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社会福祉士学習の記録|レポート(6) 第2回(2)『地域福祉の理論と方法』(1)

レポート課題に取り組むカエルのイラスト

この記事は、社会福祉士養成課程(通信)の6番目のレポート(科目は「地域福祉の理論と方法」)に関することをまとめたものです。

S評価を得て、模範解答にも選ばれたレポートの実例つきです。

レポートの作成過程を細かく記載しているので、内容はてんこ盛りです。
お忙しいでしょうから、ぜひ必要な個所に絞って見てくださいね。

以下の記事にまとめた手順に沿ってレポートを作成する準備を進めました。

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目次

レポートは2択

レポートの課題は、以下の2つから選べました。

(a) 福祉サービスを必要としている人の地域生活課題(福祉ニーズ)の把握における「アウトリーチ」の意義をまとめ、具体的な展開方法を述べなさい。

(b) わが国における地域福祉理論の発展とその年代の代表的な研究者である「岡村重夫」、「右田紀久惠」、「永田幹夫」、「大橋謙策」の理論の概要を述べなさい。

(a)も面白そうだとは思ったのですが、国家試験対策としては(b)の方がより役立ちそうな気がしたので、(b)にしました。

レポート作成の手順

毎度恒例、「社会福祉士養成通信課程で提出するレポートとその作成方法について【土台=基礎編】」の「レポート作成の手順」に沿って作業を行っていきます。

テーマ分析

「日本における地域福祉理論の発展と、地域福祉理論の代表的な研究者である岡村重夫・右田紀久惠・永田幹夫・大橋謙策の理論の概要を述べる」という課題が、どのような内容を期待して設定されたのかを考えます。

また、社会福祉士養成通信課程におけるレポートは、

  • 学習を進めているよ!ということを学校に知らせる
  • こんなふうに理解しているよ!ということを先生に知らせる

ということも目的としていると考えられるため(参考:社会福祉士養成通信課程で提出するレポートの意味)テキストの内容を踏まえつつ、少し発展させたレベル内容も盛り込めるとベターかと思います。

地域福祉を実践する社会福祉士としては、

  • 地域福祉の土台となる理論がどのように発展してきたのか
  • 地域福祉実践の拠り所となる地域福祉理論の、代表的な理論家とその理論概要

を知っておくことは非常に重要なことであると思われます。

何をするにしても、背景にある理論や土台・拠り所となる理論を知って取り組むのと、知らないで取り組むのとでは、効率や成果が大きく変わってきます。これは福祉に限らずですが。

なので今回の課題は、これから社会福祉士を目指す者として当然身に付けておくべき知識の中でも優先度の非常に高いものが設定されていると考えられます。

地域福祉理論の発展の軌跡と、課題中の理論家の理論について、重要な点をコンパクトにまとめれば及第点はもらえることでしょう。最後に、今後の理論の発展や、自分の今後の活動における理論の活用などに関して、自分なりの意見を交えて書ければ、プラス何点かもらえるのでは。

材料を集める

レポートを書くにあたって必要な材料を集めます。

学校指定のテキストの中や、テキストに出てきた資料から主に材料を探します。今回も、図書館を活用しました。

次項にまとめます。

材料を集める

地域福祉とは

地域福祉とは、政治・行政制度の基礎単位である市町村を基盤として、自立生活が困難な個人や家族が地域において自立生活できるようネットワークをつくり、必要な在宅福祉サービスを総合的に提供することである。

出典:『地域福祉の理論と方法』30ページ

地域福祉理論の発展

1960年代

地域福祉概念化のもとと考えられる二つの概念(準拠概念)

  1. 住民を主体に公私関係者の連携により、住民の福祉増進を図るという考え方
  2. 要援護者の地域生活を支援する「コミュニティケア」という考え方、個別支援思考

が出現。1970年代以降の地域福祉の概念化・理論化の流れは、この2つの概念を結び付け統合化を試みようとするものとなった。

岡村重夫

1963(昭和38)年、『社会福祉学』(各論)で、「地域福祉事業」を「地域性の原則」と「福祉性の原則」という2つの原則を統合するものであると論じ、住民の社会生活の基本的要求充足を目的とする「福祉性」(社会福祉の固有性)と「地域性」(地域社会の全体構造)は密接不可分なものであるとした。さらに7年かけて地域福祉概念を構想した。

