニティソーシャルワークが求められる社会的背景
- 考え方7つの特徴について、上記背景を踏まえて簡潔にまとめ
- 自分の考察
以上3点が端的にしっかり書けていれば、及第点はもらえると思われます。
材料を集める
レポートを書くにあたって必要な材料を集めます。
学校指定のテキストの中や、テキストに出てきた資料から主に材料を探します。
まずは、語句の意味・定義を明確にします。(次項にまとめておきます。)
材料を集める
材料は学校指定のテキストだけでも十分集まりました。
むしろ十分すぎて、文字数は1200字を大幅に超えます。
本質的に外せない要素だけを残して、削れるところを削っていく作業をするわけですが、この作業を通してコミュニティソーシャルワークについての本質的な理解に至れば、レポートを書いた意味があったと言えそうです。
参考資料、出典として使えそうなもの
学校指定のテキストとは少し異なる視点からの記述もあり○。
特徴は5まででしたが。
コミュニティソーシャルワークとは
統一された見解や定義はなく、複数の理論家が色んなことを考えています。
例えば、大橋謙策先生は次のように定義しています。
コミュニティソーシャルワークとは、地域に顕在的、潜在的に存在する生活上のニーズ(生活のしづらさ、困難)を把握(キャッチ)し、それら生活上の課題を抱えている人や家族との間にラポール(信頼関係)を築き、契約に基づき対面式(face to face)によるカウンセリング的対応も行いつつ、その人や家族の悩み、苦しみ、人生の見通し、希望等の個人因子とそれらの人びとが抱えている生活環境、社会環境のとこに問題があるのかという地域自立生活上必要な環境因子に関して分析、評価(アセスメント)する。その上で、それらの問題解決に関する方針と解決に必要な方策(ケアプラン)を本人の求め、希望と専門職が支援上必要と考える判断とを踏まえ、両者の合意で策定する。その際には、制度化されたフォーマルケアを有効に活用しつつ、足りないサービスについてはインフォーマルケアを活用したり、新しくサービスを開発するなど創意工夫して、必要なサービスを統合的に提供するケアマネジメントの方法を手段とする個別援助過程が基本として重視されなければならない。と同時に、その個別援助過程において必要なインフォーマルケア、ソーシャルサポートネットワークの開発とコーディネート、並びに“ともに生きる”精神的環境醸成、ケアリングコミュニティづくり、生活環境・住宅環境の整備等を同時並行的に、総合的に展開、推進していく活動、機能である。
一方、加納恵子先生はコミュニティソーシャルワークをケースワークモデルの発展型としてとらえ、むしろコミュニティワークが独自にもつ協働アプローチの重要性を述べ、コミュニティソーシャルワークへの疑問を表明していたりします。
他にも色々な捉え方があり、唯一の決定的な定義はないようです。
コミュニティソーシャルワークが求められる社会的背景
今日の日本社会において、なぜコミュニティソーシャルワークが求められるのか、その背景となることをピックアップします。
- 日本の社会福祉制度は成熟してきたが、地域で多様化・深刻化する福祉ニーズは増大し、公的な制度だけでは対応しきれない、対処できていない。
- 縦割りの福祉サービスや既存の資源あるいは保健・医療・福祉・介護・教育・労働などのヒューマンサービスを別々に用いて地域の課題に対応していくのでは不十分であり、限界に達している。
- 多様な生活ニーズに対処するために、また行政と住民による協働の媒介機能として、新たな地域福祉実践の考え方としてのコミュニティソーシャルワークに期待がかけられた。
- 個別のニーズを中心に、そのニーズを有する地域や住民に共通する課題を踏まえながら、包括的・総合的・継続的な視点で解決を図る方法の構築とそれが実現可能となるシステムや組織の整備が求められてきた。そのような課題解決のアプローチの一つとしてコミュニティソーシャルワークが注目されてきた。
- とりわけ、制度の狭間のニーズや複雑で先鋭化する生活課題に、これまでのような対象属性別や施設対応で行うことが困難になってきた。
コミュニティソーシャルワークの考え方 7つの特徴
※ほとんど学校指定のテキストからの引用です。
