この記事は、社会福祉士養成課程(通信)の8番目のレポート(科目は「児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度」)に関することをまとめたものです。
S評価を得たレポートの実例つきです。
お忙しいでしょうから、ぜひ必要な個所に絞って見てくださいね。
以下の記事にまとめた手順に沿ってレポートを作成する準備を進めました。
レポートは2択
レポートの課題は、以下の2つから選べました。
(a) わが国における児童虐待の現状とその対策について述べなさい。
(b) 児童福祉施設の現状と課題について述べなさい。
比較して簡単そうに思えた(a)にしました。
レポート作成の手順
毎度恒例、「社会福祉士養成通信課程で提出するレポートとその作成方法について【土台=基礎編】」の「レポート作成の手順」に沿って作業を行っていきます。
テーマ分析
「わが国における児童虐待の現状とその対策について述べる」という課題が、どのような内容を期待して設定されたのかを考えます。
また、社会福祉士養成通信課程におけるレポートは、
- 学習を進めているよ!ということを学校に知らせる
- こんなふうに理解しているよ!ということを先生に知らせる
ということも目的としていると考えられるため(参考:社会福祉士養成通信課程で提出するレポートの意味)テキストの内容を踏まえつつ、少し発展させたレベル内容も盛り込めるとベターかと思います。
材料を集める
レポートを書くにあたって必要な材料を集めます。
学校指定のテキストの中や、テキストに出てきた資料から主に材料を探します。今回は、厚生労働省のホームページで児童虐待防止対策のページも参考にしました。
次項にまとめます。
材料を集める
児童虐待とは
(児童虐待の定義)
第二条 この法律において、「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)がその監護する児童(十八歳に満たない者をいう。以下同じ。)について行う次に掲げる行為をいう。
一 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
二 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。
三 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。
四 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。第十六条において同じ。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
(児童に対する虐待の禁止)
第三条 何人も、児童に対し、虐待をしてはならない。
現状
- 法整備:「児童虐待の防止等に関する法律」の2000年(平成12)の制定以後、児童福祉法と合わせて7回の大きな改正
- 児童虐待相談対応件数:令和元年(2019年)度中に、全国215か所の児童相談所が児童虐待相談として対応した件数は193,780件で、過去最多。
- 主な増加要因
○ 心理的虐待に係る相談対応件数の増加(平成30年度:88,391件→令和元年度:109,118件(+20,727件))
○ 警察等からの通告の増加
○ 心理的虐待が増加した要因として、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力がある事案(面前DV)について、警察からの通告が増加。 - 平成25年(2013年)度から、きょうだいへの虐待も心理的虐待と見なされるようになり、この年から心理的虐待の割合が身体的虐待の割合よりも多くなった。
- 平成25年(2013年)度以降の傾向と変わらず、令和元年度も心理的虐待の割合が最も多く、次いで身体的虐待の割合が多い。
心理的虐待の割合が増えるに伴い、身体的虐待・ネグレクト・性的虐待の割合は年々ほぼ低下しているが、相談件数は増加している(総数が増えているため)。 - 令和元年度に、児童相談所に寄せられた虐待相談の相談経路は、警察等(96,473件、約50%)、近隣知人(25,285件、約13%)、家族・親戚(15,799件、8.2%)、学校(13,856件、7.2%)からが多くなっている。
対策
2000(平成12)年の「児童虐待の防止等に関する法律」(児童虐待防止法)制定・改正、児童福祉法の改正、親権停止制度の創設等、児童虐待防止に関する法整備を行ってきた。
制度改正や関係機関の体制強化などにより、その充実が図られてきたが、深刻な児童虐待事件が後を絶たず、全国の児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数も増加し続けており、社会全体で取り組むべき重要な課題である。
(1)児童虐待の発生予防
