2019年2月に行われた、第31回社会福祉士国家試験の問22について。
社会福祉士国家試験対策、過去問題の一問一答。
一発合格を目指します。
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問題文
問題22
2012年の国連総会では,「人間の安全保障」についての共通理解の文書が採択された。ここで示された「人間の安全保障」の内容に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 貧困を解決することに限定されている。
- 全ての人々の保護および能力と地位の向上を強化することを求めている。
- 予防志向型の対応を求めていない。
- 経済的権利に優先性を付与している。
- 武力の行使を必要としている。
(注) 「人間の安全保障」についての共通理解の文書とは,「2005年世界サミット成果文書の人間の安全保障に関する第143項のフォローアップ」をいう。
正解
2
この問題の解き方
「2005年世界サミット成果文書の人間の安全保障に関する第143項のフォローアップ」は教科書に出ていないし、社会福祉士の養成課程で必ず教わることでもなかったと思うのですが、それでも正答を導き出せるように考えます。
選択肢1:× 「人間の安全保障」が貧困に限定されるはずがなかろう。
選択肢2:なんとなく良さそうなので正答候補。
選択肢3:× 色んな悪いことの予防重視は世界の共通認識では。日本は予防が下手だけど。
選択肢4:× 「人間の安全保障」で経済的権利に優先性はなくね?
選択肢5:× 「人間の安全保障」で武力行使はなくね?
というわけで、2番目の選択肢を選ぶことができ、めでたく正答。
第31回社会福祉士国家試験問題
現代社会と福祉 問22 問23 問24 問25 問26 問27 問28 問29 問30 問31
地域福祉の理論と方法 問32 問33 問34 問35 問36 問37 問38 問39 問40 問41
相談援助の基盤と専門職 問91 問92 問93 問94 問95 問96 問97
相談援助の理論と方法 問98 問99 問100 問101 問102 問103 問104 問105 問106 問107 問108 問109 問110 問111 問112 問113 問114 問115 問116 問117 問118
学習メモ
一応、裏を取っておきます。
外務省の報道発表「人間の安全保障に関する国連総会決議の採択」のページに「人間の安全保障に関する2005年世界サミット成果文書パラグラフ第 143のフォローアップ決議」の資料も掲載されていて、この問に関する記載もありました(当たり前だ)。
国連が採択する人間の安全保障に関する決議というと、内戦を含む戦争をはじめとした様々な要因による貧困や危険など、世界の中でも日本から遠い国に関することのように思ったのですが、決議の内容、例えば「人間の安全保障の概念に関する共通理解」を読むと、日本も決して無関係ではないと思えてきます。
例えば、自由と尊厳の内に生存していない人、貧困と絶望から免れていない人は日本にもたくさんいて、そういう人たちと共にありたいという思いのある人が社会福祉士を目指すはずと思ったのでした。
「人間の安全保障の概念に関する共通理解」を以下に引用します。
(a)人々が自由と尊厳の内に生存し,貧困と絶望から免れて生きる権利。すべての人々,特に脆弱な人々は,すべての権利を享受し彼らの持つ人間としての可能性を開花させる機会を平等に有し,恐怖からの自由と欠乏からの自由を享受する権利を有すること。
(b)人間の安全保障は,すべての人々及びコミュニティの保護と能力強化に資する,人間中心の,包括的で,文脈に応じた,予防的な対応を求めるものであること。
(c)人間の安全保障は,平和,開発及び人権の相互連関性を認識し,市民的,政治的,経済的,社会的及び文化的権利を等しく考慮に入れるものであること。
(d)人間の安全保障の概念は保護する責任及びその履行とは異なること。
(e)人間の安全保障は武力による威嚇若しくは武力行使又は強制措置を求めるものではないこと。人間の安全保障は国家の安全保障を代替するものではないこと。
(f)人間の安全保障は国家のオーナーシップに基づくものであること。人間の安全保障に関する政治的,経済的,社会的及び文化的な状況は,国家間及び国内並びに時代によって大きく異なることから,人間の安全保障は地域の実情に即した国家による対応を強化するものであること。
(g)政府は市民の生存,生計及び尊厳を確保する一義的な役割及び責任を有すること。国際社会は政府の求めに応じ,現在及び将来の危機に対処する政府の能力の強化に必要な支援を提供し補完する役割を担うこと。人間の安全保障は,政府,国際機関及び地域機関並びに市民社会の更なる協調とパートナーシップを求めるものであること。
(h)人間の安全保障は,国家主権の尊重,領土保全及び本質上国家の国内管轄権内にある事項への不干渉といった国連憲章の目的と理念を尊重して実践されなければならないこと。人間の安全保障は国家に追加的な法的義務を課すものではないこと。