① 地域基盤のソーシャルワーク実践
日本のソーシャルワークは、福祉関係六法に代表されるような分野や属性別の制度やサービスの整備に対応して実践と理論化が進められたために、すべての領域に対応できるソーシャルワーカーは皆無に等しい。しかし、利用者が抱える問題は、複合的な問題や制度の谷間にあるニーズが多く、個別分野対応では困難な場合が多い。コミュニティソーシャルワークは、あらかじめ限定された一定の地域エリアで、地域と結びついて活動するとことに特徴がある。この場合、利用者に即応した制度やサービス資源だけではなく、地域社会に潜在する人材、情報、組織、団体、資金などを発掘し、社会資源として改善・活用・開発していくことも含まれる。
② 個別化と脱個別化の統合
援助の個別化は現在においてもソーシャルワークの原則である。個別化では利用者個々の直接援助活動を丁寧に行い、利用者の自己実現、願いや希望に沿って、利用者の主体的参加を引き出し、問題対応能力を高めるストレングス視点の援助が重視される。しかし、個別化のままでは対症療法的な援助が中心になる。脱個別化とは、個別化した援助にとどまらず、幅広い社会文脈の中で事例の普遍性を見いだそうとする視点である。つまり、脱個別化は、同様の個別ニーズの再発生を予防し、地域の解決基盤の強化につなげることを意味し、コミュニティソーシャルワークとは個別化と脱個別化を統合した実践であるといえる。
③ 個別アセスメントと地域アセスメントの連結
ニーズ把握では、潜在的なニーズを掘り起こし早期にキャッチすること、アウトリーチ展開やサービスへのアクセス障壁をなくすことが重視される。個別アセスメントは、ケースワークやケアマネジメントの基本である。一方、地域アセスメントは、コミュニティワークで最初の援助プロセスとして重視されてきた。しかし、コミュニティソーシャルワークは二つの意味でこれらと異なる。まずアセスメントの着眼点が異なる。従来の病理モデルである問題発見型ではなく、強さを発見する力点が強調されるようにストレングス視点が基本となる。もう一つ異なるのは、コミュニティソーシャルワークはこの個別アセスメントと地域アセスメントを連結して理解するところに特徴がある。地域アセスメントでは、地域プロフィールを特定化し、介入のターゲットを定めるためにも、地域の社会資源状況、地域に潜在的な解決能力、地域住民の社会的受容力、人的な組織的力量の動員可能性などを把握することが重要になる。
④ 専門職と非専門職の結合によるチームアプローチ
チームアプローチとは、共通する目標のもとに複数の人の知恵と力を結集す総合的な援助の布陣であり、問題解決の手法である。しかしコミュニティソーシャルワークが強調するチームアプローチとは、施設や病院内など患者、利用者に対する専ら専門職のみで構成されるチームアプローチとは異なる。コミュニティソーシャルワークでは、利用者の自己決定の行使を支え、地域を問題発生の場ではなく問題解決の場に変えていくために、専門職も利用者や地域住民と一緒に問題解決に取り組む対等なパートナーシップやコラボレーションを基盤とした援助を特徴とする。
⑤ 公民協同による支援のコーディネート
地域では、すべての利用者や日々発生する生活ニーズにあらかじめ制度やサービスが準備されているわけではない。日本における今日の地域福祉課題は、生活困窮、虐待、自殺、孤立死、ひきこもり、依存症、認知書府、震災被災者等、どの世代においても増大し、生活困難は複合化し、急激発生や深刻化している。法律も条令もいつも後追いでしかない。だからといって、制度の狭間にあるニーズを放置したり、我慢させてよいというものでもない。複数の福祉課題を抱えて既存の制度だけでは対応困難な事例も解決が切実に求められている。行政の下支えを求めながらも住民とともに解決していく公民協同のコーディネートとしてのはたらきが重要になる。
⑥ 予防的なアプローチの重視