1970年代

岡村重夫

1970(昭和45)年、岡村は『地域福祉研究』で地域福祉概念を体系化。地域福祉の下位概念として①地域組織化、②予防的社会福祉サービス、③コミュニティケア、④収容保護サービスの4つの地域福祉の機能の4つを掲げ、地域組織化活動や地域社会開発といった地域援助方法論と、「コミュニティケア」の概念の融合を試みた。

その後岡村は奥田道大の地域社会論やシーボーム報告を検証、地域福祉の概念を整理・修正して、1974(昭和49年)に『地域福祉論』を上梓。収容保護サービスをコミュニティケアの中に包含し、福祉コミュニティ概念を確立した。その結果、地域福祉の構成要素を以下の3つに整理。

  1. 最も直接的具体的援助活動としてのコミュニティケア
  2. コミュニティケアを可能とするための前提条件づくりとしての一般的な地域組織化活動と地域福祉組織化活動
  3. 予防的社会福祉

<岡村の地域福祉論を概括>

地域を基盤とする公私協働の多元的な協働主体からなる地域性(=福祉コミュニティ)が、住民個々の社会生活上の要求(=ニード)に対応してコミュニティケアや予防的福祉などの福祉性を発揮する、という理論枠組み。従来の政府または行政主体の社会福祉理論に対して、地域あるいは住民という主体を位置づけ、公私協働・福祉ミックスの考え方を明示したのが画期的。ただ、岡村理論においてコミュニティケア(個別支援)と地域における組織化活動(地域支援)という2つの社会福祉の構成機能は並列された状態であり、この2つの地域福祉機能をいかに有機的に結び付けて統合化し、「地域自立生活支援」にまで止揚・昇華するかという視点とその要となる実践方法については、その後の地域福祉理論の重要課題として残された。

<国家試験対策用語集から>

岡村重夫〔1906~2001〕大阪市に生まれる。地域福祉の3構成要素である「コミュニティケア」「地域組織化」「予防的社会福祉」を提唱し、それにより長期的な社会福祉計画において地域福祉サービスを展開できるとしたことで有名。また福祉国家は選別的処遇ではなく国民すべてを対象とする普遍的処遇に特徴があると述べている。

右田紀久惠

1973(昭和48)年、地域福祉を次のように定義した。

「地域住民が担わされてきた生活問題を、生活原則、権利原則、住民主体原則に立脚して、軽減・除去し、または発生を予防し、労働者、地域住民の主体的生活全般にかかわる水準を保障し、より高めるための社会的施策と方法の総体」

地域福祉の基礎要件に、公私の制度・サービス体系と地域福祉計画・地域組織化・住民運動をあげて政策や公的責任を強調したが、「社会福祉協議会基本要項」と同様、広く住民の福祉増進を目標とした。

右田理論後

1977(昭和52)年、全国社会福祉協議会は社会福祉研修センターの教科書としてまとめた『社会福祉論』において、三浦文夫は右田らの論を広義の社会福祉と非難し、福祉的支援が必要な住民(要援護者)の地域における自立と地域社会の統合を目的とする地域福祉論を展開。

1976(昭和51)年、全国社会福祉協議会は三浦文夫を中心に在宅サービス研究委員会を組織
1979(昭和54)年、在宅サービス研究委員会の研究成果を『在宅福祉サービスの戦略』として発刊。三浦文夫を中心に、非貨幣的ニーズ充足のための在宅福祉サービス供給論が立論、在宅福祉サービスを軸とする地域福祉論が確立。

1980年代

1981(昭和56)年、右田や三浦らの研究を踏まえて、永田幹夫は『地域福祉組織論』を発刊、地域福祉を、地域で生活する要援護者の自立と統合を目的とし、①在宅福祉サービス、②環境改善サービス、③組織活動の3要素から成る概念として提示した。

1970(昭和45)年に岡村が定期した地域福祉の理論は、上記の各論的な研究や社会福祉の制度動向から影響を受けつつ、数多くの研究者によって多様に広がった。その中で、多様な地域福祉論を比較検討・分類整理する類型論(タイポロジー)も創出された。牧里毎治は1980年代初頭までの主な地域福祉論を比較検討、構造的アプローチと機能的アプローチに整理した。