妊娠・出産・育児期の家庭では、産前産後の心身の不調や妊娠・出産・子育てに関する悩みを抱え、周囲の支えを必要としている場合がある。こうした家庭に適切な支援が差しのべられず、痛ましい児童虐待に至ってしまうことのないよう、厚生労働省では、妊娠・出産・子育てに関する相談がしやすい体制の整備や、地域の子育て支援サービスの充実を図っている。
例)
・子育て世代包括支援センターの全国展開
・乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)
・養育支援訪問事業
・地域子育て支援拠点事業
(2)児童虐待の早期発見・早期対応
- 要保護児童対策地域協議会の設置:関係機関が子どもや保護者に関する情報の交換や支援内容の協議を行う
- 市区町村子ども家庭総合支援拠点の設置:子どもとその家庭や妊産婦等を対象に、実情の把握、子ども等に関する相談全般から通所・在宅支援を中心としたより専門的な相談対応や必要な調査、訪問等による継続的なソーシャルワーク業務まで行う機能を担う拠点
- 児童相談所の体制強化:子どもに関する家庭などからの相談に応じ、子どもが有する問題や子どものニーズ、子どもの置かれた環境の状況等を的確に捉え、子どもや家庭に適切な援助を行い、子どもの福祉を図るとともに、その権利を擁護する
(3)虐待を受けた子どもの自立支援
社会的養護とは、保護者のない児童や、保護者に監護させることが適当でない児童を、公的責任で社会的に養育し、保護するとともに、養育に大きな困難を抱える家庭への支援を行うこと。
- 里親委託の推進
- ファミリーホームの設置運営の促進
- 施設の小規模化及び家庭的養護推進
- 親子関係再構築支援
(4)その他、関係団体による取組
特定非営利活動法人、一般社団法人、公益社団法人、社会福祉法人等様々な法人が、児童虐待に関する取り組みを行っている。
厚生労働省は、児童虐待防止対策協議会において報告・資料提供のあった関係団体の取組をホームページ上で紹介しており、各団体の取組や得られた知見が広く共有されるよう努めている。
児童虐待防止関連の法整備、法改正の変遷と概要
1947年 児童福祉法の制定 孤児・浮浪児
1960年代 非行
1970年代 障害・不登校
1990年代 児童虐待・居所不明児・面前DV・貧困
児童虐待件数は、現在においても年々増加傾向で、かつ深刻化・重篤化するなど大きな社会問題となっている。
2000年(平成12) 児童虐待の防止等に関する法律の制定(児童虐待防止法制定)
2000年11月20日施行
- 児童虐待の定義(身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待を定義)
- 住民の通告義務
- 立入調査
- 児童虐待の早期発見
- 警察官の援助について明記
2004年(平成16) 児童虐待防止法の改正
2004年10月1日施行
- 児童虐待の定義の見直し(同居人による虐待を放置することをネグレクトと定義。児童がDVを目撃することを心理的虐待と定義)
- 通告義務の範囲の拡大(虐待を受けたと思われる場合も対象)
- 面会又は通信の制限
2005年(平成17) 児童福祉法の改正
2005年1月1日施行
- 市町村の役割の明確化(相談対応を明確化し虐待通告先に追加)
- 要保護児童対策地域協議会の法定化〔平成 17 年 4 月施行〕
- 司法関与の強化
・家庭裁判所の承認を経て行う強制入所措置の有期限化(入所措置の期間は2年間。家裁の承認を経て更新可能)
・保護者指導の勧告
2007年(平成19) 児童虐待防止法の改正
2008年4月1日施行
- 児童の安全確認義務(児童の安全確認のために必要な措置を講ずることが義務化)
- 出頭要求・再出頭要求、立入調査等の強化(解錠を伴う立入調査を可能とする新制度の創設(臨検・捜索))
- 保護者に対する面会・通信等の制限の強化
- 保護者に対する指導に従わない場合の措置の明確化
2007年(平成19) 児童福祉法の改正
2008年4月1日施行
- 要保護児童対策地域協議会設置の努力義務化
2008年(平成20) 児童福祉法の改正
2009年4月1日施行
- 乳児家庭全戸訪問事業、養育支援訪問事業等子育て支援事業の法定化及び努力義務化
- 要保護児童対策地域協議会の機能強化(協議対象を要支援児童、その保護者、特定妊婦に拡大)
- 里親制度の改正等家庭的養護の拡充〔平成21年1月施行〕
- 被措置児童等に対する虐待の対応の明確化
2011年(平成23) 民法の改正
2012年4月1日施行(一部を除く)
- 親権の停止制度の新設
- 親権の喪失等の家庭裁判所への請求権者の見直し
- 法人又は複数の未成年後見人の許容
2011年(平成23) 児童福祉法の改正
平成24年4月1日施行(一部を除く)
- 親権の喪失等の家庭裁判所への請求権者の見直し
- 施設長等の権限と親権との関係の明確化
- 里親等委託中及び一時保護中の児童に親権者がいない場合の児童相談所長の親権代行について規定
2016年(平成28) 児童虐待防止法の改正
2017年4月1日施行(一部を除く)
- 児童福祉法の理念、国・都道府県・市町村の役割の明確化
- 満二十歳未満の者への措置等の対象拡大
2016年(平成28) 児童福祉法の改正