コミュニティソーシャルワークでは、ニーズの将来発生を予防または対処できるように事前反応的な介入によって地域の解決基盤の強化につなげることがもとめられる。そのためには、ニーズの発生を地域や環境の変化とともに分析し、かつ将来の変化を予測した対応を計画することが基本となる。個別支援も一件落着型であってはならない。個別ニーズの分析からすぐ求められる対応だけでなく、普遍的な価値交換(交換ニーズ)を発見する帰納法的分析が求められる。そのうえで、価値交換(交換ニーズ)という地域の普遍的な課題を抽出し、その地域課題に対応した事業を開発し、個別ニーズの予防に役立てる演繹法的対応という循環的な理解が必要である。
⑦ 地域ネットワークの形成と地域における包括的ケアシステムの構築
地域ネットワークとは、地域を基盤に資源・技能・接触・知識を有している人々ないし組織相互のインフォーマル、またはフォーマルな結びつきとその働きであり、様々なサービス間の連携の網の目のようなきめ細かい活動を指す。コミュニティソーシャルワークは、人々の紡ぎ合いを形成していくことを基本とし、セルフヘルプグループやボランティア活動の支援と協働、社会機関相互のネットワーク形成、福祉教育の推進、総合的なケアシステム構築までの幅の広い取り組みを行う。
A評価のレポート例
ご参考になれば幸いです。
完全コピペはダメですよ。
掲載するレポートの評価は以下の通りです。
点数 80点
総合評価 A
項目別評価では、
・課題の理解度 A
・論旨と構成 B
・自己の見解 B
日本の社会福祉制度は成熟してきたが、地域において福祉ニーズは多様化・深刻化かつ増大し、とりわけ制度の狭間のニーズや複雑化する生活課題に、従来の行政サービスや個別分野での対応では対処しきれなくなっている。多様な生活ニーズに対応するために、また行政と住民による協働の媒介機能として、新たな地域福祉実践の考え方としてコミュニティソーシャルワークが求められている。
コミュニティソーシャルワークという用語自体は、1982年のバークレイ報告で公式に示されたが、その捉え方は必ずしも一致していない。しかし地域を基盤とするソーシャルワークのアプローチは、様々な経緯を経て20世紀後半に改めて重要視されるようになり、名称は様々であるが多くの市町村でコミュニティソーシャルワーカーが配置されるようになっている。
コミュニティソーシャルワークの考え方の7つの特徴を以下に述べる。
① 地域基盤のソーシャルワーク実践
利用者の抱える困難は複合的な課題や制度の谷間にあるニーズが多いため、分野別ではなく、あらかじめ限定された一定の地域エリアで、地域と結びついて活動する。
② 個別化と脱個別化の統合
ソーシャルワークの原則である援助の個別化も行いつつ、脱個別化によって事例の普遍性を見いだすことで同様の個別ニーズの再発生を予防し、地域の解決基盤の強化につなげる。
③ 個別アセスメントと地域アセスメントの連結
アセスメントはストレングス視点を基本とし、個別アセスメントと地域アセスメントを連結して理解する。
④ 専門職と非専門職の結合によるチームアプローチ
利用者の自己決定の行使を支え、地域を問題発生の場ではなく問題解決の場としていくために、専門職も利用者や地域住民と一緒に問題解決に取り組む、対等なパートナーシップやコラボレーションを基盤とした援助を行う。
⑤ 公民協働による支援のコーディネート
既存の制度だけでは対応困難な事例や、制度の狭間にあるニーズに対応するために、行政の下支えを求めつつ住民とともに解決を目指す、公民協働のコーディネートを行う。
⑥ 予防的なアプローチの重視
ニーズの将来発生を予防または対処できるように、事前反応的な介入による地域の解決基盤の強化が求められるため、ニーズの将来発生を予測した対応を計画する。
⑦ 地域ネットワークの形成と地域における包括的ケアシステムの構築
地域を基盤に、様々な主体が相互に結びつき、協働・連携してきめ細かく活動する地域ネットワークを形成する。人びとの紡ぎ合い形成を基本とし、セルフヘルプグループやボランティア活動の支援と協働、総合的なケアシステム構築等、幅広い取り組みを行う。
地域社会において様々な困難を抱える人たちを支援する上で、上述の7つの考え方は最も重要なキーコンセプトであると言えよう。コミュニティソーシャルワーカーを名乗らないワーカーにとっても、持続可能な社会を目指し、地域福祉を実践する中で、また社会資源の開発や利活用を行っていく上で欠かせない視点なのではないだろうか。地域で活動する社会福祉士として常に念頭に置いておきたい事柄の一つである。