2019年2月に行われた、第31回社会福祉士国家試験の問93について。
社会福祉士国家試験対策、過去問題の一問一答。
一発合格を目指します。
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問題文
問題93
ポストモダンの影響を受けたソーシャルワークに関する次の記述のうち,最も適切なものを1 つ選びなさい。
- クライエントの主体性や語りを重視する。
- クライエントの欠点を直す援助を指向する。
- 社会構成主義への批判から発展している。
- 客観主義,実証主義を追求する。
- サービス提供の効率性を求める。
正解
1
この問題の解き方
ポイント
ポストモダンとポストモダンが社会福祉、ソーシャルワークに与えた影響を理解しておくこと。関連用語はエンパワメント、ストレングス視点、ナラティブアプローチ、社会構成主義、など。
選択肢1:○ ポストモダンの影響を受けたソーシャルワークでは、クライエントの主体性や語りを重視する。ナラティブアプローチではクライアントの語りを通して心理的・社会的支援を行う。
選択肢2:× ポストモダンの影響を受けたソーシャルワークでは、クライエントの欠点を直す援助ではなく、ストレングス視点での援助を行う。
選択肢3:× ポストモダンの影響を受けたソーシャルワークでは、ポストモダンを基礎とする社会構成主義に基づくアプローチを行う。社会構成主義はモダニズムの批判から発展した。
選択肢4:× ポストモダンの影響を受けたソーシャルワークでは、客観主義・実証主義を追求しない。ポストモダンは合理主義的傾向などの近代主義の原理を批判し、脱近代化を目指す思想的潮流。ソーシャルワークにおいても、消費社会や情報社会に対応した知や実践のあり方を追求。
選択肢5:× ポストモダンの影響を受けたソーシャルワークでは、サービス提供の効率性を求めない。ポストモダンはは、近代工業社会を支えてきた合理・機能・効率・進歩といった価値意識とそれらがもたらした大量生産・大量消費による画一的なシステムを批判する。
第31回社会福祉士国家試験問題
現代社会と福祉 問22 問23 問24 問25 問26 問27 問28 問29 問30 問31
地域福祉の理論と方法 問32 問33 問34 問35 問36 問37 問38 問39 問40 問41
相談援助の基盤と専門職 問91 問92 問93 問94 問95 問96 問97
相談援助の理論と方法 問98 問99 問100 問101 問102 問103 問104 問105 問106 問107 問108 問109 問110 問111 問112 問113 問114 問115 問116 問117 問118
学習メモ
ポストモダンとは
「近代のあと」の時代という意味。モダニズム=近代主義に対する不信、反動、超克を意味する用語として用いられる。ポスト・モダニズムという語自体は1960年代以前にすでに用いられていたが、1960年代米国にて前衛的な作品をさすことばとして文芸批評家の間で用いられた。ポスト・モダニズムという語の今日的な意味の確立は、1970年代英国チャールズ・ジェンクスによる建築、芸術批評による。過去の歴史的な様式を参考にして、自由な発想を混交・折衷した複合的な建築ジャンルの誕生を指摘。近代世界の原理である理性、科学、進歩に対する信奉に不信を突きつける世界観を反映するものだった。西欧世界を中心とした文化だけを価値あるものとするのではなく、多文化、異文化を受け入れようとする総体的な運動のなかでとらえられる文化的意識概念。この概念のとらえ方は一様ではなく、さまざまな解釈がなされている。※参考:コトバンク
ポストモダン・ソーシャルワーク
英語圏では1990年代から(日本では2000年代から),フーコー等の批判を念頭においた「ポストモダン・ソーシャルワーク」が展開しつつあるという(三島 2012)。ポストモダン・ソーシャルワークとは,ポストモダニズムの影響を受けたソーシャルワーク論内部で,社会福祉が前提にしてきた近代的「主体」概念の構築性とその概念が孕む抑圧性について意識され始めたこと,またそうした認識をふまえてオルタナティブとしての「ナラティブ・アプローチ」「ストレングス視点」など新しい援助技法の開発がすすみつつあるという動きのことである(金子 2012,狭間 2012)。
佐々木宏「ポストモダニズムと社会福祉」(教育社会学研究第94集(2014))