2017年4月1日施行(一部を除く)
- 児童福祉法の理念、国・都道府県・市町村の役割の明確化
- 満二十歳未満の者への措置等の対象拡大
- 市町村・児童相談所の体制強化
・子育て世代包括支援センターの法定化(母子保健法の改正)
・市町村における支援拠点の整備(努力義務)
・要保護児童対策地域協議会の機能強化(専門職の配置等)
・児童相談所設置自治体の拡大(特別区を追加)
・児童相談所への①児童心理司②医師又は保健師③指導・教育担当児童福祉司の配置、弁護士の配置又はこれに準ずる措置 - 都道府県(児童相談所)の業務として、里親支援、養子縁組に関する相談・支援を位置づけ
S評価のレポート例
ご参考になれば幸いです。
完全コピペはダメですよ。
掲載するレポートの評価は以下の通りです。
点数 90点
総合評価 S
項目別評価では、
・課題の理解度 S
・論旨と構成 S
・自己の見解 S
1. 児童虐待とは
「児童虐待の防止等に関する法律」において「児童虐待」とは、保護者がその監護する児童に対して身体的虐待・性的虐待・ネグレクト・心理的虐待などの行為をすることとされている。
2. 現状
厚生労働省「令和元年度 児童相談所での児童虐待相談対応件数」によると、2019年度中に児童相談所が対応した児童虐待相談件数は193,780件で、過去最多となった。増加の主な要因としては、心理的虐待と警察等からの通告の増加が挙げられる。児童の目の前で家族に対して暴力をふるうこと(面前DV)も心理的虐待と見なされるようになり、心理的虐待の増加となった。
割合としては、心理的虐待が最も大きく56.3%、次いで身体的虐待が大きい。
児童相談所に寄せられた虐待相談の主な相談経路は、警察等が約50%で最も多く、次いで近隣知人(約13%)、家族・親戚(8.2%)、学校(7.2%)である。
3. 対策
「児童虐待の防止等に関する法律」制定(2000年)・改正、児童福祉法や民法の改正等の法整備を行い、関係機関の体制・連携強化などにより対策が講じられてきた。主な内容を以下にまとめる。
(1) 発生予防
下記の事業を通して、妊娠・出産・子育てに関する相談がしやすい体制の整備や、地域の子育て支援サービスの充実を図っている。
・子育て世代包括支援センターの全国展開
・乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)
・養育支援訪問事業
・地域子育て支援拠点事業
(2) 早期発見・早期対応
法により児童虐待の通告を全ての国民の義務とし、通告の対象を「虐待を受けた児童」から「虐待を受けたと思われる児童」へと改め、通報や相談を24時間匿名で受け付ける相談ダイヤルを設けるなどして、地域での気付きを専門的な支援につなぐ取り組みの他、以下の対策を講じている。
・要保護児童対策地域協議会、市区町村子ども家庭総合支援拠点設置
・児童相談所の体制強化
・学生によるオレンジリボン運動
(3) 被虐待児の保護
虐待されている、またはそのおそれがある子どもは速やかに一時保護する。子どもの生命の安全を確保した上で虐待の事実等を調査することで、子どもの最善の利益につなげる。
(4) 被虐待児の自立支援
虐待により保護者に監護させられない児童は、社会的養護により公的責任で社会的に保護・養育する。対象児童は、乳児院、児童養護施設、児童心理治療施設、児童自立支援施設等に在籍する。
また、厚生労働省は以下の取り組みも推進している。
・里親委託
・ファミリーホーム設置運営
・施設の小規模化、家庭的養護
・親子関係再構築支援
4. 考察
日本では長い間子どもの権利に対する意識が社会全体的に低めで、国連から度々指摘を受けてもなかなか変化しなかった。国主導の様々な対策が奏功し、何が虐待に当たるかについては理解が広がり育ちつつあるようだが、悲惨な事件は現在も後を絶たず、児童虐待相談件数は増え続けている。親が子育てを楽しめる、子どもが安心して親元で過ごせる社会に必要なものは何か。社会福祉士としての視点から、児童虐待の背景やチャイルドペナルティ、子育て罰に向き合い、自分に何ができるか考え行動していきたい。
先生コメント
担当講師の先生からいただいたコメントをまとめます。
- ブジカエルのレポートは、課題の要求する内容について適切に論述されている。
- このような課題の場合、少なくともまず、虐待を受けた子どもの現状として児童相談所における虐待相談対応件数などや、2000(平成14)年に児童虐待防止等に関する法律が制定し、その法に児童虐待の支援の基本理念や児童虐待の定義が規定されていることなどが述べられていることが必要である。
- 児童虐待対策として、虐待対応の流れかいくつかある防止対策の取り組みを最低一つでも明示する必要がある。
- レポートは、限られた文字数でレポート課題を述べなければならないので、主な児童虐待の対応機関や児童虐待対応の流れの一部分、児童虐待防止対策の取り組みの一つを取り上げ、対策として述べるということでも問題はない。
- ブジカエルのレポートは、これらについて適切にまとめられていて優れたレポートであると評価できる。