1990年代

右田紀久惠

1993(平成5)年に刊行された『自治型地域福祉の展開』などにより、右田紀久惠は「自治型地域福祉論」を提起。

1980年代に実態的に拡大展開してきた新たな市民活動(ボランティア活動、住民参加型福祉サービスなど)や、福祉サービス供給主体の多元化が進展したこと、市町村を中心とした在宅福祉サービスの計画的整備の推進を背景に、地域福祉の理論的課題も新たな局面を迎えた。地域福祉の原理論的な概念として「公共性概念」の問直しを軸に、地域性の基盤としての「住民自治・地方自治」を重視する観点を、右田は「自治型地域福祉論」で打ち出した。

大橋謙策

1970年代からの草の根の地域福祉実践のあり方の洞察を踏まえ、福祉サービス利用者の地域自立生活支援を中心に据えて、在宅福祉サービスと地域福祉の主体形成を両輪とした地域福祉論を構築。特に、主体形成をめぐる福祉教育論や住民参加論、地域福祉計画論などを掘り下げた。

1990年代以降は福祉改革動向を踏まえ、新しい社会福祉サービスシステムとしての地域福祉論という概念規定のもとで、従来留意されてこなかったソーシャルワーク機能に着目し、地域を基盤とし地域と協働する実践モデルとなるコミュニティソーシャルワーク理論を位置付けた。このことにより、長年理論的懸案だったコミュニティケア(個別支援)と組織化活動(地域支援)を統合化する地域福祉理論が確立した。

2000年代

岡本栄一は2002(平成14)年に、主要な論者の地域福祉論は志向性の強調点が相違するだけで、下記の「四つの志向性」をそれぞれ持っており、それらを総合化して一つの地域福祉論が体系化できるという、統合的な類型論を提示した。

  1. 福祉コミュニティ・地域主体志向(岡村重夫、阿部志郎)
  2. 在宅福祉志向(永田幹夫、三浦文夫)
  3. 政策制度(自治)施行(右田紀久惠、真田是、井岡勉)
  4. 住民の主体形成参加志向(大橋謙策、渡部洋一)

今後

1990年代までに、地域福祉の概念や主要な構成要素に関する考え方は多様に展開してきたが、ほぼ出尽くした感がある。今後は構成要素間の関係性を考慮した統合的な全体システム(体系化)のあり方がさらに探求され、個々の構成要素、校正機能に関する理論の実態に即した精緻化が求められる。

個別支援と地域支援、フォーマルケアとインフォーマルケアを結合、統合する視点と考え方を有する、ソーシャルワーク理論としてのコミュニティソーシャルワークの一層の理論化とそのシステムの理論化が今後の大きな課題。

2000年代以降、市町村地域福祉計画や都道府県地域福祉支援計画の策定を契機として、地域福祉の実践体制が化される傾向があり、それまで放置されてきた困難事例を地域の協力を得ながら解決するなどしている。こうした実践を積み重ねて、地域福祉の推進を図り、理論がさらに深化し、広がっていくことが望まれる。

S評価のレポート例

ブジカエル
私が提出したレポートの評価がSでした。
ご参考になれば幸いです。
完全コピペはダメですよ。

掲載するレポートの評価は以下の通りです。

点数 90点
総合評価 S

項目別評価では、
・課題の理解度 S
・論旨と構成 A
・自己の見解 A

1. 地域福祉の概念化とはじめての体系化
「地域福祉」という用語自体は1960年頃から使われ始め、その概念についてはこの後に述べる岡村重夫らが定義してきたが、唯一の決定的な定義はない。
1960年代、地域福祉概念化のもとと考えられる2つの準拠概念が出現した。住民主体で公私の連携により住民の福祉増進を図るという考え方と、要援護者の地域生活を支援するコミュニティケアという考えである。
1960年代から70年代にかけて岡村重夫は地域福祉の概念化と体系化を行い、地域福祉理論が初めて体系化された。岡村は地域福祉の構成要素を①コミュニティケア、②一般組織化活動と福祉組織化活動、③予防的社会福祉に整理し、地域を基盤とする公私の多元的な主体が協働する地域性(福祉コミュニティ)が、住民個々の社会生活上の要求(ニード)に対応して福祉性を発揮するという理論的枠組みを提示した。従来の行政主体の社会福祉論に対して、地域や住民という主体を位置づけて公私協働の考え方を明示する画期的な理論であり、今日に至るまでの地域福祉の基礎となっている。

2. 地域福祉論の展開
岡村が提起した地域福祉の理論は、社会福祉の制度動向からも影響を受けながら、1970年代から80年代にかけて多くの研究者によって多様に広がり、各論的に研究が進展した。
右田紀久惠は1973年に地域福祉を定義、地域福祉の基礎要件に公私の制度・サービス体系と地域福祉計画・地域組織化・住民運動を挙げて政策や公的責任を強調し、政策制度志向の理論を展開した。
永田幹夫は1980年代を代表する理論となる在宅福祉志向型の地域福祉論を展開、地域福祉の構成要素を3つに整理し、地域福祉の目的を地域で生活する要援護者の自立と統合とした。

3. 新たな展開と深化
1990年代以降、法改正や社会情勢の変化を受けて、地域福祉論の理論的課題も新たな局面を迎え、さらに展開、深化していった。
右田は地域性の基盤としての「住民自治・地方自治」を重視する観点から「自治型地域福祉論」を提起、住民自治の視点で地域福祉の理論と実践に努める考え方を示した。
大橋謙策は在宅福祉サービスと地域福祉の主体形成を両輪とした地域福祉論を構築、特に主体形成をめぐる福祉教育論や住民参加論、地域福祉計画論などを掘り下げた。また、従来留意されてこなかったソーシャルワーク機能に着目、コミュニティソーシャルワーク理論を位置付け、コミュニティケア(個別支援)と組織化活動(地域支援)を統合化する地域福祉理論を確立させた。

4. 考察
今日の福祉実践に欠かせない地域福祉であるが、源流は戦前に遡るものの、戦後はまだ曖昧に捉えられていた。その理論構築は1960年代の概念化・体系化から始まり、社会の変化や福祉ニーズの拡大に応じて、理論と制度・施策、現場とが相互に影響し合いながら、欧米の影響を受けつつも独自に進化、発展してきた。日本の地域福祉は、今後も変化していくであろう。現在の地域福祉の礎にある研究の蓄積を大切にするのはもちろん、新たな理論も国家試験合格後も学び続け、その学びを活かして地域で実践を積み重ねたい。

解題で復習

出題意図

(a):アウトリーチによる支援が必要な人や、家族の社会的な背景や特徴を十分に理解すること。専門職としてアウトリーチの具体的な場面における、地域生活課題の多様で重層的な把握方法を理解すること。要支援者に関わる機関・団体等との日常的なネットワーク形成が不可欠であることの理解。

(b)各研究者の地域福祉理論を発表した年代の社会的な背景を踏まえ、それぞれの考え方やその構成要素、要件等を理解すること。4つの志向軸における各理論を学習することが、それぞれの研究者の地域福祉理論の理解につながる。その上で、現在の法律・福祉政策、福祉制度や福祉サービス供給の根底にある地域福祉の考え方が、日本でどのように発展してきたかを理解すること。

国家試験に向けての対策

  • 生活困窮者自立支援相談事業の対象となる人々の社会的な背景や生活状況などの特徴をしっかりと学習すること。
  • 援助技術の一つとしてのアウトリーチの展開方法を学習しておくこと。
  • 岡村重夫の地域福祉理論の学習、特にその特徴、構成要件。
  • コミュニティ重視志向、政策制度施行、在宅福祉志向、住民の主体形成と参加志向の代表的なけんきゅうしゃと基本的な考え方、構成要件を学習しておくこと。
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この記事を書いた人

このブログを運営しているブジカエル、カエル好きですがカエルにはあまり詳しくありません。精神障害者の地域生活を支援する精神保健福祉士、社会福祉士、国家資格キャリアコンサルタント。旅好き、学び好き、放送大学12年目のマルチポテンシャライト。科学的な幸福の研究に興味津々なポジティブ心理学実践インストラクター。健康管理好き、2013年に健康管理士、食生活アドバイザー3級&2級を取得。
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